英空軍が英出身のIS戦闘員をシリアで無人機空爆 英本土でテロ計画と

Reyaad Khan, from Cardiff and Ruhul Amin, from Aberdeen travelled to Syria to fight with the so-called Islamic State
Image caption 英ウェールズ・カーディフ出身のレイヤード・カーン(左)とスコットランド・アバディーン出身のルフル・アミンは、シリアへ渡り「イスラム国」の戦闘員に

キャメロン英首相は7日、シリアで8月下旬に死亡した過激派組織「イスラム国」(IS)のイギリス人戦闘員2人は、英空軍の無人機(ドローン)空爆で死亡したと明らかにした。英軍の無人機が英国民を標的に攻撃するのは初めて。

キャメロン首相は議会に対して、8月21日にシリア・ラッカで死亡したウェールズ出身レイヤード・カーン戦闘員(21)とスコットランド出身ルフル・アミン戦闘員の殺害を報告。同じ無人機攻撃では別のIS戦闘員も死亡したという。

首相は、カーン戦闘員が英国本土に「野蛮な」攻撃を計画していたため、無人機による空爆は合法的な「自衛行動」だったと強調。英議会はこれまで、英軍によるシリアでの軍事行動に反対してきた。

米軍による8月24日のラッカ空爆では、英バーミンガム出身の英国人ジュネイド・フセイン戦闘員(21)が死亡している。

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Image caption 米軍の空爆で死亡したジュネイド・フセイン戦闘員は「アブ・フセイン・アル・ブリタニ」を自称。「トップクラスのサイバー聖戦兵士」と呼ばれた。

首相によるとカーン、フセインの両戦闘員は積極的にIS「同調者」を集め、英国で今年夏に開かれる「大規模な公的行事」を攻撃する計画を立てていたと説明。カーン戦闘員への攻撃については、法務長官にも相談し、「明らかな法的根拠」があると確認したという。

野党・労働党のハーマン暫定代表は政府に、法務長官の法的諮問内容を公表するよう政府に求めたが、首相官邸は「政府内の法的諮問内容は、長い伝統にのっとり公表しない」と要求を退けた。

「殺人命令」

英下院は2013年にシリアにおける英軍事行動の可能性を否決しているが、昨年月9にはイラク内のIS標的に限り空爆参加を承認した。

しかしその一方で政府関係者はかねてから、「英国の重大な国家利益に対する喫緊の危険があれば」「(シリアで)すぐに行動し、事後説明を議会にする」用意があると述べていた。

キャメロン首相はカーン戦闘員殺害について「戦争に参加していない国で、英政府資産を用いて空爆を実施するのは現代において初めて」と認めた。「もちろん英国はイラクやアフガニスタンでも遠隔操作の航空機を使用してきたが、今回の空爆は新たな展開だ。そのため下院に報告し、なぜこれが必要で正当と思うか説明するのが大事だと考えた」と説明している。

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David Cameron: "We took this action because there was no alternative"

<英語ビデオ>「ほかに選択肢がなかった」と議会に説明するキャメロン首相

キャメロン首相は下院に対し、「首相としての私の第一の義務は英国民の安全を守ることだ」と述べ、「この国の往来で殺人しろと命令しているテロリストがおり、阻止する手段がほかになかった。(空爆指令を)この政府は一瞬たりとも軽くとらえていない。しかし(戦闘員らが計画していた)この国へのテロ攻撃が起きてしまった後で、なぜ自分が事前にしかるべき対応をしなかったかこの下院に説明するつもりなどない」と強調した。


分析

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BBC国防担当特派員ジョナサン・ビール

無人機「リーパー」は昨年9月に議会が自称「イスラム国」への軍事行動を承認して間もなく、英空軍トーネード戦闘機と共同で監視・空爆活動に参加するようになった。

議会決議は軍事行動をイラク領内に限定していたが、キャメロン首相は決議当時、「英国の重大な国家利益に対する喫緊の危険があれば」イラク以外でも行動する「権利を保留する」と下院に言明していた。

政府は今回のレイヤード・カーン戦闘員への攻撃がその喫緊の事態に相当すると説明している。しかしシリア領内での英空軍攻撃は議論を呼ぶだろう。標的が英国民だっただけになおさらだ。

政府関係者は、戦闘員が英国本土にとって直接の脅威で公式の「標的リスト」に載ったテロリストだったと強調するが、疑問は尽きない。どういう機密情報が判断の根拠となったのか? どういう標的リストに記載されていたのか?

重要標的リストを米中央情報局(CIA)が作っているという情報もある。一方で英国防省は、空軍がリーパー無人機を何機どこに配備しているのか公表していない。秘密裏にされた情報にもとづくこうした軍事行動に、疑いの目が向けられるのは避けられない。

英空軍リーパー機がシリア上空を飛行していたことは、決して意外ではない。ファロン国防相は昨年10月、議会に対して偵察飛行を実施すると予告しているからだ。しかしその一方で国防相は文書で、「リーパー機がシリア領内で武器を使用することはない。それには議会の追加承認が必要となる」と説明していた。


キャメロン首相はドローン攻撃について議会に次のように説明した。

  • 空爆は国家安全保障会議の「トップレベル」会議で承認し、ファロン国防相が許可した
  • 英国は情報収集活動で得た機密情報を根拠に、国連憲章に規定される「固有の自衛権」にもとづき行動した
  • 英国の公安機関は過去1年間で、英本土へのテロ攻撃計画を6件、未遂で食い止めている
  • 英国にはシリア内戦を逃れてくる人々を助ける「道義的責任」があり、今から5年の間にシリア難民2万人を受け入れる

首相の発表を受けて、ドミニク・グリーブ元法務長官(保守党)は、政府決定の合法性が問われる可能性はあると述べた。

労働党のハーマン暫定代表は、攻撃に関する「独立調査」を求め、「なぜ法務長官はこの攻撃そのものを承認するのではなく、単に『法的根拠はある』と確認するにとどまったのか」と問いただした。

「秘密空爆」

英南西部ウェールズ・カーディフに住むカーン戦闘員の家族の友人、モハメド・イスラムさんは「この事件の真実を明らかにする」調査を要求。遺族にとっては「とても複雑で悲しく、つらい事態だ」と話した。

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Family friend Mohammed Islam: "The family are devastated; his mother is devastated and broken"

<英語ビデオ> カーン戦闘員の遺族の友人は「家族は打ちのめされている。彼の母親は打ちのめされ、ボロボロだ」と

人権団体「Reprieve」のキャット・クレイグさんは空爆について「とても心配だ。間違いようがない。これは米政府による秘密攻撃のやり方を英政府がそっくりそのまま真似したものだ」と警告している。

BBCのフランク・ガードナー国防担当特派員は、イギリスが自国民を標的にして殺害した今回の攻撃は、前例となるだろうと述べている。

首相官邸報道官は、今後もIS戦闘員を標的にするかどうかについては、事案を個別に判断すると説明し、ほかに実施が許可された攻撃計画があるかについては言及を避けた。