豪首相、シリア移民1万2000人受け入れを表明

記者会見するアボット豪首相(9日) Image copyright Getty Images
Image caption アボット豪首相は受け入れる移民はすべて健康および「人格」のテストを受けると述べた

オーストラリアのトニー・アボット首相は9日、迫害を受けるシリアの少数者1万2000人の受け入れを表明した。また、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆をシリア国内に拡大することを明らかにした。

今回の発表は、中東地域の紛争で難民化した人々への援助を増やすよう求める声が高まるなかで行われた。オーストラリアは今年に入り、1万3750人の難民を認定している。今回さらに1万2000人を上乗せする。

同国はイラク国内でIS拠点の空爆を過去約1年にわたって実施しているが、米国は先月、オーストラリアに対して空爆をシリア国内にも広げるよう要請していた。

「緊急事態への寛大な対応」

欧州では、数万に及ぶ移民が流入しており、第2次世界大戦以降で最悪の移民危機への対応に苦慮している。欧州連合(EU)の欧州委員会は近く、12万人の難民の受け入れを加盟国に義務的に割り当てる「クオータ制」の導入計画を発表する見通し。

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Image caption ドイツ西部の都市ハムに到着したシリア人の家族(今月7日)

アボット首相による今回の発表は、大きな政策転換を示している。同首相は数日前に、現行クオータ制度の枠内のみでシリア難民の受け入れを増やす、と述べていた。

キャンベラで記者会見したアボット首相は、「オーストラリアの人道的な移民受け入れを非常に大幅に増やすことになる。現在の緊急事態への寛大な対応だ」と述べた。また、「1万2000人への定住地の提供では、迫害を受け、ヨルダンやレバノン、トルコに一時的に避難した少数者のうち、女性、子ども、家族など恒久的な保護を必要とする人々を主な対象にする」と語った。

ここ数日、多くの与党幹部が、シリアからはキリスト教徒のみを受け入れるべき、との考えを示した。しかしこの意見は、移民希望者の信仰で決めるべきではないとする野党やイスラム教徒の団体、国際的な援助団体など、多方面から避難を浴びている。

アボット首相は、イスラム教徒であろうとなかろうと迫害を受けており、「そういう人すべてを優先的に扱う」と述べ、政府は差別していないと反論した。


【解説】ウェンディ・フリューBBCデジタル編集長(シドニー)

与党自由党の幹部でアボット首相に近いマイク・ベアード氏(ニューサウスウェールズ州首相)が、難民を助けるためもっと努力すべきだと発言した時には、政界が息をのむ音が聞こえる気がした。

オーストラリアの難民に対するスタンスへの国際的な非難以上に、ニューサウスウェールズ州の首相が先週、「もっとすべき」「今すべき」と訴えたことが、アボット首相の念頭にあったのは間違いない。

ベアード氏の発言に呼応する意見が、自由党が政権党となっている各州の首相から相次ぎ、多くのオーストラリア国民はここ数十年で最大の移民危機に政府が支援の手を差し伸べるよう求めるデモを行った。

アボット首相は9日に、同国にとって第2次世界大戦以降で最大の移民受け入れを発表し、それらの声に答えた。


金融支援

移民受け入れに加えて、オーストラリアは、シリアとイラクの周辺国に避難した24万人の直接的な援助として国際連合に4400万豪ドル(約37億円)を寄付する。アボット首相によると、これによって同国のシリア、イラクの紛争に関連した人道支援は、2011年以降で合計2億3000万豪ドル(約195億円)に達するという。

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