ロシアがシリア軍事支援強化、アメリカは苦言

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Image caption シリア軍が公表した写真には新しいロシアの軍用車両が映っていた

ロシアがシリアのアサド政権への軍事支援を強化しているとみられるなか、ケリー米国務長官は15日、ロシアのラブロフ外相に電話で状況の説明を求め、アサド政権への支援継続はシリア内戦の「状況悪化と長期化につながるおそれがある」と苦言した。米国務省が発表した。

5年目に入るシリア内戦でロシアはアサド政権を支援。今では過激派組織「イスラム国」(IS、ISIL)との戦いでアサド政権を支援しているのだと説明している。

米国務省によるとケリー長官はラブロフ外相に、アサド政権を支援し続けるロシアは「シリアの紛争については真に政治的な権力移譲による解決を目指していかなくては、過激主義と戦うという(米ロ)共通の目標を損なうことになる」と伝えたという。

「ケリー長官はさらに、アメリカは60カ国以上と連合してISILと戦っていく決意のほどを改めて確認し、アサド政権がこの連合に含まれることはないという点も確認した。さらに、ISILとの戦いにおいてロシアの建設的な役割を歓迎するとも強調した」と国務省は発表した。

ケリー長官がラブロフ外相に電話するのは過去10日間で3回目とみられる。

ホワイトハウスのアーネスト報道官は、アサド大統領を支援するロシア政府の「賭けは負けと出るに決まっている」と述べた。

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Image caption 2015年9月4日撮影の衛星画像には、シリア北西部の地中海沿岸ラタキア空港で滑走路拡幅などの工事が進んでいる様子が映っているとされる

<分析>ジョナサン・マーカス、BBC防衛担当編集委員

ロシアがアサド政権を支援するのは、四面楚歌のアサド大統領を信頼しているからではなく、外交面でロシアがしかるべき役割を演じられると考えているからだ。そういう国としてのシリアに投資しているのだと考えたほうがいい。

プーチン大統領による軍備の展開は、アサド政権の打倒を許さないというサインに確かに見える。だからといってアサド氏がいつまでも大統領の座に居続けるとは限らない。

ロシア外交は軍事政策と対になって動いている。当面の間はアサド氏留任を可能にするなんらかの暫定的な合意をまとめようと、ロシアはあらゆる手段を使って可能性を探っているのだ。

しかしロシアはおそらくアサド政権の存続を超えたその先まで、シリアの状況を見据えているはずだ。中東地域におけるイスラム過激主義などの動きをロシアはそれだけ懸念しているし、欧米が実施してきた中東対策はどれもまぎれもない大失敗だったとみていることがある。


ロシア外務省は、ケリー長官との電話会談でラブロフ外相が改めてシリア国内のテロ組織に対抗するために「一致団結が必要」と強調したことを明らかにした。

これに先立ち15日にプーチン大統領は、「テロリストの侵攻に対抗する」アサド政権への軍事援助を継続すると約束し、他の国もロシアと共にシリアに「軍事技術援助」を提供するよう呼びかけた。

プーチン氏はさらに、ロシアがシリア政府を支援していなければ、欧州への難民の流れは「今より大きなものになっていただろう」と述べた。

14日には米国防総省報道官が、シリア北西部ラタキアの町にロシアの人員、資材が絶え間なく運びこまれており、現地の空港にロシアが「空軍展開の前進基地」を設けようとしているようだと指摘していた。

9月上旬にはロイター通信が政府関係者の話として、ロシアがシリア沿岸都市タルタスのロシア海軍基地に軍用機や戦車2台を送り込んだと伝えている。

シリア内戦による死者はこれまでで24万人。戦闘で家を追われた人の数は数百万人にのぼる。

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Image caption 国営シリア・アラブ通信(SANA)配信のこの写真には、ラタキアのバーセル・アサド国際空港でロシア機から人道援助物資が荷下ろしされる様子が映っている(12日)