ロシアのシリア空爆、米と標的異なる? 両国協議へ

Screengrab from video posted online by opposition activist purportedly showing aftermath of Russian air strikes in Talbiseh, Homs province, Syria (30 September 2015) Image copyright Syria Rebels Gathering
Image caption シリアの反政府活動家がネットに掲載したビデオより。ロシアによるホムス県空爆後の映像と説明している(30日)

ロシア国防関係者は30日、シリア領内の過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点20カ所を空爆したと明らかにした。一方でアメリカは、ロシアの標的はISではなく、アサド政権に対抗する反政府勢力拠点だと懸念。米ロ両国の外相は、シリア領内で両国の軍事行動が対立しないよう、両軍が「できるだけ早急に」協議する方針を示した。

北大西洋条約機構(NATO)は、IS掃討について米ロ間の協議・調整はほとんど行われていないと懸念している。

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Russian cockpit footage purports to show air strikes hitting Syria

<ビデオ> シリア領内での空爆の様子を撮影したとされる、ロシア軍機操縦室からの映像

ロシアのラブロフ外相は「不測の事態を避けるために、連絡の方法を設ける必要がある」と発言。アメリカのケリー国務長官も「できる限り早急に」協議する必要があり、早ければ1日にも開始したいと述べた。

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John Kerry: "We agreed on the imperative of... having a military-to-military deconfliction discussion"

<英語ビデオ> 「軍関係者同士で協議するのが急務と双方が合意した」とケリー米国務長官

ケリー長官は「ISILを空爆するのはともかく、実際には別の標的が爆撃されたのではという懸念がある」と付け足した。

2011年1月から続くシリア内戦で、アメリカなどはアサド大統領の退陣を要求してきたが、ロシアは同大統領を一貫して支持してきた。

Image caption シリア国内でロシアによる空爆が報告された場所
Image copyright Syria Rebels Gathering‎
Image caption シリアの反政府活動家がネットに掲載したビデオより。ロシアによるホムス県空爆後の映像と説明している(30日)

ロシアは30日、反政府勢力が制圧しているホムス県やハマス県を空爆したとされる。犠牲者が出ているもよう。アメリカは、空爆の1時間前に通告を受けたという。

ロシア国防省は空軍が爆撃したのはISの軍備や通信施設、兵器や燃料の備蓄で、民間インフラは爆撃していないと説明している。

これに対してシリアの反政府勢力は、ロシアの戦闘機がザファレアネ、ラスタン、タルビセの町を含む複数地点を襲い、複数の子供を含む民間人が少なくとも36人死亡したと主張している。空爆された場所はいずれも、IS制圧地域ではなかったという。

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Video from opposition activists Syria Rebels Gathering appears to show the aftermath of Russian air strikes in the Syrian town of Talbiseh

<ビデオ>シリアの反政府活動家がネットに掲載したビデオより。ロシアによるタルビセ空爆後の映像と説明している

ケリー国務長官は、ロシアがISやアルカイダ関連の組織を攻撃する限りは、ロシアの空爆に反対しないと述べた。

さらにカーター米国防長官は「アサド政権を支持し、アサド政権と戦っている全勢力と戦っているかのように行動するのは、アサド政権以外のシリア全体と戦うのと同じだ。反アサド勢力の少なくとも一部は、未来を見据えた移行プロセスに参加している。なのでロシアのやり方は必ず失敗するはずだ」と批判した。

NATOのストルテンベルク事務総長は、ロシアの標的がISではないという報告に懸念を示し、「シリアでISILと戦うアメリカ主導連合の攻撃と自分たちの攻撃を調整しようという真剣な動きが、ロシア側に見られないのが特に心配だ」と話した。

空爆開始前に、ロシア連邦院(上院)はプーチン大統領に空爆開始を許可。テレビ演説でプーチン氏は、シリアやイラクの大部分を制圧したイスラム過激主義の武装勢力を空爆する、その中にはロシア市民も含まれると説明した。

「もし(過激派が)シリアで成功すれば、母国に帰国する。ロシアにもやってくる」とプーチン大統領は述べた上で、「もちろんこの紛争に全面的に突入するわけでは決してない。(略)テロ組織との正当な戦いにおいてのみシリア軍を支援するだけだ」と話した。


<解説>ジョナサン・マーカス国防・外交編集委員

空軍力によるロシアの介入は、外交によるシリア危機解決に貢献しないだろうし、むしろ事態をより一層複雑にしている。

ロシアの戦闘機がいったいどの勢力を標的にしているのかは、重大な問題だ。アメリカ政府筋は、第一陣が攻撃したのはIS制圧地域ではないとみており、むしろ複数の反政府勢力から攻撃されているアサド政権を、ロシアが空軍力をもって支援することにしたのではないかという可能性が浮上している。

アサド政権と戦う反政府勢力の多くは言うまでもなく、欧米と同盟関係にあるアラブ諸国やトルコが支援している。アメリカへの通告が空爆まで間もないタイミングだったのを問題視する人もいるだろう。シリア領空で今後、アメリカとロシアの間で問題が発生しないようにするためには、もっと緊密な調整が必要になりそうだ。


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出口見えぬ応酬 シリア内線の現場から

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