イランはアサド氏退陣を受け入れる必要ある=サウジ外相

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Image caption シリアのアサド大統領

シリア問題を協議する多国間外相会議がウィーンで始まったのに伴い、サウジアラビアのジュベイル外相は、シリアのアサド大統領の退陣をイランが受け入れることがあらゆる解決策の前提となると述べた。

ジュベイル外相はBBCに対して、アサド氏の退陣は「疑いなく」問題解決の前提条件だと強調。「政治プロセスで退陣するか、あるいは強制排除させるか、どちらかだ」と述べた。

これに対してイランのザリフ外相は、シリア問題の「まともな解決」にはイラン政府の関与が不可欠だと他の国々が気づいたのだと述べている。

ウィーンでの外相会議は事前協議が29日に始まり、30日から実質協議が始まる。

シリア問題をめぐり米国が出席している多国間協議にイランが参加するのは初めて。協議にはロシアやトルコも参加する。英仏独、エジプト、レバノン、欧州連合(EU)の外相はそれぞれ出席すると確認している。また中東の他の主要国も出席意思を表明している。

シリアのアサド政権を支援するイランとロシアは、シリア内戦における軍事支援を強化しているが、米国やトルコやサウジアラビア、他の湾岸諸国はかねてから、アサド氏がシリアの未来において長期的な役割を担うことはありあえないと、退陣を強く求めてきた。

西側外交官はウィーンでの協議を「萌芽段階」と呼んだ。別の外交官は、対立する当事者たちが怒って退席するのを防げれば、それだけで成功だと見通しを示した。

EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)は29日にイランのザリフ外相と会談後、ウィーン会議は「問題に関わる主要アクター全員が同じテーブルを囲み、政治プロセス開始に向けた共通の場を作り出そうとする」ことになると述べた。

ケリー米国務長官も29日にザリフ外相やラブロフ露外相、サウジアラビアのジュベイル外相、トルコのシニルリオール外相と会談した。

イランのウィーン会議参加について中東メディアは

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Image caption シリア反政府勢力が支配するイドリブ県のマアレト・アルヌマンを歩く人々(28日)

イランのクッズ紙は、会議にイランが招かれたことは「シリア危機の解決に対するイランの影響力を(アメリカが)認識した」ことと位置付けている。

サウジアラビアのアルジャジラ紙は、アサド氏が権力の座に残れば「イラクの政治的・軍事的拡大が続き」、イラン政府が「何もかも自分たちの利益のために」作り変えてしまうと警告している。

レバノンのアルナハル紙は、イランを協議に招こうという米国の「突然の決断」は、「ロシアの軍事介入による変化を反映したものだろう」と推測している。

ヨルダンのアルライ紙はイランの参加は、これまで「孤立していた」「ロシア外交が支援者を得ることになる」だろうと書いている。


<分析>ブリジット・ケンダルBBC外交編集委員

シリア内戦開始から4年がたち、米国主導の連合とは別にロシアが独自の空爆作戦を展開している今、紛争は今までになく危険な状態にあるようにみえる。

しかし情勢変化によって、戦闘終結の方法を急ぎ見出さなくてはならないという新たな切迫感も生まれた。

切迫感の一部を生み出しているのはロシアだ。シリア問題における主要プレイヤーとみなされたいのに加え、空爆の規模をなんとか抑制したいようにみえる。

米国とサウジアラビアがイランの言い分に耳を傾けようという姿勢になったのも、新たな転機だ。特に最大の難点だったアサド氏の処遇について、権力移行においてどういう役割がアサド氏に認められるのかについて、両国はイランの言うことを聞いてみようという態度になったのだ。

サウジアラビアとほとんどの欧米諸国は、アサド氏を障害物とみなしている。ロシアとイランは、欠かせないパートナーだと主張する。

何らかの妥協点に向かっていくらかでも動きがあるのかどうか。それが今回のウィーン会議の試金石となる。

しかしたとえ具体的な進展がなかったとしても、これほどの規模の高官級会合が実現するということ自体、シリアの悪夢から抜け出すための重要な一歩となるのかもしれない。


ワシントンではホワイトハウスのアーネスト報道官が、米国は一部のシリア反政府勢力を支援し続けると発言。そうした一部勢力に米軍が最近始めた武器・弾薬の降下作戦は、「一定の成果をあげそうな戦略を強化しようという意向のあらわれだ」と報道官は説明した。

イランは過去4年間でアサド政権支援に数十億ドルをつぎこみ、軍事顧問を派遣し、武器を提供してきた。しかしシリアの反政府勢力は、イランの参加はウィーン会議をややこしくするだけだと警告している。

イランは、シリアに軍事顧問を派遣していることはかねてから認めているが、地上部隊の派兵については否定してきた。しかし今月初めには、イラン兵数百人がシリアに入ったとの未確認情報もあり、レバノンからシリアに派遣されているヒズボラ兵と合同で北部や中部の反政府勢力拠点を攻撃しているという指摘もある。

ロシアは9月末に軍事介入を開始し、アサド政権を支援する形でシリア領内を空爆している。

これについて米政府は、ロシアが過激派勢力「イスラム国」(IS)拠点に攻撃を集中させるのではなく、むしろ穏健な反政府勢力ばかり攻撃していると批判している。


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シリア内戦

なぜシリアで戦っているのか

4年前に反政府運動として始まったものが内戦に発展し、膠着している。アサド政権、IS、さまざまなシリア国内の反政府勢力、クルド人武装組織がいずれもそれぞれに勢力圏を確保している。

誰が誰と戦っているのか

首都ダマスカスおよび国の西部を拠点とする政府軍は、ISやヌスラ戦線といった過激派勢力と戦っている。また、北部や東部に強固な足場をもついわゆる「穏健派」反政府勢力とも戦っている。さらに、政府軍以外の各勢力はそれぞれ互いに敵対している。

人的被害は?

シリア人25万人が殺害され、100万人が負傷している。1100万人以上が住む場所を追われ、そのうち400万人が外国へ避難。危険を冒してでも欧州を目指す人の数が増えている。

世界の反応は?

イラン、ロシア、レバノンのヒズボラはイスラム教アラウィ派が率いるアサド政権を支援する。一方でトルコ、サウジアラビア、カタール、および米英仏は、より穏健なスンニ派が多数を反政府勢力を支持。ヒズボラとイランは地上部隊や将校を派遣しているとされる。アメリカなど欧米主導の連合国とロシアが空爆を実施している。


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