ロシア陸連を資格停止に 反ドーピング機関が勧告

Wada commission handed out Image copyright EPA
Image caption WADA独立委は、独テレビ局が昨年放送したドキュメンタリーで指摘したロシア陸連の腐敗について調査していた。写真は記者会見で報告書を配る独立委スタッフ。

世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会は9日、ロシア陸上競技連盟を資格停止処分にし、来年のリオデジャネイロ五輪では出場停止にするよう勧告した。独立委はロシア陸上におけるドーピングや隠蔽工作、ゆすりなどの疑いを調査し、国際陸上競技連盟(IAAF)も関与していると指摘している。

9日に記者会見したWADA独立委のパウンド委員長は、来年のリオデジャネイロ五輪でロシア陸連を出場停止にするよう勧告。

「(ロシア陸連が)自主的に是正措置を行うよう期待している。そうでなければ、リオにはロシアの陸上選手がいないという事態になりかねない。自分たちで、もう変わらなくてはいけないのだと自覚してほしい」と委員長は述べた。

WADA独立委は、選手のドーピング疑惑が指摘されてもほとんどが見逃されたことで、2012年のロンドン五輪は「妨害」されたと指摘。さらにロシアは「国ぐるみ」で組織的にドーピングを行っていると批判し、選手5人とコーチ5人について、永久追放処分を勧告している。

IAAF会長のセブ・コー卿はBBCに対して、ロシア陸連には今週末までにWADA独立委報告に回答するよう要請したと述べた。ロシア陸連の回答次第で、IAAFとして永久追放処分など「制裁を含む選択肢」を検討するという。

「いつまでにという時期を決めるつもりはないが、必要なことは何でもする。あっさり元通りに戻れるような問題ではない」とコー卿は述べた。

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ロシア陸連の資格停止を勧告 反ドーピング機関

ロシアのムトコ・スポーツ相はインタファクス通信に対し、報告書の勧告にもとづいた対策をとると述べたが、ロシア陸連のゼリチェノク会長は、WADAに資格停止を求める権限はないと反発している。

ゼリチェノク会長はR-Sportテレビに「資格停止については11月のIAAF会合で協議する。違反があったとして、それは選手個人の責任ではなく連盟の責任だという証明が必要だ。我々には汚名を雪ぐ機会が必要だ」と述べた。

国際刑事警察機構(インターポール)は、ドーピングと汚職の疑いについて各国の捜査機関と共同で国際捜査を調整する方針を示している。

WADA報告書の概要

WADA独立委の報告書は、スポーツ専門の弁護士リチャード・マクラーレン氏が共著者のひとり。マクラーレン氏は、ロシア陸連の問題は国際サッカー連盟(FIFA)の問題とも「次元の異なる腐敗の規模」で、不正のせいで実際の競技結果を変更する羽目になったほどだという。

報告書はさらに――

  • ドーピング検査の基準やコンプライアンスがいかに不十分か具体的に例示
  • ロシア陸連もロシア反ドーピング機関もロシア連邦そのものも、反ドーピング基準を順守しているとはいえないと示唆
  • WADAはモスクワの検査機関の承認を速やかに取り消すべきで、賄賂を要求し受け取り、保存するよう指示された検体を破棄してきたロドチェンコ所長を永久に解任すべきと
  • ロシアで一部の医師や検査機関スタッフがコーチたちを手助けし、組織的な不正を可能にしていたという指摘を確認
  • モスクワの検査機関関係者が、特定の検体を保管するようWADAから書面通知された後に、1400もの検体を意図的に悪意をもって破棄したと指摘
  • モスクワやソチの検査施設にはロシア公安部関係者がいたと指摘し、これは「ロシア国家が検査作業に直接圧力をかけ介入している」大きな動きの一環だと批判
  • ロシア反ドーピング機関は選手に検査予定を事前通知し、検査を受けなかった場合については報告せず、反ドーピング担当官や家族に圧力をかけ、検査逃れを隠すために賄賂を受け取っていたことが分かったと指摘
  • IAAFやロシア陸連が「集団的に、かつ説明不可能な『見逃し』方針」を採用していなければ、ドーピングが疑われていたロシア人選手数人がロンドン五輪に出場できなかったはずだと指摘
  • 「検体を破損しようと」する行為にロシア司法当局も関与していたことが分かったと指摘
  • IAAF関係者による規則違反の事例を複数発見したと指摘し、IAAFは「疑わしい血液検査などについて、なぜあれほど熱心でないのか説明しがたい」と批判
Image caption 2012年ロンドン五輪のメダル獲得数。ロシアは4位だった。

どのドーピング疑惑が問題になっているのか

WADA独立委は報告書について、ドイツのテレビ局が昨年12月にロシア陸上について放送したドキュメンタリー番組の「信憑性を判断する」ための「きわめて限定的な任務を与えられて」調査・作成したものだと説明している。

ドイツ公共放送連盟(ARD)のドキュメンタリーでは、ロシアの選手が賞金の5%を国内のドーピング検査担当者に払い、禁止薬物の提供を受けたり、検査結果の改ざんを頼んだりしていると報道。またIAAFも隠蔽工作に関与していると責任を追及していた。

番組では、ロシア反ドーピング機関の元職員ビタリ・ステパノフ氏とその妻で、かつてドーピングで選手資格を停止された800メートル走者のユリアさん(旧姓ルサノワ)が、組織ぐるみのドーピングを告発。禁止薬物を使ったと認めるロシア人選手の告白や、ドーピングと汚職の実態を示す証拠も提示していた。

今年8月には英紙サンデー・タイムズと独ARDが、11年にわたり選手5000人から採取した血液検査の結果を入手したところ「想像を超えた不正の規模」が分かったと報道していたが、今回の独立委調査はこの件については調べていない。IAAFは8月の報道については「扇情的で腹立たしい」と反論しており、WADAは別途、内容について調べている。

Image caption 「選手生体パスポート」(ABP)が異常値を示した検査結果の2010年以降の国別推移。ABPとは、選手の現役時代を通じてバイオマーカー(生物学的指標)を電子記録で管理するもの。何かのマーカーが急変すれば、ドーピングが疑われる。

次はどうなる?

IAAF会長のコー卿は、ロシア陸連の処分はロシア側の反応を待ってから決めるとBBCに話した。

「回答してもらうのが、正しいやり方だ」とコー会長は言い、「自分の競技で行われることに対して私には責任があり、ロシア陸連に回答してもらいたい。自分の競技を守りたいが、これは陸上競技やロシアだけの問題ではないと強調したい」と述べた。

「告発の全体像を理解しなくてはならない。自己点検もする。速やかに対応する。望むのは、透明で説明責任をきちんと担う競技だ。そのためにできることをするつもりだ。しかしすぐにできることでもない」とコー卿は方針を示した。

(英語記事 Athletics doping: Wada commission wants Russia ban