ロシアが巨大核魚雷を開発中? テレビで「誤って」放送

Torpedo diagram shown on Russian state TV Image copyright Russian state TV
Image caption 国営テレビの画面で、大型長距離魚雷の開発計画がはっきり映った

核弾頭を搭載した大型魚雷のロシアの秘密開発計画が国営テレビで放送されてしまった問題について、ロシア政府は手違いだったと説明した。

プーチン大統領が南西部のソチで軍幹部と協議する様子を国営「チャンネル1」が10日に伝えた際、軍幹部のひとりが「壊滅的」な破壊力をもつ魚雷システムの資料を読んでいる様子が映しだされた。

それによると、潜水艦から発射する想定の魚雷は「放射能汚染を広範囲に及ぼす」と資料に書かれている。

「海洋型多目的ステータス6システム」と呼ばれるその魚雷システムは、「敵の沿岸部の主要経済施設を破壊し、放射能汚染を広範囲に及ぼし長期にわたり軍事・経済その他の活動に使えなくすることで、敵国の領土に壊滅的な損害を確実に与える」ことを意図しているという。

ロシア政府のペスコフ大統領報道官は11日、「機密情報が画面に映し出されてしまったのは事実で、そのため後に削除された。今後はもちろん、このようなことがないよう防止策を講じる」と述べた。

米国防総省の報道官はBBCに対して、「ビデオ映像については承知しているが、信憑性についてはロシア海軍の案件だ」と述べた。

しかし政府系新聞ロシスカヤ・ガゼータは12日付で、図面を示さずに魚雷の詳細について報道し、放射性物質コバルトが搭載される可能性について言及。このため、テレビでの放送もミスではなかった可能性がある。

コバルト弾頭?

図面によると、魚雷の射程距離は「最大1万キロ」で弾道の深さは「最大1000メートル」。開発はサンクトペテルスブルクにある潜水艦設計のルービン設計局が担当しているという。

09852型ベルゴロド級と09851型ハバロフスク級の原子力潜水艦への搭載が想定されているようだ。

ロシスカヤ・ガゼータによると魚雷は、100ノット(時速185キロ)で自律的に水中を進む「ロボット式小型潜水艦」で、「あらゆる音波探知装置やその他のわなを回避する」能力を備えているという。


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  • ロシアの一部コメンテーターは、巨大魚雷の情報は意図的にリークされたものだろうと指摘
  • 冷戦時代の1950年代に原子力物理学者アンドレイ・サハロフ博士が、似たような魚雷を想定した。サハロフ氏は後に高名な反政府の平和活動家になった
  • 100メガトン級の核弾頭は巨大津波と高い放射能で米国の沿岸部を壊滅させることができる
  • これまでに実際に爆発した最大の核弾頭は、58メガトンのソビエト製水爆「ツァーリ・ボンバ」(爆弾の皇帝)
  • ロシアは魚雷「リーク」によって米政府に核開発で上手を取ろうとしないように警告しているというのが、ロシア軍事アナリスト、イゴール・コロトチェンコ氏の見解。

国営テレビのリポートで魚雷の図面が映し出される直前には、プーチン大統領が軍幹部たちに、米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟各国が「我々の懸念や協力の申し出を残念ながら無視して」世界的ミサイル防衛システムの構築にまい進していると発言していた。

プーチン氏は、西側の防衛計画は「核兵器の既存の戦略的均衡を脅かし、世界的・地域的安定の仕組み全体を覆そうとするものだ」と批判していた。

これに先立ちプーチン氏は今年6月には、年内に大陸弾道ミサイル40基を新たに配備すると表明している。

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Image caption RS-24弾道ミサイル。ロシアは戦略核の装備充実を図っている。
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Image caption ロシア原潜「ユーリ・ドルゴルキー」の2009年資料写真

国の「真の狙い」

米国は、イランやいわゆる「ならず者国家」からの短距離・中距離弾道ミサイル攻撃に備えて、海上のイージス弾道ミサイル防衛システムを開発している。ルーマニアやポーランド領内にいずれ対空ミサイルを配備する案もこの計画に含まれる。

しかしプーチン氏はイラン核開発を制限する今年夏の国際合意を引き合いに、米国とNATOのこの計画を批判する。

軍幹部とのソチでの会合でプーチン氏は「イランや北朝鮮の核の脅威を指摘するのは、米国の真の狙いを隠すためだ。真の狙いは、他の核保有国の戦略的潜在能力を無効化することだ。その最たる対象はもちろん、ロシアだ」と述べた。

大統領はロシアが引き続き、いかなるミサイル防衛システムも突破できる戦略攻撃システムの開発を続けると表明した。

ロシスカヤ・ガゼータによると、新しい魚雷に想定されている破壊力は、コバルト爆弾にあてはまる。これは、コバルト59(安定した通常のコバルト)の層を含む核弾頭で、コバルト59は爆発によって、きわめて強いガンマ線を放射する人工放射性同位体コバルト60となる。半減期は5年以上だ。

このような兵器は「生きているものはすべて確実に殺害する」、地下シェルターにいても助からないだろうと同紙は書いている。

放出する放射線があまりに強力なため、コバルト爆弾の核実験が行われたことはない。

「しかし抑止力としては有効だ。たとえばペリメートル・システムのように。これは国の指導中枢とすべての司令拠点が壊滅させられたとしても、ロシアの全核装備で報復攻撃をするというシステムで、常に臨戦状態にある」と同紙は書いている。


ロシアの軍専門家がBBCロシア語サービスに語ったところによると――

  • 100メガトン以内の弾頭は、高さ500メートルの津波を引き起こし、米国沿岸から1500キロの範囲の生きるものを壊滅させることができる - コンスタンティン・シスコフ氏、ロシア地政学研究所
  • 資料にあるロボット式魚雷にはほかの用途もあり得る。たとえば深海機材の運搬や監視装置の配置などだ。ロシア国防省には深海調査の専門部局がある- コンスタンティン・ボグダノフ氏、Lenta.ru サイト
  • 米軍も以前から潜水艦の破壊と探索を目的にしたロボット式潜水装置の開発を進めており、今回の情報は既知のことだっただろう -ビクトル・ムラホフスキー、予備役大佐、「父なる祖国の装備」誌編集長 magazine.

(英語記事 Russia reveals giant nuclear torpedo in state TV 'leak'

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