「ジハーディ・ジョン」殺害をほぼ確信=米軍

Jihadi John
Image caption 「ジハーディ・ジョン」

米国防総省は13日、シリアでの無人機攻撃によって、過激派勢力「イスラム国」(IS)の戦闘員で「ジハーディ・ジョン」と呼ばれる英国人モハメド・エムワジ容疑者を殺害したと「ほぼ確信」していると発表した。クウェート生まれの英国人エムワジ容疑者は、日本人の後藤健二さんと湯川遙菜さんのほか、多くの人質の殺害ビデオに登場していた。

報道官のウォーレン大佐は、ラッカへの攻撃は標的に命中したことを確認したが、「成功したと正式に発表するまでには」時間がかかると説明した。

大佐はこうした「通常通りの」攻撃によって今年5月以来、平均して「2日ごとにIS幹部や中堅メンバーを1人は」殺害してきたと述べた上で、エムワジ容疑者はISにおいて「主要な存在」ではなかったが、その殺害はISにとって「大きな打撃」になるはずだと分析した。

米政府筋はBBCに、エムワジ容疑者を乗せた車両を「慎重に一定期間追跡した」後に攻撃したのだと話していた。この車両には別の人物も1人、同乗していたとみられている。

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Col Steve Warren: "We are reasonably certain that we killed the target that we intended to kill"

<英語ビデオ> 国防総省のウォーレン報道官が「殺害しようとした標的を殺害したとほぼ確信している」と

これとは別にトルコ政府筋は、「ジハーディ・ジョン」の共犯とされる英国人男性オーニャ・レスリー・デイビス容疑者を拘束したと明らかにした。

「ISの心臓部を攻撃」

ダウニング街の首相官邸前で会見したキャメロン英首相は、攻撃が成功したかは確かではないが、エムワジ容疑者追跡のため英政府は「文字通り昼夜を問わず」米政府と協力してきたと述べ、エムワジ容疑者への攻撃は「正当な行為だ」と評価した。

首相は、攻撃が成功したならそれは「ISの心臓部への攻撃」となり、「我々の影響力は遠くまで届くのだと、我々の決意は揺るぎなく、国民のことを決して忘れないのだと」英国に損害をもたらす者に知らしめることになると強調した。

攻撃に使用されたのは英国の無人機1機と米国の2機で、エムワジ容疑者の車に命中したのは米国の無人機だったという。

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David Cameron: "Emwazi is a barbaric murderer... this was an act of self defence"

<英語ビデオ> ダウニング街の首相官邸前で「エムワジは野蛮な人殺しだった(略)これは自衛行為だった」と強調するキャメロン首相

人質ビデオ

エムワジ容疑者は2013年にシリアへ移動し、後にいわゆる「イスラム国」に加入したと思われている。

最初にISのビデオに登場したのは昨年8月で、米国人ジャーナリスト、ジェイムズ・フォーリーさん殺害のビデオに映っていた。

後に米国人ジャーナリストのスティーブン・ソトロフ氏、人道支援団体の英国人職員デイビッド・ヘインズさん、英国人タクシー運転手アラン・へニングさん、人道支援団体の米国人アブドル・ラフマン・カシッグさん、日本人ジャーナリスト後藤健二さんたちを殺害するビデオにも映っていた。

当初「ジハーディ・ジョン」と呼ばれた男はビデオでは常に黒衣姿で、黒い覆面で顔を覆っていた。シリア兵の殺害ビデオにも映っていたという。

今年2月に、西ロンドン出身のモハメド・エムワジと身元が公表された

デイビッド・ヘインズさんの娘ベサニーさんは、エムワジ容疑者が殺害されたかもしれないと知り、「もうこれ以上あんな恐ろしいビデオに出てこれないのだと思うと、たちまちホッとした」と話す。

「(エムワジ容疑者は)ISISのくだらないゲームの駒に過ぎなかった。けれどもやっと終わったと、ついに死んだのだと思うと、まだ実感がわかない。死んでほしいと強く願う一方で、なぜあんなことをしたのか、なぜ私のお父さんに、あんなことをして何の意味があったのか、答えてもらいたかった」

「複雑な気持ち」

アラン・へニングさんの遺族は、攻撃について12日夜に英政府から知らされたという。

おいのスチュワート・ヘニングさんはツイッターで「複雑な気持ちだ。覆面の臆病者には、アランや友人たちのように苦しんでもらいたかったけど、破壊されて良かったという気持ちもある」と書いている。

英労働党のジェレミー・コービン党首は、エムワジ容疑者は「冷淡で残酷な犯罪の責任をとらされた」ようだとした上で、「しかし法廷できちんと裁いた方が、われわれ全員にとって良かったはずだ」と、拘束して法の裁きを与えるべきだったという見解を述べた。

ツイッターでは「ラッカは静かに虐殺されている」という団体が、無人機攻撃はここだと主張して地図を投稿した。

同団体は「ISISが処刑場に使っている時計塔の近くでジハーディ・ジョンが殺されたのは良かった」ともツイートしている。

Image caption モハメド・エムワジ容疑者を殺害したとされる無人機攻撃はここだと、ツイッターに投稿された地図

<分析>フランク・ガードナーBBC安全保障問題編集委員

モハメド・エムワジは「イスラム国」において軍事的な役割を担ってはいなかったとみられているが、それでも 西側の人道支援ワーカーやジャーナリストをサディスティックにカメラの前で殺害した過激派兵士として、米英情報機関の重要な標的だった。

今年2月に身元が公表された後、エムワジは表立って姿をほとんど現さなくなり、自分の居場所を特定されないよう行動の電子履歴を残さないよう特に注意していた。

しかし英政府通信本部(GCHQ)は、エムワジ本人や協力者の居場所の手がかりとなる暗号通信の傍受・解読に、多大な努力を払ってきた。


Image caption 左上から時計回りに、アブドル・ラフマン(ピーター)・カシグさん、スティーブン・ソトロフさん、ジェイムズ・フォーリーさん、後藤健二さん、デイビッド・ヘインズさん、アラン・ヘニングさん

スティーブン・ソトロフさんの両親アートさんとシャーリーさんは、エムワジ容疑者殺害の知らせを得ても何も変わらないと話した。息子は戻ってこないし、「(成果としては)少なすぎるし遅すぎる」と悲しみを新たにしたソトロフさんたちは、ISの被害に遭ったすべての人を追悼するべき時だと述べた。

後藤健二さんの母、石堂順子さんは「私の思いはこの世からこういった争いが消えてもらいたいということです。憎しみの連鎖は望んでおらず、息子も同じ思いだと思います」と話した。


モハメド・エムワジ容疑者とは

  • 1988: クウェートで生まれる。1994年に英国移住。
  • 2009: ウェストミンスター大学でコンピューター関連の学位を取得。
  • 2009年8月: 友人2人とタンザニア旅行。ダルエスサラームで入国を拒否されアムスタルデムへ移送される。取り調べの後、英ドーバーへ帰国し、改めて事情聴取される。
  • 2009年9月: 仕事のためクウェートを訪れ、父親の家族を訪問。
  • 2010年5~6月: 英国に8日間の一時帰国。
  • 2010年7月: 再び英国に帰国。クウェートに戻ろうとするも、ヒースロー空港でビザが失効しているため出国できないと知らされる。クウェート再入国のビザ発行されず。
  • 2012: 英国教師資格取得。
  • 2013: 届出提出によりモハメド・アルアヤンに改名。クウェート渡航を試みるも入国を拒否され、後に失踪。両親が警察に行方不明届を提出。4カ月後、シリアに入国したと警察が両親に伝える。

出典:Cage


今年初めには、エムワジ容疑者が2013年にシリアへ向かう前から何度か中東を訪れていた行動の履歴が明らかになった。2009年8月のタンザニア旅行が、英治安当局に知られるようになったきっかけだと見られている。

氏名が公表されてから、エムワジ容疑者が過激主義に傾倒していった過程について、対テロ戦争に反対する英団体「Cage」が、英保安局(MI5)との接触が影響しているのではないかと指摘した。

しかし英首相官邸はこれに対して、そのような指摘は「まったく不当だ」と反論し、キャメロン首相はMI5を擁護していた。

Image caption シリア入りするまでの「ジハーディ・ジョン」の行動

(英語記事 'Jihadi John': US 'reasonably certain' strike killed IS militant

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