中国大気汚染、北京で初の最高「赤色警報」

  • 2015年12月8日
北京で大気汚染の「赤色警報」が発令されるのは初めて Image copyright Reuters
Image caption 北京で大気汚染の「赤色警報」が発令されるのは初めて

中国の首都・北京市で7日夜、大気汚染に対する最高レベルの「赤色警報」が初めて発令され、8日朝から緊急対策が実施された。学校は休校となり、屋外の工事現場も停止した。警報は10日昼まで続く予定。

「赤色警報」の発令に伴い、車両の運行も制限され、一部の工場も操業停止を命令された。車はナンバープレートの末尾が偶数か奇数かによって1日おきにしか運転できない。行政当局は、公共交通機関を増便すると説明している。

2年余前から導入された大気汚染に対する中国の警報は、「青」「黄」「オレンジ」「赤」の4段階からなる。

Image caption 米環境保護庁の基準に基づいて米大使館が観測した北京のPM2.5汚染の深刻度(2008~15年)

対策措置が始まった現地時間8日午前7時(日本時間同8時)の時点で、北京の米国大使館が測定したところ、微小粒子状物質PM2.5の濃度は1立方メートル当たり291マイクログラムだった。午前11時の時点では同250マイクログラムでこれでも「非常に健康に悪い」とされる水準。北京近郊では、この数倍もの数値が測定された場所もあるという。世界保健機関(WHO)が推奨する上限は、同25マイクログラム。

北京に住むリ・フイエンさんはAP通信に対し、「自分で自分を守るためにできることはなんでもしないと。マスクをしていても気分が悪いし元気が出ない」と話した。


「なぜ今、赤なのか」 ジョン・サドワース、BBCニュース、北京

スモッグ対策のマスクをしっかりはめて今朝、自転車で出勤したところ、交通量は確かに普段よりはるかに少なかった。北京初の赤色警報で、自動車の半分は今日は走れないからだ。ナンバープレートの番号が奇数なら今日走れる。明日は偶数だ。

確かに大気は不愉快で汚らしい灰色だが、汚染数値は実は先週の今頃に比べてずっと低い。先週の時点では、PM2.5の数値はWHO推奨上限の約40倍に跳ね上がっていた。今日はたかだか10倍だ。

ではなぜ今、赤なのか? まずこれまで一度も赤色警報が出ていないという、その点に対する批判が日に日に高まっているからというのがある警報が出ないため学校は休校せず、子どもたちは先週、どんより汚染された空気の中を登校し続けた。見送る親たちは、一体何がどうなれば政府は重い腰をあげるのかと途方に暮れていたのだ。

当局を遂に動かしたのは、高まる市民の圧力だったのかもしれない。


中国では未だに使用する燃料の6割以上が石炭だ。石炭に依存する産業や暖房設備、乗り物からの排出ガス、建設現場からの粉塵などが組み合わさってスモッグとなり、さらに湿気や風のない空気の停滞によって悪化する。10日には寒冷前線の影響でスモッグが解消される見通し。

スモッグの影響は気象や地理的条件によって悪化する。北京の場合、南と東に汚染源の工業地帯があり、北と西には汚染大気を閉じ込める山が連なる。

しかし大気汚染悪化はそうした気象や地理のせいだけではなく、中国が環境コストを度外視して急速な経済成長を優先しすぎたせいではないかという懸念が、市民の間で高まっている。

北京で働くファン・ジンロンさんは「環境を犠牲にあまりに発展を急いだのかもしれないという、鋭い警告だ。大気汚染に真剣に取り組まなくてはならない」と話した。

大気汚染が中国にもたらしている健康被害は深刻だ。科学誌「ネイチャー」に今年発表された独マックス・プランク研究所の調査は、中国では140万人が大気汚染の影響で死亡していると指摘する。

環境保護団体グリーンピースは先週、中国政府に対して赤色警報を発令するよう呼びかけていた。南京市は2013年12月に赤色警報を発している。

北京市は11月30日に、最高から2番目の「オレンジ」警報を発していた。

中国では11月に瀋陽市で1立方メートル当たり1400マイクログラムのPM2.5濃度を記録。環境保護団体によると、これは中国で最悪の記録だという。

一方で今年1~10月の北京の大気汚染は、散発的に悪化することはあっても全体としては前年同期に比べて改善していた。

ロンドン・キングスコレッジの環境調査グループによると、12月6日のロンドンの平均値は同8マイクログラムだった。2014年と2015年の春には70以上に達し、最高記録は2006年11月5日夜の112だったという(11月5日はイギリスでは「ガイ・フォークスの日」で、各地でたきぎを燃やすのが風習)。

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Image caption 北京の第4環状道路付近から中心部を望む(今月1日)
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Image caption 翌日の同じ地点

<分析> マット・マグラスBBC環境編集委員、パリ

中国の大気の状態は、気候変動について世界的な合意が得られるかどうか決めるひとつの鍵となる。

パリで開かれている国連の地球温暖化対策会議で中国の代表団は、特に都市部の石炭消費を削減するため、再生可能エネルギーの開発に投資し続ける方針を強調している。中国では2014年に増えた一次エネルギー消費の増加分の58%が、化石燃料以外の燃料を使用していた。

環境に優しいエネルギーに移行しようという試みは、北京の大気改善にはただちにつながっていないかもしれないが、世界全体の二酸化炭素排出量削減には効果を発揮している。公表されたばかりの今年の数値を見ると、世界経済は拡大したものの炭素量は一定か、もしくは微減しているのだ。

ここパリで温暖化対策に向けて強力な合意が実現したとしても、中国の問題はただちには解消しないだろう。しかし中国の取り組みによって再生可能エネルギーの価格がさらに下がるならば、長期的な問題解決には貢献するのかもしれない。


Image caption PM2.5の大きさを人間の毛や海岸の砂と比較した
Artist Kong Ning wants to highlight her concerns over pollution in China

<英語ビデオ>大気汚染対策を訴えるパフォーマンスをする現代アーティスト