ローマ法王、現代の家族のあり方に理解呼びかけ 家族愛について指針

バチカンで新婚カップルを祝福するフランシスコ法王(3月23日) Image copyright AFP
Image caption バチカンで新婚カップルを祝福するフランシスコ法王(3月23日)

ローマ法王庁のフランシスコ法王は8日、カトリック教会は現代における現実的な家族のあり方により理解を示すべきだとする、家庭生活の指針を発表した。「家族の愛について」と題された指針は、カトリック教会の教義を変更するわけではないが、各国の司教がそれぞれの国の文化状況に応じて教義を解釈できるようになる道が開けた。

「家族の愛について」は、家族や結婚、避妊、育児などについて法王の考えを詳述したもの。2回にわたるシノドス(世界代表司教会議)と3年間の検討を経てまとめられた今回の発表については、全世界13億人のカトリック教徒が注目していた。

離婚・再婚経験者に道が

法王は世界各地のカトリック家庭にアンケートを送り、希望や不安について質問。その後、ローマで2度にわたりシノドスを開き、多くの国で激しく議論されている家族や結婚に関する諸問題について協議した。

カトリック教会で特に意見の分かれる問題には、離婚あるいは再婚した信者が聖体拝領できるようにするか、人工中絶を認めるか、同性愛を容認するかなどが含まれる。

今回の法王の勧告にもとづき、離婚・再婚経験者も場所によっては聖体拝領できるようになる可能性が開けた。

カトリック教会の中でも保守派は教義変更に反発するが、リベラルは、教会の理想に厳密に沿わない家族にも慈悲と寛容の姿勢を示すよう法王が求めることを期待していた。

教会内の進歩派は、離婚・再婚した信者にも司教や司祭が個々の状況に応じて信者として扱うことができるよう、柔軟な対応を求めていた。

フランシスコ法王も昨年のシノドスで、離婚・再婚の問題をめぐり世界の変化に目をつぶる教会幹部に対して、家族たちの苦しみよりも教義に関する自分たちの頑なな態度を優先させていると批判していた。

BBCのキャロリン・ワイヤット宗教担当編集委員は今回の勧告について、保守派も進歩派も排除せず、どちらも満足させるよう意識した、慎重な内容だと指摘。ただし、同性愛について教会の理解を期待していた同性愛信者たちは落胆するかもしれないと話す。

「傷ついた家族たち」

フランシスコ法王は勧告で、「傷ついた家族たち」にはより慎重に対応し、厳しく一刀両断するのではなく慈悲を示すよう、司祭たちに呼びかけた。

一方で法王は、伴侶が必要とすることよりも自分の満足を優先させようとする欧米人が増えたのは、個人主義のせいでもあると批判。

また性教育は必要だが、愛とは何かを教える教育の枠組みの中でなければならないと強調する。

「使徒的勧告」と呼ばれるこの文書で、法王は一貫して司祭たちに、信者をより良く導くよう求めている。結婚前のカップルには結婚生活についてより良く指導し準備させると共に、司祭も信者も人間の弱さもろさについて今まで以上に理解するよう呼びかけている。

法王はカトリック教会に対して、同性愛の信者を今まで以上に受け入れるよう求めている。ただし、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)な人たちの家族に対する教会の態度に変更はない。

LGBT活動家の多くはカトリック教会に、同性結婚や同性愛者同士の家族を認めるよう求めてきた。しかし法王の勧告は「尊敬の心を持って宗教者として指導するよう」呼びかけるにとどまった。

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Image caption 5歳の少女にロザリオを渡す法王(6日)

「家族の愛について」より

・「私たちは良心を取り換えるのではなく、良心を形成するよう求められた」

・「同性愛の人たちの結びつきを結婚と同等のものとするよう求める提案については、それが神が意図する結婚や家族の形に多少なりとも似ている、わずかでも近いものだと考える根拠は何一つない」

・「混乱の余地のない厳正な宗教指導を期待する人たちがいるのは承知している。しかし、聖霊は弱い人間のさなかに善なるものの種をまく。その善きものに気を配るよう、イエスは教会に求めていると、私は心から信じている」


<分析>道を開いた――キャロリン・ワイアットBBC宗教担当編集委員

今回の法王勧告は、実に慎重な内容だ。過去2年の間にローマで開かれた2回のシノドスの議論内容を反映している。

一部が期待したような、カトリック教会の教義変更はなかった。しかし、離婚経験者や内縁関係にあるカトリック信者の聖体拝領などについて、教会内で解釈権限の委任拡大に道を開いた。

法王は、各国の司教がそれぞれの文化状況に応じて独自の解決を求めるよう促している。そして「イレギュラー」な状況にある信者たちを今まで以上に教会が迎え入れるよう呼びかけた。

しかし今後の方向性として、教会の教えはあまねく一律ではないかもしれないという法王の姿勢は、混沌への扉を開くと保守派は批判するだろう。同様に、同性愛の信者をもっと歓迎してもらいたいと期待していた一部のリベラルもひどく落胆するだろうが、フランシスコ法王がその期待に応えるはずはなかった。

(英語記事 Catholic Church: Pope Francis urges greater family understanding

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