【移民危機】対応できなければ欧州で「大衆の反乱」=元英情報機関トップ

欧州を目指し地中海を渡ろうとしてリビア当局に止められた人々(16日、リビア・トリポリで) Image copyright Reuters
Image caption 欧州を目指し地中海を渡ろうとしてリビア当局に止められた人々(16日、リビア・トリポリで)

英秘密情報部(MI6)のサー・リチャード・ディアラブ元長官は、欧州各国が移民危機に対応できることを示せなければ、「大衆の反乱」が起きると警告した。

移民問題をテーマにしたBBCのフォーラムで講演した元長官は、秩序ある移民受け入れのための交渉で、欧州連合(EU)がトルコ国民の査証なし渡航を許可したのは、火の近くにガソリンを貯蔵するようなもので「ねじれた論理」だと語った。

同フォーラムでは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の特使を務める女優アンジェリーナ・ジョリー=ピット氏も講演。難民に対する人道支援体制は崩壊しつつあるとし、「移民に対する恐怖」を指摘したほか、移民の規制を他の国よりも強めようとする各国が「最低争い」をしていると批判した。

ディアラブ元長官は、欧州に到着する移民は今後5年間で数百万人に上る可能性があると述べ、移民危機が欧州の地政学的様相を変えるかもしれないと指摘。「もし欧州各国が協力して移民危機に対応できると多くの市民を納得させられなければ、EUは、すでにその兆しが見られる大衆の反乱に翻弄させられるようになる」と述べた。

英国で来月予定されるEU離脱を問う国民投票について元長官は、「より大きな地政学的ゲームで振られる最初のサイコロになる」と評した。

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112人でゴムボートに……欧州のはずがリビアに
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Image caption 欧州が移民問題に対応できるのか懸念が高まっている(写真は今月13日にイタリア・シチリア島に到着した移民たち)

EUとトルコの交渉は、トルコが反テロ法の改正を拒否しているため、暗礁に乗り上げた状態になっている。

ディアラブ元長官は、トルコとの交渉よりも、アフリカで移民希望者を生み出す根本原因の対策に18億ユーロ(約2200億円)拠出する方が「理にかなっている」と述べ、このような基金による「大規模な対応」と「北アフリカ沿岸でずっと積極的な行動」を組み合わせるのが唯一の解決策になるとした。

しかし同氏は、移民に対して門を閉ざすべきではないとの考えを示した。同氏は、「現実の世界では、ジェームス・ボンドのような奇跡的な解決策はない」とし、「原因となっている引力がなくならない限り、人々の潮流に逆らうのは不可能」だと述べた。

元長官に先立ち講演したアンジェリーナ・ジョリー=ピット氏は、世界の人口から計算して122人の1人にあたる6000万人以上が定住地を失っており、その数は過去70年で最も大きくなっていると指摘した。

ジョリー=ピット氏は、「この数字は世界の平和と安全保障について大きな懸念が生じていることを示している」と述べた。さらに「新たな定住地が見つかるまで平均で20年近くかかっている」と指摘した。

ジョリー=ピット氏は、「紛争の数と定住地を失う人の規模はあまりに大きくなっている」として、難民を守り、元の状態に戻す制度は機能不全に陥っていると語った。

Image caption 2014、15年にEUに入った非合法移民の主なルートとその数(フロンテックス調べ)
Image caption 世界の難民の数(2015年中盤時点で推計、UNHCR調べ)

<用語について> BBCは、亡命申請の法的手続きを終えていない、移住中の人すべてを「移民」(migrants)と呼んでいる。この中には、戦争で引き裂かれているシリアのような国を逃れて移動し、難民認定される可能性の高い人たちも含まれる。また、各国政府に「経済移民」と分類される可能性の高い、より良い職業や生活を求めて移動している人たちも、「移民」に含まれる。

(英語記事 Europe migrant crisis: EU faces 'populist uprising'

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