ケン・ローチ作品、カンヌ最高賞に

  • 2016年05月23日
ケン・ローチ監督 Image copyright AFP
Image caption ケン・ローチ監督

フランス・カンヌで開かれていた第69回カンヌ国際映画祭は22日夜、コンペティション部門の最高賞パルムドールにケン・ローチ監督の「I, Daniel Blake(私、ダニエル・ブレイク)」を選んだ。英国出身の79歳監督にとって、2006年の「麦の穂をゆらす風」に続く2度目のパルムドール受賞。

妻を失った中年男性と英国の福祉制度を描いた今作で受賞したローチ監督は、「緊縮財政という危険な計画」による社会保障費の削減を強く非難した。

審査員賞は英ケント出身のアンドレア・アーノルド監督が「アメリカン・ハニー」で受賞した。

「私、ダニエル・ブレイク」と「アメリカン・ハニー」は共に、アイルランド出身のロビー・ライアン撮影監督が撮影を担当した。

グランプリはグザビエ・ドラン監督の「Juste la Fin du Monde (ただ単に世界の終わり)」が受賞した。

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Image caption 閉会式に並んだ受賞者たち

「世界は危険なところに」

映画を50本以上作り、社会活動家としても知られるローチ監督の作品がカンヌでコンペティションに参加するのは13回目。共同作業を長く続けてきたポール・ラバティー氏の脚本で、スタンダップ・コメディアンのデイブ・ジョンズを主役に起用。イングランド北東部ニューカッスルで心臓発作で働けなくなった男性が、福祉当局に就労可能と認定され福祉手当の支給が止められてしまい、食事にも困るようになる様子を描く。

パルムドールを受け取った監督は「希望のメッセージを発しなくては。これとは違う世界もあり得ると言わなくてはならない」、「今の世界は危険なところにきている。ネオ・リベラリズムと呼ぶ思想が動かす危険な緊縮財政にがんじがらめにされ、とんでもないことになりかけている」と呼びかけた。

デイブ・ジョンズ演じるダニエルは、2人の子供と共にロンドンからニューカッスルに引っ越してきたシングルマザーのケイティー(ヘイリー・スクワイヤーズ)と出会う。

審査員たちは、「『頑張り屋と怠け者』という嘲笑的な対比が横行する現代英国で、まるで鉄条網に囲まれたかのような福祉行政の無人地帯に迷い込んでしまった」2人を的確に描写した俳優2人の演技を称えている。

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Image caption 「I, Daniel Blake」より

映画初出演のジョンズさんは、「僕はスタンダップ・コメディアンです。ケンとの共同作業はまったく素晴らしい経験で、パルムドールをもらったなんて驚愕している」と喜んだ。

作品については「ケンは50年前、『Cathy, Come Home (キャシー、帰ってきて)』という作品を作った。これも同じ流れの映画で、人生の底辺にいる人たちの苦しみを描いている」と話した。

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Image caption アーノルド監督の「アメリカン・ハニー」は貧困とセールストークを描く

英与党保守党の緊縮財政と福祉予算削減を批判してきた野党・労働党の議員たちも、ローチ監督の受賞を称えた。

アンジェラ・イーグル影のビジネス相は「ケン・ローチおめでとう!」とツイートし、アンジェラ・レイナー下院議員も「最高に嬉しい」と喜んだ。

(英語記事 Cannes 2016: Ken Loach's I, Daniel Blake wins Palme d'Or

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