映画 「ラスト・タンゴ・イン・パリ」の暴行場面めぐる非難に監督反論

撮影中のベルトルッチ監督(左)、主演マーロン・ブランドさん(中央)とマリア・シュナイダーさん。 Image copyright AP
Image caption 撮影中のベルトルッチ監督(左)、主演マーロン・ブランドさん(中央)とマリア・シュナイダーさん。シュナイダーさんは後に、暴行場面の撮影をめぐり「少し強姦されたような気分だった」と発言していた。

1972年の公開当時から性描写が議論になった映画「ラスト・タンゴ・イン・パリ」の撮影で強姦場面の撮影が女優の同意を得ていなかったのではないかとインターネットで騒ぎになったことを受け、ベルナルド・ベルトルッチ監督(76)が「ばかげた誤解だ」と反論した。

映画の撮影があらためて物議を醸すきっかけになったのは、ベルトルッチ監督の2013年のインタビュー。強姦場面でバターを使うと決めたのは、撮影当日の朝で、強姦される役の女優マリア・シュナイダーさんの同意を事前に得ていなかったと話していた。このビデオが今月初めになって再び浮上し、ソーシャルメディアで映画関係者を含めて大勢が怒りを表明した。シュナイダーさんが実際に強姦されたと思い、怒る意見も多く飛び交った。

ベルトルッチ監督は5日に反論の声明を発表。強姦場面は脚本に含まれていたのだからシュナイダーさんは事前に知っていた、知らせなかったのはバターを使うという点だけだったと説明し、実際の性行為はなかったと言明した。

映画では、マーロン・ブランドさん演じる主役ポールがシュナイダーさん演じるジャンヌを強姦する際、バターを潤滑剤として使う。

2011年にがんのため58歳で亡くなったシュナイダーさんは、2007年に英紙デイリー・メールとのインタビューで、実際の性交はなかったものの、場面は脚本になかったため、撮影は「屈辱的」で、「マーロンとベルトルッチの両方に少し強姦されたような気分だった」と話していた。またシュナイダーさんは、自分が後に薬物依存症となり自殺未遂を繰り返したのは、この映画でいきなり世界的な注目を浴びたせいだと述べていた。

2013年のインタビューでベルトルッチ監督は、バターを使う場面についてシュナイダーさんと十分な事前打ち合わせをしなかったと認め、理由として、演技ではなく本物の「屈辱」を表現してもらいたかったからだと説明していた。この中で監督は、「ある意味でマリアにひどいことをした。何がどうなるか言わなかったので。なぜかというと、女優ではなく女の子としての反応が欲しかったからだ」と話し、「罪の意識は感じる」ものの撮影手法について「後悔はしていない」と述べた。

さらに2013年のインタビューで監督は、シュナイダーさんはその結果「その後一生、僕を憎んでいた」と認めた。

「ラスト・タンゴ・イン・パリ」は公開当時、イタリアで上映禁止となり、米英など複数の国で検閲を求める訴えが起こされた。

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Image caption 撮影当時、シュナイダーさんは19歳、ブランドさんは48歳だった

2013年の監督インタビューを取り上げた2日付の女性誌記事に反応して、米女優ジェシカ・チャステインさんは「この映画を愛する全ての人に。あなたたちは、19歳が48歳の男に強姦されるのを見てるんですよ。暴行は監督の計画だった。胸が悪くなる」とツイートした。

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米ドラマ「ウエストワールド」の女優エヴァン・レイチェル・ウッドさんも、「同意。胸が痛いし、とんでもない話。そんなことをして大丈夫だと思うなんて、2人はすごく病んでる」とツイートした

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米マーベル映画シリーズのキャプテン・アメリカとして人気の米俳優クリス・エバンズさんは、「この映画もベルトルッチもブランドも、二度と前のようには見られない。これは気持ち悪いなんてことじゃ収まらない。激怒してる」とツイートした

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○ 監督 「マリアはすべてを知っていた」

5日に発表した声明で、ベルトルッチ監督は「ばかげた誤解をはっきりさせて、決着をつけたい」と書いた。

「(バターを)このような不謹慎な形で使うことに、彼女の生の反応が欲しかった。誤解はそこから生じている」

「自分が受ける暴力についてマリアは知らされていなかったと、そう思った、そして今でも思っている人たちがいる。それは違う!」

「脚本にはすべて描かれていて、マリアは脚本を読んでいたのだからすべて知っていた。新しい要素は、バターのアイディアだけだった」

「このことがマリアを動揺させたのだと、私は何年も後になってから知った。映画の脚本が描き、あの場面が描いた暴力ではなく」

○ シュナイダーさん 「本物の涙を流していた」

2007年の英紙インタビューで、シュナイダーさんは問題の場面は「最初の脚本にはなかった」と話している。

デイリー・メールに対してシュナイダーさんは、「本当のことを言えば、思いついたのはマーロンだった。撮影する直前になって初めて聞かされて、私はものすごく怒った。エージェントに電話するとか、弁護士にセットに来てもらうとかするべきだった。脚本にないことをゴリ押しするのは許されないので。でも当時の私は、そんなこと知らなかった」と話した。

「マーロンは私に、『マリア、心配しないで。ただの映画だから』と言った。でも場面の間中、マーロンのやってることは本当じゃなかったけれども、私は本物の涙を流していた」


(英語記事 Last Tango rape row a 'misunderstanding'

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