シリア停戦、全土で発効 散発的衝突続くも合意維持

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Image caption シリア政府軍のアレッポ奪還を受けて停戦合意が成立(写真は23日、アレッポ)

シリア全土で30日午前零時(日本時間午前7時)、政府軍と反政府勢力の停戦が始まった。30日朝の時点では、散発的な衝突は起きているものの、ほとんどの場所で停戦は守られている模様。合意を仲介したロシアとトルコが、停戦の順守を保証する。

英国に本拠地を置く民間団体「シリア人権監視団(SOHR)」によると、停戦発効から最初の数時間は国内のほとんどが平静だったが、北部ハマ県では反政府勢力と政府軍の「激しい衝突」が報告されているという。

SOHR代表のラミ・アブデル・ラフマン氏はAFP通信に対して、「小規模な反政府勢力や政府勢力は、合意が持続すると自分たちの存在が否定されるので、停戦を妨害しようとしている」と話した。

反政府勢力が支配するダマスカス東部グータでは住民が、停戦発効から2時間しないうちに銃声を聞いたと話している。北西部イドリブ県でも散発的な衝突が報告されている。

発効した停戦合意には、複数の反政府勢力も参加しているが、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)や、クルド人民防衛隊(YPG)は参加していない。

モスクワで合意成立を発表したプーチン大統領によると、合意のポイントは、(1) 双方の戦闘停止、(2) 停戦順守の監督、(3) 和平協議開始の合意――の3つ。

合意の取り決めのもと、和平協議は停戦がこのまま継続した場合、1カ月以内にカザフスタンの首都アスタナで行われる。

2011年から始まったシリア内戦で、少なくとも30万人が死亡し、さらに400万人が近隣諸国や欧州に避難したとされている。

停戦は維持されるのか

外交関係者の間の空気は、楽観的だ。反政府勢力さえ、今回の停戦は成功するかもしれないと期待している。

しかし今年繰り返し実施された停戦合意は、いずれもすぐに破綻した。

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Image caption ロシアは、アサド大統領が今回の停戦順守を重視していると

シリアのムアレム外相は、「流血を止めさせて国の未来を確立するため、政治合意にたどりつくことが実際にできるかもしれない」と述べた。

反政府勢力が戦闘で後退を続けていることも、停戦維持に寄与するかもしれない。

反政府主流派の主要組織「高等交渉委員会(HNC)」は29日、反政府勢力の備えが不足しているため、「戦い続けるのは無理」だと認めた。

停戦合意に参加しているのは

シリア政府側では、政府軍のほかに同盟勢力とロシア軍が停戦に参加している。反対側では、自由シリア軍(FSA)、穏健派の反政府勢力、HNC関係勢力が参加している。

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Image caption アレッポ県北部アル・ライの反政府戦闘員たち

ロシア国防省は、合意に参加した主要反政府勢力として、「ファイラク・アル・シャム」、「アフラル・アル・シャム」、「ジャイシュ・アル・イスラム」、「トゥワル・アフル・アル・シャム」、「ジャイシュ・アル・ムジャヒディン」、「ジャイシュ・イドリブ」、「アル・ジャブハ・アル・シャミヤ」の名前を挙げている。

アフラル・アル・シャムとジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)はいずれもFSAに参加していないこともあり、ロシアによる言及が注目されている。

一方で、情報の錯綜と混乱が続いたシリア内戦らしく、ロイター通信はアフラル・アル・シャムの広報担当のひとりの話として、合意内容に不満があり署名していないと伝えている。

イスラム聖戦主義組織は不参加

シリア政府軍によると、ISと「関連組織」は停戦合意に含まれていない。「ジャブハト・ファタハ・アル・シャム」(元ヌスラ戦線)も、合意から除外されたという。

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Image caption クルド人民防衛隊(YPG)はどうなる?

ただし一部の反政府勢力幹部はロイター通信に対し、「ジャブハト・ファタハ・アル・シャム」は含まれていると話している。「ジャブハト・ファタハ・アル・シャム」はイドリブ県において、合意に参加した各勢力と密接に結びついているだけに、今後の進捗が一筋縄ではいかないことをうかがわせる。

FSAによると、YPGも合意に含まれていない。

YPGなど複数のクルド人民兵組織は、トルコ国境に至るシリア北部の広範囲を支配下に置く。トルコはYPGを、国内で非合法としたクルディスタン労働者党(PKK)の軍事組織でテロ組織とみなしている。

合意の内容と範囲は

名目上はシリア全土が対象だが、実質的には、参加した勢力が影響力をもつ地域のみで実施される。

Image caption 19日現在のシリアとイラクの勢力地図。薄紫はシリアとイラクのクルド人勢力、レンガ色はIS、薄緑はイラク政府、青緑はシリア政府、紫はシリア反政府勢力

シリア国内のかなりの地域が、聖戦主義勢力やクルド人勢力の支配下にある。

しかし反政府勢力が支配するダマスカス東部グータでは数カ月前から政府軍が進軍しており、今回の合意に含まれた。

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Image caption ダマスカス東の郊外は停戦対象地区となった

トルコとロシアは今や同盟国なのか?

2015年11月24日にトルコ軍がシリア国境付近でロシア軍機を撃墜し、両国は深刻な緊張関係に陥った

しかしロシアが厳しい経済制裁を発動したことと、エルドアン政権が北大西洋条約機構(NATO)の同盟各国に対して不満を募らせたことから、トルコとロシアは次第に関係を改善。

シリアがアレッポに進軍しても、トルコはことさらに反応せず、今では両国一緒に停戦を仲介するに至った。

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【60秒解説】トルコがロシア軍機を撃墜

29日にはトルコ軍がISを包囲しているアル・バブ近くでロシア軍がISを空爆したという情報もある。これに先立ち、エルドアン大統領はNATOの援護爆撃が不十分だと不満を口にしていた。

しかし両国間の問題は残る。どの勢力が停戦合意に参加しているのか、両国は合同発表するに至っていない。

トルコは、ヒズボラを含む外国人武装勢力もシリアを出る必要があると主張するが、アサド政権を強力に支えてきたイランは簡単に承服しない可能性がある。

加えて、アサド大統領退陣をかねてから目標としてきたトルコが、この点を諦めるかどうかも不明だ。


<解説> 舞台中央にロシアが――ジョナサン・マーカスBBC外交担当編集委員

シリア内戦の軍事的主導権は今やロシアとシリアの手にあると示したのがアレッポ陥落なら、今回の新しい停戦合意は、外交的主導権もロシアの手にあると示している。

これまでの停戦合意と異なり、これは米ロ2国間のやりとりから生まれたものではなく、ロシアとトルコの新しい共通認識から出てきたものだ。

しかしシリアで錯綜する数々な対立関係のうち、今回の停戦が対象にするのは1つだけで、ISやアルカイダとつながる主要反政府勢力は含まれない。

プーチン大統領でさえ、合意は脆弱なものだと認めている。

ロシアとイランの合同軍事作戦が次にどこに向かうのかこそ、何よりポイントなのかもしれない。

それでも今回の停戦合意は、シリア紛争における転換点となる。米国がシリア外交の失敗を言外に認めるなか、今後は自分たちの戦略利益が最優先されるぞとトルコが反アサド勢力に合図している状況だ。

(英語記事 Syria conflict: Russia-Turkey brokered truce holding despite clashes

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