トランプ米政権、入国停止措置を堅持する構え

ニューヨークのジョン・F・ケネディ(JFK)国際空港は、28日の抗議デモで最も多くの参加者を集めた場所のひとつだ Image copyright Getty Images
Image caption ニューヨークのジョン・F・ケネディ(JFK)国際空港は、28日の抗議デモで最も多くの参加者を集めた場所のひとつだ

ドナルド・トランプ米大統領が今月27日に、テロ対策としてイスラム教徒が多数を占める7カ国の人の入国を禁止する大統領令に署名したことを受け、大規模な抗議活動や司法の一部で大統領令を阻止する動きが起きているものの、政権は政策を変えない構えだ。

トランプ大統領は29日に発表した声明で、「最も安全が確保できる政策」が実施され次第、査証の発効は再開されるとし、入国禁止がイスラム教徒を標的としているとの批判を否定した。

今回の大統領令に対しては、各方面から激しい批判の声が出ている。

16州の司法長官が入国禁止を違憲と指摘するほか、一部の連邦地裁では、査証を持つ人の強制送還を一時的に停止するよう命令している。

大統領令により、指定7カ国からの入国が禁止されたほか、120日間の全面的な難民受け入れ停止や、シリア難民の受け入れの無期限停止が命じられた。

大統領令が発効した時点に飛行機で移動中だった対象者は、有効な査証など在留資格がある場合でも米国到着時に身柄を拘束された。世界各地で米国に向かうフライトへの搭乗を拒まれた人々の数は明らかでない。

28日には、米国各地の空港で数千人が抗議デモを実施。入国できずにいる人々への支援を、多数の弁護士が無料で申し出た。

29日も抗議デモが続き、ホワイトハウスやニューヨーク中心部にある「トランプ・タワー」の前などにデモ参加者が集まった。

ラインス・プリーバス大統領首席補佐官は、永住権(グリーンカード)保持者は大統領令の対象にならないと述べたが、実際には、複数のグリーンカード保持者が空港で拘束されている。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
永住権を持っていても……ボストン空港で家族が拘束され
お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
「ここは皆さんの国」「アメリカにようこそ」 ワシントンの空港で歓迎と抗議

トランプ大統領は29日にツイッターで、「極めて厳しい入国審査を今すぐ」米国で導入すべきだとコメントした(注:原文では「今すぐ」を意味する「NOW」が、強調のため大文字)。

その後発表された声明では、より表現を和らげ、「宗教が問題なのではない。テロ対策そして我が国を安全にするのが目的だ」と述べた。

声明では、「今後90日間で、最も安全が確保できる政策の検討・導入ができ次第、すべての国を査証発効の対象にする」としている。

プリーバス補佐官は29日に、大統領令の執行が混乱を生んだとの批判に反論し、渡航者32万5000人のうち、拘束されたのは109人のみだったとし、「大方の人々は入国することができた」と語った。

首席補佐官は米国の報道各社に対し、「まだ数十人が残っているが、ひどい人でなければ、きょう半日もすれば出られるのではないか」と述べた。

しかし、与党・共和党の一部に広がった懸念は払拭できていない。上院外交委員会のボブ・コーカー委員長は大統領令について、「特にグリーンカードの保持者について、執行がまずかった。政権は適切な修正をするべきだ」と語った。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、米国の「人権尊重、安全、米国らしさが減った」ように見えると批判。民主党として、大統領令撤廃法案を提出すると述べた。

Image caption 「知り合いが拘束されていますか? 教えてください。弁護士が助けます!」とサインを掲げた女性。各地の空港で大勢の弁護士が無料で支援を提供した(米バージニア州のワシントン・ダレス国際空港で)

大統領令への批判の声は米国外でも高まっている。

カナダのアハメド・フッセン移民・難民・市民権相は、今回の大統領令で米国に入国できなかった人々に一時的な在留資格を与えると発表した。ジャスティン・トルドー首相はツイッターで、「迫害やテロ、戦争を逃れて来た」人々をカナダは歓迎すると述べた。

イランは米国人を対象にした報復的な入国禁止措置の可能性に言及、イラクも同様の考えを示している。米国とイラクは現在、過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)をイラクの主要都市モスルから掃討する作戦で協力している。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、「テロと戦う強い決意という、必要なことであっても、特定の出身地や宗教の人々をすべて同様の猜疑心を持って扱うのは正当化されない」と述べた。

テリーザ・メイ首相の報道官は、メイ首相が入国禁止に「同意していない」と語った。今年行われるフランスの大統領選に独立系候補として出馬表明したエマニュエル・マクロン氏はツイッターで、「戦争や迫害を逃れようとする人々を支持する」とコメントした。


<解説>ホワイトハウスの無能ぶりを露呈? アンソニー・ザーチャー記者(ワシントン)

27日午後に署名された大統領令が及ぼした長期的な影響については歴史の裁きがあるだろうが、トランプ氏が当初、執行状況を称賛したことは、そう簡単に忘れることはできないだろう。

28日午後に大統領令について質問されたトランプ氏は、「とてもうまくいっている」と語った。ただし、各地の国際空港の現場では、うまくいっているとはとても言えなかった。


(英語記事 Trump executive order: White House stands firm over travel ban

この話題についてさらに読む