トランプ米大統領、最高裁判事にニール・ゴーサッチ判事を指名

Judge Neil Gorsuch (c) and his wife Marie Louise look on, after US President Donald Trump nominated him Image copyright AFP
Image caption 空席となっている米連邦最高裁判事の席にゴーサッチ判事(中央)を指名したトランプ大統領。右はゴーサッチ夫人。

ドナルド・トランプ米大統領は31日、空席となっていた最高裁判所の判事にニール・ゴーサッチ連邦高裁判事(49)を指名した。

ゴーサッチ氏は2006年以降、コロラド州デンバーの第10連邦巡回控訴裁(高裁)の判事を務める。

定員9人の最高裁では、昨年2月に保守派だったアントニン・スカリア判事が急死して以来、保守派とリベラル派が4人ずつの拮抗した状態になっている。

最高裁判事の就任には上院の承認が必要。民主党は、保守的過ぎるとみられる候補については承認を拒否する構えだ。

指名を発表したトランプ氏は、「ゴーサッチ判事には、ずばぬけた法律の能力、明晰な頭脳、ものすごい自制力があり、超党派の支持も得ている」と述べた。

指名は、ホワイトハウスで重要な発表が行われるイーストルームで、夜のテレビ放送のゴールデンタイムに合わせて行われた。

ゴーサッチ氏は、故スカリア判事について「獅子のような法の番人だった」と語り、同氏の急逝を惜しんだ。判事に求められるのは「偏向を排し、独立を保ち、協調し、勇気を持つこと」だと述べた。また、指名について「名誉であり、謙虚な気持ちになっている」と語った。

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Image caption ニール・ゴーサッチ判事。2006年にブッシュ元大統領によって第10巡回控訴裁判事に指名された。

ゴーサッチ氏は、トランプ氏が昨年の選挙期間中に明らかにした最高裁判事候補21人のリストに含まれていた。

ゴーサッチ氏が承認されれば、最高裁で判事が保守派5人とリベラル派4人という従来の構成に戻る可能性がある。

米東部の名門校コロンビア大学やハーバード大学で学んだゴーサッチ氏は、過去25年間で最も年齢が若い最高裁判事候補。注目度の高い人工妊娠中絶や同性婚について、これまでの最高裁判例を覆そうとする可能性は低いとみられている。

故スカリア判事同様、法律の厳格な解釈を守ろうとするゴーサッチ氏は多くの共和党議員の支持を得ている。同氏は、合衆国憲法を「建国の父たち」の考えに沿って解釈すべきと主張する「始原主義者」とみられている。

過去には、避妊を含む医療保険の提供を雇用者に義務付けるオバマ政権の政策について、政策に反対する集団の訴えを支持したことがある。

民主党のチャック・シューマー上院議員は、ゴーサッチ氏の指名に懸念を示した。シューマー氏は、ゴーサッチ氏は法解釈の主流派とは言えないのではないかと指摘。「経歴を見ると、職務に足りる資質があるのか、大いに疑問だ」と述べた。

一方、マイク・ペンス副大統領はツイッターで、「米国史上、最も確実に主流派に属し、尊敬され、最高裁判事候補として抜きん出た人物の1人だ」とコメントした。

民主党は指名を阻止できるのか

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Image caption ドナルド・トランプ大統領とマイケル・フリン国家安全保障問題担当補佐官(中央)、スティーブン・バノン首席戦略官

ゴーサッチ氏の上院承認をめぐっては、共和党と民主党の激しい対立が予想される。

バラク・オバマ前大統領は昨年、スカリア判事の死去を受けてワシントン連邦高裁のメリック・ガーランド判事を指名したが、共和党は大統領選が近付いていることを理由に承認手続きの開始を拒否し、民主党は苦汁を飲んだ。

上院の手続きでは、司法委員会での審議の後に、本会議での採決も控えている。

民主党は本会議での採決を妨害する可能性がある。採決を強行するには60票が必要だが、共和党の議席数は52。指名承認を強行するには、採決の規定を変える必要が出る可能性もある。

なぜ今回の指名は重要なのか

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Image caption 最高裁判事は終身制

州と連邦政府との間で意見が対立するなど、米国で議論が分かれる法律について、上告を受けて最終的な判断を下せるのは最高裁だ。

審理するのは年間100件に満たず、重要な判断は6月に下される。定員9人の最高裁判事は終身制。

今期は、トランスジェンダーの学生の権利、選挙区割りの不正、テキサス州での死刑判決などが審理されている。

さらに、有権者の権利や中絶、米国の移民政策における人種偏向が審理される可能性が高い。また、議論を呼んでいる移民規制に関するトランプ大統領の大統領令が含まれる可能性もある。


<解説> 保守派の夢――アンソニー・ザーチャー北米担当記者

異例づくしの展開のなか、トランプ氏がゴーサッチ氏を最高裁判事に指名したのはかなり定石だった。

ゴーサッチ氏の経歴や出自を考えれば、共和党大統領なら、ほぼだれにとっても自然な選択だっただろう。

トランプ氏が選挙期間中に犯した失敗や醸した物議、政治的な背教行為にもかかわらず、福音派や伝統的な保守主義の有権者はトランプ氏を支持し続けた。その人たちにとってゴーサッチ氏は、我慢したかいがある夢の最高裁判事候補だ。

ヒラリー・クリントン候補が勝てば、自分たちの気に入る判事にはならないと、保守派は承知していた。トランプ氏が勝てば、ゴーサッチ氏のような人物が選ばれるかもしれないというのが、保守派の期待だった。

一方の民主党は、オバマ前大統領の指名を10カ月近くにわたり妨害し続けた、上院共和党の伝統破りな異例の対応に激怒している。

民主党は、復讐のためにゴーサッチ氏の指名を妨害するのか、判断を迫られる。少数派でも41票あれば議事妨害で指名を阻止できるというのが、上院の伝統でもある。そういう事態を前に、共和党は、その伝統をも破るのかどうか、判断を迫られるかもしれない。

一方で民主党の支持基盤は、リベラル派多数の最高裁を実現するチャンスを不当に奪われたと感じている。それだけに民主党支持者たちは党に徹底抗戦を要求するだろう。承認手続きでは激しい対立が予想される。


(英語記事 Trump picks Neil Gorsuch as nominee for Supreme Court

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