英下院議長、トランプ米大統領の議会演説に「強く反対」 与党から批判

ジョン・バーコウ英下院議長
Image caption ジョン・バーコウ英下院議長

英下院のジョン・バーコウ議長は6日、ドナルド・トランプ米大統領が英国を公式訪問するにあたり、英議会で演説することに「強く反対する」と下院に伝えた。「人種差別と性差別に反対すること」は「極めて重要な事柄」だと理由を説明した。

議事に沿って答える形で、バーコウ議長は、貴族院や下院で演説することは「自動的な権利」ではなく、「しかるべき功績によって獲得する栄誉」だと述べた。

英議会建物の中でも最古のウェストミンスター・ホールの「鍵をもつ」のは3人で、自分はそのひとりだと述べた上で、バーコウ議長は「入国禁止命令を実施する前でも、私はトランプ大統領がウェストミンスター・ホールで演説することに強く反対しただろう。入国禁止命令を実施した今となっては、私はますます、トランプ大統領がウェストミンスター・ホールで演説することに強く反対する」と表明した。

議長はさらに、議事堂内でレセプションなどに使われることの多いロイヤル・ギャラリーでの演説についても、招待するしないの判断に自分も関わることになると説明。その上で、「私はロイヤル・ギャラリーでの演説にトランプ大統領を招待したくない」と言明した。

「我々は米国との関係を大事に思っている。もし公式訪問が実現するのなら、それは下院議長の職権をはるかに超越した事柄だ」と議長は認めた上で、「ただし、少なくともこの場所に関しては、我々が人種差別と性差別に反対し、法の前の平等と司法の独立を支持しているということは、下院にとってきわめて重要な事柄だ」と強調した。

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英下院議長、トランプ氏の議会演説に異例の反対

野党の労働党やスコットランド国民党(SNP)は議長の発言を称賛したが、下院議長は政治的中立が求められる立場のため、批判する声もある。バーコウ氏は下院議長に選出されるまでは、保守党議員だった。議長が下院の最高権限所有者で、議事進行と場内の秩序維持に責任を持つ。

公式訪問の中止を呼びかけていたジェレミー・コービン労働党党首は、バーコウ議長の発言を歓迎。自由民主党のティム・ファロン党首も、トランプ氏を「歓迎しない」と述べた。

一方で、大統領選の最中からトランプ氏を支持してきたイギリス独立党(UKIP)前党首のナイジェル・ファラージ氏は、バーコウ議長が「立場を乱用」し、「偉大な役職を貶めた」と非難した。

保守党からも、バーコウ議長を批判する声が相次いでいる。元閣僚の保守党議員はBBCに、バーコウ氏は辞任目前に違いないと述べた。別の保守党議員は、「許される限界をはるかに越えている」と批判。別の保守党議員は、下院にとって恥ずかしい発言で、大勢が怒っていると話した。

下院外交特別委員会のクリスピン・ブラント委員長(保守党)は、バーコウ議長は自分の発言の責任をとることになると述べた。トランプ氏の公式訪問については「誰もが強い意見を持っているが」、「一般論として議長は審判役を務めるべきで、そうした論争に自ら飛び込んでいくべきではない」と話した。

トランプ氏が英国公式訪問に招待されたことは、テリーザ・メイ英首相が1月末にホワイトハウスで首脳会談した後に明らかにされた。

バーコウ議長によると、ウェストミンスター・ホールの「鍵を持つ」のは下院議長のほか、貴族院議長のファウラー卿と、英議会議事堂となっているウェストミンスター宮殿の特定部分を管理する式部長官の合計3人。

貴族院の報道官は「議長は、バーコウ氏の発言について相談を受けていない」とコメント。「貴族院を前にあす、議長は自らの発言をする」と明らかにした。

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Image caption ホワイトハウスで首脳会談の後、記者会見したメイ首相とトランプ大統領

メイ首相は、トランプ政権による入国制限命令に「同意しない」と批判したものの、公式訪問に招待したことは正しい判断だと主張している。

英議会での米大統領演説は公式に提案されたわけではなく、公式訪問の日程も定まっていない。

英首相官邸は「今年中に大統領を英国に歓迎することになり、楽しみにしている」、「公式訪問の日程や内容は、いずれ取りまとめられる」とコメントした。

英国を公式訪問した外国首脳は常に議会演説するわけではないが、最近ではコロンビアのフアン・マヌエル・サント大統領が昨年演説。2015年には中国の習近平・国家主席、2014年にはドイツのアンゲラ・メルケル首相がそれぞれ議会で演説した。

バラク・オバマ前米大統領は2011年にウェストミンスター・ホールで演説した。


<解説>「前例のない叱責」――エレナー・ガーニエBBC政治編集委員

前例のない、そしてとてつもない叱責だった。

要するにトランプ大統領を英下院に招待しない、下院議員を前に演説する機会を提供しないということで、外交上の肘鉄を食らわせたに等しい。

下院本会議場では与野党を問わず多くの議員が、ジョン・バーコウ議長の発言に拍手した。しかし、職権乱用で失言だと批判する声もある。

メイ首相は、トランプ政権と新しい特別な関係を築こうと、ことさらにあからさまに努力している。バーコウ議長の判断は、その足を引っ張る可能性がある。


(英語記事 Speaker Bercow: Trump should not speak in Parliament

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