朴大統領罷免 すべての始まりは子犬だった?

高氏は朴氏の親しい友人だった崔被告との愛人関係を否定した Image copyright Getty Images
Image caption 高氏は朴氏の親しい友人だった崔被告との愛人関係を否定した

韓国をここ何カ月も揺るがしてきた政治スキャンダルは10日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免という結末を迎えた。ある証言によると、きっかけは子犬をめぐる口論だったというのだ。この風変りな話の経緯をBBCのテッサ・ワン記者が追った。

フェンシングの元韓国代表、高永台(コ・ヨンテ)氏は、ハンサムな顔立ちと運動選手らしい体つきから、韓流スターだと言われても信じてしまうだろう。

高氏は、朴氏の親しい友人で国政介入の容疑がかかる崔順実(チェ・スンシル)被告(60)と、きわめて近い関係なのではないか取り沙汰されてきた。

現在40歳の高氏をめぐって、地元メディアの報道は過熱。高氏は崔被告の愛人だと報じたメディアさえある。

しかし今週、国会の公聴会で質問に答えた高氏は、崔被告との恋愛関係を否定した。

さらに高氏は、とある口論が原因で自分から報道関係者に連絡を取った経緯について、説明し始めた。高氏がマスコミに接触したことが、実に大統領罷免にまで至ったスキャンダル発覚のきっかけだったという、何とも驚くべき内容だった。

大統領ファッションの舞台裏に

高氏によると、それは2012年、朴氏が大統領に選出されたばかりのことだった。

アジア大会で金メダルを取ったこともある高氏だが、競技からはかなり前に引退していて、当時はハンドバッグなどの服飾の会社「ビロミロ」を経営していた。

ある日、高氏は、友人からビロミロの最新商品ラインアップを見たがっている顧客がいると聞かされた。誰なのかはすぐに教えてもらえなかった。

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Image caption スキャンダルが浮上して以来、世間の関心は高氏に集まっていた

「友人は新商品をいくつか持ってくるように言ったので、そうしました。崔さんに初めて会ったのはその時です」。高氏は公聴会でこう話した。

崔被告は見せられたビロミロ製品が気に入った様子で、高氏から商品を買うようになった。買った服やその他は、最終的には朴大統領(当時)のクローゼットに納められた。

高氏は大統領に、ダチョウやワニの革製高級ハンドバッグ約40個や、オーダーメイドの服100点を提供した。

請求は数万ドル(数百万円)に及んだが、高氏によると、崔被告がすべて自分のお金で支払ったという。

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Image caption 崔被告に対しては国政介入の容疑がかけられている

高氏は、自分が崔被告と恋愛関係にあったという憶測を強く否定。友人だったと説明した。

ただし、崔被告が自ら所有するドイツの会社2社に高氏を紹介するほど、同氏を信頼していたことは否定しなかった。

朴大統領の非公式なスタイリストになった高氏だが、特に2013年に朴大統領がビロミロのバッグを持っている姿が報道されると、高氏のブランドは成功し、有名になった。

有名人の顧客も得た高氏は、韓国メディアからタレントのように扱われはじめた。「プレイボーイズ」という有名人の野球チームの一員にもなった。

パピーゲート(子犬疑獄)

髙氏は公聴会で、自分と崔被告との間の亀裂がどのように広がったかについても証言。韓国国会の議事堂で、これほど突拍子もない内容が語られたことは、これまで滅多になかったのではないか。

2014年のある日、崔被告は自分の娘の子犬の世話を高氏に頼んだ。高氏は自宅に子犬を連れて行き、家で留守番させてゴルフに出かけた。

髙氏が帰宅すると、そこには崔被告が待ち構えていて、高氏が子犬を放置したと激怒していた。2人は「大げんか」をしたと高氏は話す。

その後、2人の関係は悪化の一途をたどった。高氏は崔被告が自分を「奴隷のように扱い、口汚くののしることも多々あった」と赤裸々に語った。

傷つき腹を立てた高氏は、崔被告と朴大統領との関係をメディアに暴露して復讐することにしたのだ。

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Image caption スキャンダルは朴大統領と崔被告との関係を中心に展開した

高氏は、崔被告が朴政権に及ぼしている影響を示す証拠集めを始めた。崔被告が大統領の補佐官たちを使用人のように扱う様子をとらえた防犯カメラの映像などだ。高氏は映像を韓国のテレビ局に提供した。

そして昨年10月、高氏はテレビのインタビューで、崔被告は朴大統領の演説原稿のチェックが「大好き」だと話したのだ。

報道陣はこの発言の裏づけを探り始め、やがては大統領演説や崔被告の自撮り(セルフィー)写真が保存されたタブレット型端末を入手した。

写真に加えて、不正の疑いがある崔被告の商取引が明らかになり、国民の怒りが爆発。汚職疑惑の捜査は大企業幹部や有名人も巻き込んで拡大した。

朴氏はその後、崔被告に演説原稿を含む政府情報の不適切な入手を許したことを認め、国民に謝罪した。しかし、検察が捜査を進める汚職疑惑については否定した。

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Image caption 国会は昨年12月に朴氏の罷免要求を可決した

朴氏が大統領職を罷免された今、高氏は国民から英雄視され、インターネット上では、彼の「内部告発」を称賛する声もあるという、予想外の展開も見せている。

ある国会議員は公聴会で、「パンドラの箱を開けた」として高氏を称賛した。

朴大統領が信頼する崔被告と対立するのは怖くなかったか、との質問に、高氏の答えは「いいえ」。

「私は短気なのでそれは考えたことはなかった」と高氏は胸を張った。「後悔はない」。

(英語記事 Park Geun-hye impeached: Did a puppy bring down South Korea's president?

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