欧州のイケア運転手、トラック内で長期生活 低賃金で

ゾーイー・コンウェイ、BBC「ビクトリア・ダービシャー」「トゥデイ」記者

イケア・トラックの荷台で食事の準備をする運転手のクリスチャンさん
Image caption イケア・トラックの荷台で食事の準備をする運転手のクリスチャンさん

西欧でイケアなど小売業者の商品をトラックで運ぶ運転手たちが、低賃金のためにトラック車内で数カ月にわたって生活していることが、BBCの取材で分かった。

東欧を拠点とする運送会社から西欧に送り込まれた運転手たちは、給料は時給3ポンド(約420円)以下で、自分の勤務地での生活費を賄えないと話している。自分が運転する車内の「囚人のような気がする」と話す運転手もいる。

スウェーデンの家具大手イケアは、運転手たちの「証言を悲しく思う」とコメントした。

BBCの取材に応じた運転手たちは、イケア商品の輸送を請け負う東欧拠点の運送会社に雇われている。

「交通事故もあり得る」

ルーマニア人の運転手エミリアンさんは、長い時には4カ月間、トラックで眠り、食事をとり、洗濯をして生活する。

イケアの商品を西欧諸国の間で運ぶ。最近ではデンマークに滞在した。

月平均の手取り収入は477ユーロ(約5万8000円)。デンマーク人の運転手の平均月収は2200ユーロ(約27万円)だという。

欧州連合(EU)規則は、出身国以外の国で一時的に働く運転手は、滞在先の国の「最低賃金」と労働条件を保障されるべきだと定めている。しかし企業が法の抜け穴を利用することもある。

エミリアンさんは、ノルウェーのトラック会社ブリング系のスロバキア子会社に雇われている。実際にスロバキアで働くことはないものの、就労地はスロバキアだとされて、スロバキア水準の給料を支払われている。

寝ている場所を、エミリアンさんは見せてくれた。運転席の後ろ寝袋を敷いている。

EU法に従うならば、トラック運転手は毎週45時間、運転席から離れて休憩しなくてはならない。しかし各国政府は履行を徹底していない。

エミリアンさんは、ほかの場所で眠る経済的余裕はないと話す。1日あたり45ユーロ(約5500円)が経費として支給されるが、それで宿泊費と食費のすべてを払わなくてはならない。

仕事についている間、エミリアンさんは道端で食事を用意して食べる。自分は「まるで囚人、まるでかごの鳥のよう」な気がすると話す。

「運転手にとって良くないし、路上のほかの人にとっても安全じゃない。(中略)事故につながる可能性もある」

Image caption 数カ月ぶりに帰宅するためミニバスに乗りこむ運転手の荷物

イケアに言いたいことはあるかと尋ねると、エミリアンさんは「1週間でいいから僕と一緒に生活してみてくれ。僕が食べるものを食べて。自分たちの生活で実際に何が起きているのか、見て欲しい」と話した。

数カ月間のトラック運転が終わると、エミリアンさんはミニバスに乗ってスロバキアへ帰国する。

スロバキアでの雇用主ブリングは、自分の休憩時間を管理する責任はエミリアンさん自身にあり、帰国したい時にいつでも帰国できると話す。

トイレも水道もなく

同じような境遇にあるのは、エミリアンさんだけではない。イケアが配送を委託する主だった運送会社の運転手たちの雇用契約書を見せてもらった。どの運転手も、西欧で数カ月ずつ働きながらも、東欧の安い賃金を受けとっていた。

トラック運転手のこうした扱いが、幅広く横行しているのは明らかだ。イケアのサプライチェーンだけでなく、ほかの有名ブランドでも同じようなことが起きている。

Image caption エミリアンさんが冷蔵庫の中を見せてくれた

独ドルトムントには、世界最大級のイケア集配拠点がある。その外では、トラック運転手たちが洗った服を乾かしていた。燃料タンクの上でマッシュポテトを作っている運転手もいた。

トイレはない。水道もない。

モルドバからの運転手たちが雇用主から受け取る平均月給は、150ユーロ(約1万8000円)だという。

「人倫にもとる」

イケアの提携運送会社に対しては、司法が少しずつ動き始めている。

オランダでは今年2月、イケアの切り花を英国や北欧諸国に運ぶ運送会社ブリンクマンの商慣習は違法だという判決が下された。

裁判所は、同社が運転手に払う給料はオランダの賃金法に「見合うものではない」と判断。裁判官は、運転手たちの置かれている境遇はEU法に抵触し、「人倫にもとる状態」だと批判した。

オランダ労組連合連盟(FNV)のエドウィン・アテマ氏は、運転手たちの境遇をイケアは承知していたはずだと指摘する。

「ウクライナやモルドバ、ポーランドの人たちが、イケアの家具を運んでいる。彼らがイケアの家具に触れているんだ。働く彼ら全員を実質的に雇っているのは、イケアだ。イケアはものすごい力を手にしている。ビジネスモデルを一瞬にして一気に変更する手段を持っている」

国際運輸労連(ITF)は昨年、運転手の待遇について昨年何度か協議を重ねたが、11月を最後に話し合いは終わってしまった。

イケアはBBCに対して、運転手たちがBBCに話した内容を「極めて深刻」に受け止めており、「証言について悲しく思っている」と話した。

業務委託会社には賃金や労働条件や順法性について「厳しく要求」しており、順守状況を定期的に監査していると、イケアは説明している。

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低賃金で泊まる場所もなく――イケア商品の運転手

「外国トラックの方がずっと多い」

英国内で貨物を運ぶ外国の業者は、増え続けており、イケアなど何百という様々な企業の仕事を請け負っている。

英北東部イミンガムにあるトラック駐車場で、匿名希望のポーランド人運転手は「トイレもシャワーも、何の設備もない路肩にいることが多い」と話した。

「ポーランドでもらえるより少しだけ給料がいいけれど、楽な暮らしじゃない。家族のためにやってる」

Image caption 英リンカーンシャー・イミンガムのトラック駐車場で

英国の運送会社は、違法に安く運転手を使っている企業との競争に負けてしまうのではないかと懸念している。

道路運送協会(RHA)のジャック・センプルさんは、「運転手の勤務時間制限や安全基準に正直言って我々ほど従わない、外国のトラックが前より増えている」と話す。

「交通安全にとって危険だし、財務省は巨額の税収を失っている」

「政府は何とかしなくてはならない。英国の有名な小売大手や大手企業が、安さを理由にこういう外国企業をさかんに使うようになっている」

Image caption ジャック・センプル氏は、外国の運送会社が交通リスクになっていると話す

(英語記事 Ikea drivers living in trucks for months