トランプ米政権の予算案、大打撃を受けるのは

  • 2017年03月17日
Speaker of the House Paul Ryan (R) sits beside U.S. President Donald Trump during a leadership lunch at the White House in Washington, U.S. March 1, 2017 Image copyright Reuters

ドナルド・トランプ米大統領は15日、軍事予算や国土安全保障予算を増やす一方で、医療や教育、住宅などの予算をそれぞれ10%以上減らす、連邦予算案を発表した。政府はこの予算案を「スキニー・バジェット(やせた予算)」と呼んでいるが、民主党だけでなく共和党からもすでに反発の声が上がっている。

連邦政府の省庁予算は年間約4兆ドル(約460兆円)。予算案は当初、このうち1兆ドル分について使途を定めている。

軍事予算が前年度比9%増、国土安全保障予算が7%増という一方で、環境保護庁(EPA)予算は31%減、国務省は29%減、農務省と労働省は21%減、保健福祉省は18%減、商務省は16%減、教育省は14%減、住宅都市開発省と運輸省は13%減、内務省は12%減などが提案されている。

削減対象の政府プログラムに低所得高齢者向けの食事提供事業が含まれるなど、貧困層への影響が懸念されている。

特に予算カットの影響を受けると思われる分野を、いくつか挙げてみた。


外交と対外援助

バーバラ・プレット・アッシャー、国務省担当記者

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Image caption 米開発庁が助成するアフガニスタン・ヘラートの薬物依存回復センター

国務省と開発庁(USAID)は、外交官や在外公館の費用のほか、外国の貧困対策や人権推進、医療改善などの費用を負担している。

トランプ政権の予算案は、基本予算256億ドル(約3兆円)の29%減を提案。これは101億ドル減につながる。政府はさらに国務省と開発庁の統合を求めており、失業者が出ることになる。

「海外活動費」と呼ばれる別枠の120億ドルはそのままだ。これは国務省と国防総省が、シリアやイラク、アフガニスタンなどの費用を賄うために使う。

外交予算全体の削減率は31%。

残った予算は、在外公館の警備や主要外交活動に使われるほか、HIV/エイズ対策などの世界レベルの健康対策事業、さらには人道支援事業にも「相当額」が振り分けられる。

対外軍事支援の一部は、贈与から借款に移行する。年間30億ドルの支援パッケージを確実に継続されるのは、対イスラエルだけだ。

国務省予算削減によって、気候変動関連事業をはじめとする国連拠出金も大幅に減らされる。世界銀行などの多国間開発援助機関への拠出も削られ、「米国にとって最大の戦略的価値」のある国を優先した経済開発援助に変更される。

レックス・ティラーソン国務長官は、歴史的に高レベルを維持してきた国務省予算は「持続不可能」だと発言。これは戦争の続いた過去16年にわたる予算拡大を意味している。長官は、米国は今後、以前ほどは武力紛争に関わらないので、国務省も予算は少なくて済むはずだと予測している。

実際にその通りになるのかどうかはともかくとして、ティラーソン氏の立ち位置は前任者ジョン・ケリー長官のものと実に対照的だ。ケリー氏は常に、国務省予算は政府全体の1%に過ぎず、与えられた任務を効果的に遂行するにはこれでもまったく不足していると主張していた。

元外交官や軍人たちは、米国への脅威となる在国の不安定要因を減らし、戦場での勝利を持続可能な平和に転換する手助けをするには、外交と開発が不可欠だと指摘し、国務省予算の削減は国策における根本的な欠点になると主張してきた。


住宅

ジェシカ・ルッセンホップ、ワシントン

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米政府は住宅都市開発省(HUD)について、620億ドル相当の予算13%減を提案した。HUDの主要任務は、低価格の住宅提供と地域再開発で、その多くは大都市中心部に充てられる。

トランプ政権の予算作成を担当するマイク・マルベイニー氏は記者団に、「この10年間、住宅都市開発にたくさんの金をつぎ込んできたが、成果があまり出ていない」と述べた。

予算案は、新しい低価格住宅の建設から、低所得の高齢者への食事配達サービスといった生活インフラに至るまで、幅広い内容を含むコミュニティー開発事業を廃止し、その分の30億ドルを浮かせようとしている。このコミュニティー開発事業は1970年代から続いてきたものだ。

政府は、住宅支援は州政府や地元自治体が担当すべきだと説明している。

しかし予算案を批判する人たちは、この措置によって低所得世帯は生活がなりたたなくなり、「大都市中心部」の活性化を約束したトランプ氏の選挙公約を違えるものだと主張する。


環境

マット・マグラス、環境担当編集委員

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Image caption ミシガン州フリントの水道水は今でも汚染されたまま。写真は3月5日の抗議集会に参加した少女。

米国内で、環境問題について意識が高まり取り組みが必要だという共通認識が形成されたのは、1969年にクリーブランド州で公害まみれのクヤホガ川に火が付いたからだった。大気や水の問題が相次ぎ、当時のリチャード・ニクソン大統領が両党の幅広い支持を背景に、1970年に環境保護庁(EPA)を設立した。

以来47年の間、EPAはたくさんの成功を収めてきた。酸性雨や有鉛ガソリン、殺虫剤DDTなどはいずれも、EPAのおかげで使用が規制され、歴史上の事実として過去のものになった。

トランプ政権がふるう予算削減の大ナタは、EPAの気候変動研究や火力発電所の二酸化炭素排出規制案「クリーン・パワー・プラン」の実施を直撃する。さらに、五大湖やチェサピーク湾周辺など地域レベルの汚染除去事業にも、大打撃を与える。

鉛やアスベストス、ダイオキシンなどに汚染された国内数百カ所の場所を管理し、汚染を除去するための「スーパーファンド」計画の予算は、7億6000万ドルから3億3000万ドルに減らされる。

トランプ氏はかねてから、きれいな空気やきれいな水は大事だと繰り返してきた。しかしその両方を実現するためのEPAの仕事は、職員3200人の削減によって、大きく後退する。

そしてクヤホガ川のような環境災害、あるいは直近ではミシガン州フリントで起きているような水道水汚染の危機が今後起きたとして、今回の予算削減を提案した人たちはその責めを負うのだろうか?


国連

ナダ・タウフィク、ニューヨーク

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Image caption ニッキー・ヘイリー米国連大使(中央)。向かって左は日本の別所浩郎国連大使、右は韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)国連大使。

米国は国連の最大資金拠出国だ。通常予算の22%と平和維持活動予算の28%を分担している。同水準の加盟国はほかになく、第2位の拠出国・日本の分担率は通常予算の9%と平和維持活動の10%だ。

国連から米国が本格的に資金を引き揚げれば、ほかの加盟国では埋めようのない空白と大混乱が確実に生じる。

国連本体と関係機関への分担金を担当する国務省は、予算29%削減に直面している。削減対象としてすでに、平和維持活動や気候変動対策が特定されている。

国連は、トランプ大統領が提案するような分担金削減をいきなり実施すれば、国連の長期的な組織改革の取り組みが損なわれるかもしれないと警告する。

フランスのフランソワ・ドラットル国連大使は、複数の国連大使と共に、米国の分担金削減に懸念を表明。米国が国際社会から後退しつつあるという印象を与えるだけでも、世界の不安定化につながり得ると指摘した。

(英語記事 Where Trump budget cuts will hit hardest

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