トランプ米大統領、コーミーFBI長官を解任 

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Image caption トランプ大統領はかつて、クリントン氏のメール問題捜査再開を発表したコーミー長官の勇気を称えていた

ドナルド・トランプ米大統領は9日、連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官(56)を解任した。ホワイトハウスは、ヒラリー・クリントン氏のメール問題への対応が理由だと説明しているものの、民主党はFBIがロシアによる大統領選介入疑惑とトランプ陣営の関与を捜査しているからだと非難している。

トランプ氏はコーミー長官にあてた手紙で、「自分は捜査の対象ではないと、3回の別の機会に説明してもらったのはありがたく思うが」、「(FBIを)効果的に指揮することができない」という司法省の判断に同意するため、「職務を停止し地位をはく奪する」と伝えた。

大統領の罷免通知には、コーミー氏解任を提言するジェフ・セッションズ司法長官とロッド・ローゼンスタイン副司法長官の手紙が添えられていた。セッションズ長官は司法省が「高い水準の規律と公明正大、そして法の支配」を重視していると強調し、「人心一新が必要だ」と書いている。また、ローゼンスタイン副司法長官は、昨年7月にコーミー氏がメール問題でクリントン氏を訴追しないと発表したことを問題視している。

ホワイトハウスは、ただちに後任を探すと説明している。

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Image caption トランプ大統領がコーミー長官にあてた解任の手紙。ホワイトハウス公表

大統領のスタッフが罷免の手紙をFBI本部に届けた時、コーミー長官はロサンゼルスの支局でFBI職員を前に話をしていた。自分が解任されたと伝えるメモを側近に手渡された長官は当初、冗談だと思い笑っていたという。

コーミー氏は4年前にオバマ前大統領によって任命された。FBI長官の任期10年のうち6年をまだ残している。FBI長官が任期中に解任されるのは、史上2人目。

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トランプ氏とコーミー氏の複雑な関係

民主党のチャック・シューマー上院院内総務はただちに記者会見し、ロシアによる大統領選介入疑惑の「捜査が肉薄」しているから解任したのかとトランプ大統領を批判。セッションズ司法長官がロシア介入疑惑捜査から身を引いたにもかかわらず、解任に関与したことも批判し、副司法長官に独立検察官の任命を強く要求した。

上院情報委員会のリチャード・バー委員長(共和党)も懸念を表明し、「コーミー氏解任の時期と理由に困惑している」と述べた。

コーミー長官は3月20日、下院情報委員会で証言し、ロシアによる米大統領選介入疑惑の捜査に関連して、トランプ陣営とのつながりも調べていると初めて認めていた。

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米民主党幹部「大統領、それは大きな間違いです」

解任の理由は

コーミー長官が昨年10月末に、クリントン氏のメール問題について捜査を再開すると発表した際、トランプ氏はその「勇気」を称えていた。それだけに、今回メール問題を理由に解任されたことに、大勢が驚いている。

トランプ氏は大統領選の終盤に支援者集会で、コーミー氏がメール問題の捜査を再開したのは「ガッツのいること」で、「(コーミー氏自身の)評判回復」につながったと評価していた。

一方でローゼンスタイン副司法長官は解任を大統領に提言した書簡で、「長官は2016年7月5日に、司法長官の権限を侵害し、(クリントン氏のメール問題について)訴追せず捜査を打ち切るべきという自分の判断を発表した」と批判。これは司法省幹部の頭ごなしにコーミー氏が権限を逸脱して行ったことで、「その際の長官の対応を擁護できない。そして、対応が間違っていたというほぼ普遍的な判断を、なぜ長官が受け入れようとしないのか、私は理解できない」と書いている。

「長官は深刻な複数の間違いを犯したと、ほぼ全員が同意している。異なる立場の人々が同意できる、数少ない問題のひとつだ」と副司法長官は書き、コーミー長官が昨年7月にクリントン氏に関する「抽象的情報」を「いわれなく」公表するため記者会見を開いたのは、FBI長官として長年の原理原則にもとる行動だったと批判している。

コーミー長官は3日、上院司法委員会のFBI監査公聴会で証言し、昨年の大統領選直前にクリントン氏のメール問題について捜査を再開したと公表したことについて、大統領選の結果にFBIが影響したかもしれないと思うと「いささか吐き気がする」と認めた上で、「ひどいこと」と「壊滅的」な結果のどちらかを選択しなくてはならなかったのだと述べ、今でも同じ決断をすると言明していた。

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FBI長官、トランプ氏のツイート裏付け証拠はないと
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Image caption クリントン氏は選挙直前のコーミー長官の発表がなければ、自分が当選していたと発言している

ロシア疑惑の捜査は

コーミー長官解任の知らせを受けて、民主党はただちに、ロシア政府がトランプ政権と連携しながら大統領選に介入したのではという疑惑のFBI捜査を阻止するための解任だとホワイトハウスを非難した。

FBIのほか、連邦議会の上下両院の両情報委員会が疑惑を調べている。

9日夜に記者会見した民主党のシューマー上院院内総務は、「一連の捜査が大統領にとって、肉薄しすぎていたのだろうか」、「偶然とは思えない」と述べた。

コーミー長官の解任を受けて、「ニクソン的」という言葉が米メディアやインターネットで取り沙汰されている。ウォーターゲート事件渦中の1973年10月にリチャード・ニクソン大統領が特別検察官を解任し、それを受けて司法長官と副司法長官が辞任した、いわゆる「土曜の夜の虐殺」を多くの人が連想しているためだ。

しかしトランプ大統領は、ロシア疑惑は「偽ニュース」だと一貫して反発している。

(英語記事 FBI chief James Comey fired by Trump

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