人種差別的なぬいぐるみと苦情の巡査、逆に調査対象に

ダニー・ショウ内政担当記者、BBCニュース

Two Met Police officers

職場での「人種差別的な」サルのぬいぐるみについて懸念を提起したアジア系の巡査が、重大な不正行為があったとして逆に調査されていたことが、BBCニュースの取材でこのほど明らかになった。

巡査は、ロンドン中心部のベルグレービア警察署で、警官のシャツを来た黒いサルのぬいぐるみを見つけたと話した。

警察署長たちはこの件について調査すると約束したものの、後に、話をでっち上げたとしてこの巡査本人が逆に調査されることになった。

巡査は後に、不正行為に関する聴聞会で疑念を晴らすことができた。その後、警察に対する訴訟を起こした巡査は損害賠償を受け取っている。

今回の件の詳細が明るみに出る前には、テムズバレー警察の警官が、黒人の同僚警官のデスクにサルの人形を置くという別の出来事があった。

テムズバレー警察の件に関して 不正行為委員会は4月、アンドリュー・モトウ巡査部長について、人種差別主義者ではないがサルの人形は侮辱的だと気づくべきだったと結論付けた。

ぬいぐるみが置かれ……

ロンドン警視庁が関わった出来事は2013年9月、インド出身の巡査がベルグレービア警察署の事件管理課の事務所で巨大なサルのぬいぐるみを見かけたと主張して始まった。

黒いぬいぐるみには、「夜勤ERO」(EROは証拠審査官)と書かれた名札の付いた警察官のシャツが着せられていたと、巡査は話した。

当時、証拠審査官の1人は黒人の警察官だった。

巡査は、ぬいぐるみの使用が人種差別主義的で、きちんと経緯を調べられていなかったかったと懸念していた。

そこで、職員がロンドン警視庁の警視総監(当時はバーナード・ホーガン・ハウ卿)に問題を相談できる「長官のフォーラム」として知られる署内ウェブサイトでのライブ・チャットで、巡査はこの問題を相談した。

巡査は、「その説明がもし本当ならば受け入れがたい」との返信をオンライン上で受信し、「すぐに」調査すると伝えられたという。

しかし1カ月後、「虚偽かつ扇動的な可能性のあるコメント」を投稿した 疑いで、巡査自身が調査対象となった。

巡査は、自身の行動が、「公正さと誠実さ」および「不名誉な振る舞い」に関する「プロとしての行動基準に違反 し、証明されれば巡査自身の解雇につながる可能性がある主張だ」と言われた。

最終的には、2015年6月、内部での懲戒手続きが長引いた後、巡査は重大な不正行為に関する聴聞会に出席。「証拠不十分で閉廷」と判断が下され、巡査への疑念が晴らされた。

金銭的な解決

ロンドン警視庁職員組合の代表で、一連の手続きで巡査を支援したポール・ターピン氏は、「重大な不正行為についての聴聞会にこの問題が付託された時は驚いたが、聴聞会で証拠不十分とされた時には驚かなかった」と話した。

ターピン氏は、この申し立てがあそこまで大ごとにされるべき ではなかったとの考えを示した。「何か問題が起きたら、可能な限り早い機会に、最も低い適切なレベルで対処されるべきだ」。

ロンドン警視庁は、聴聞会の後、今回の件の扱いについて「内部審査」が行われたと話した。

サルの人形に関する元々の申し立ては、「署内で調査され、可能な限り進展した」と説明。しかし調査では、警察署内にサルのぬいぐるみを置いた人物を特定できなかった。

インド系の巡査はロンドン警視庁に対し、人種差別を受け不当に扱われたとして、労働裁判所で法的措置を開始していた。なお、本人の希望によりBBCでは巡査の名前を公表していない。

しかし本格的な審理が始まる前に警察側が和解を申し出、損害賠償の支払に同意した。

合意内容の詳細は機密だが、補償額は35000ポンド前後(約510万円)と考えられている。

巡査はコメントを拒否しており、合意内容の詳細はBBCに一切明かしていない。

ロンドン警視庁は、2016年3月に裁判所 で「司法調停の後」に和解に達したと認めている。

「時代遅れの文化」

ロンドン警視庁で専門的な技術や意識を担当するリチャード・マーティン副警視監は、職員からの差別やいじめ、ハラスメントに関する苦情の対処方法を改善するため 、警察側が「かなりの投資」をしており、新たな「内部通報」制度も導入したと話した。

マーティン副警視監は、「苦情を申し立てれば不当な扱いを受けるかもしれないという恐怖を人は抱くもの、というのは我々は随分前から認識している。その恐怖が理にかなっているか否かは別にして」と述べた。

「これまで容認されたことは決してないし、これからも、不当な扱いは決して容赦せず、調査を行い、もし不当な扱いがあれば深刻な影響を及ぼすということを、引き続き警視庁職員に極めて明確に伝えていく」

しかし、ロンドン警視庁黒人警察官協会ジャネット・ヒルズ会長は、黒いサルのおもちゃの使用や、アジア系巡査の扱いから察するに、残る道のりはまだ長いと話した。

ヒルズ会長は、「サル」の事件は「信じられず」、「受け入れがたい」と言い、「そうした文化を未だに守っている警察内の時代遅れの人たちを排除しようと今も努力している」と述べた。

「単なるぬいぐるみではなく、『これが私が考えるあなた』と伝えるために使われたぬいぐるみなのだ」

ヒルズ会長は、「それは人種差別的な行為だ」と指摘。そのようなことをした人たちがそれでも「逃れられる」と思ったため続けられた、と付け加えた。

(英語記事 Officer accused of misconduct after making racist toy complaint

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