トランプ氏「FBIにフリン氏の捜査中止を要請」=米報道

Trump and Comey Image copyright Reuters

複数の米メディア報道によると、ドナルド・トランプ米大統領は今年2月、連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官(当時)に対して、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を辞任したばかりのマイケル・フリン氏に対する捜査を中止するよう要請していたという。9日にトランプ氏に解任されたコーミー前長官が、この会話の直後に詳細なメモを取っていたことが明らかになった。

米紙ニューヨーク・タイムズの初報に続き、ワシントン・ポストなど米メディア各社が報じたところによると、トランプ氏は2月14日にホワイトハウスの大統領執務室で、フリン氏は「いい奴」なので、捜査を「やめる道筋がはっきり見えるといい」とコーミー氏に伝えたと言う。この発言の前まで、マイク・ペンス副大統領とジェフ・セッションズ司法長官も同席していたが、トランプ氏に席を外すように言われたため退席したと、同紙は書いている。

記事が伝えるコーミー氏のメモ書きによると、トランプ氏は「これをやめる、フリンを自由にするための道筋がはっきり見えるといい」と述べた。コーミー氏は捜査中止の要請には応じなかったが、フリン氏が「いい奴」だという大統領の発言には同意したという。

コーミー氏は自分のメモをFBI幹部や側近に見せていたという。記事を書いたマイケル・S・シュミット記者は、コーミー氏のメモを直接見たわけではなく、同氏の側近からメモの内容を読み聞かされたのだと書いている。

ホワイトハウスは声明で、今回の報道を否定した。

「大統領は、フリン将軍がこの国に仕え、国を守った真っ当な人物だと繰り返し表明してきた。しかし大統領は一度たりとも、コーミー氏にもほかの誰にも、フリン将軍に関する捜査を含めていかなる捜査についても、中止を要請したことなどない」と言明。さらに11日の上院情報委員会で証言したアンドリュー・マケイブFBI長官代行が、「我々の捜査を妨害する動きは今のところない」と証言したことも指摘した。

これについてニューヨーク・タイムズは、マケイブ氏が言及したのは大統領選へのロシア介入疑惑全般への捜査についてで、フリン氏の捜査はこれとは別だと書いている。

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FBI長官解任 ホワイトハウスと大統領の説明が矛盾

大統領とFBI長官の会話の前日には、フリン氏が政権発足前にセルゲイ・キスリャクロシア大使と会談し、ロシア制裁解除について話し合っていた件をめぐり、副大統領らに虚偽報告をしていたことが問題視されて事実上解任された。米国では民間人が外交を行うことは違法。

トランプ氏が9日にコーミー氏を解任した理由について、ホワイトハウスは当初「ヒラリー・クリントン氏のメール問題に関する対応に問題があったと、司法省から提言された」と説明していたが、後にトランプ氏自身が「FBIが大混乱しているからだ。解任は自分で決めた」と発言。批判勢力は、コーミー氏率いるFBIが、大統領選でトランプ陣営がロシア当局と結託した疑惑を捜査しているからではないかと非難している。

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トランプ氏とコーミー氏の複雑な関係

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「歴史に見つめられている」

ニューヨーク・タイムズの第一報に民主党と共和党の与野党議員たちは素早く反応した。

下院監視・政府改革委員会の委員長を務めるジェイソン・チェイフェッツ議員(共和党、ユタ州選出)は、同委員会として「もし存在するなら、コーミー・メモを入手する。いずれではなく、すぐに目にする必要がある。召喚状を書く用意はできている」とツイートした

民主党幹部のチャック・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州選出)は、報道に「衝撃を受けた」と述べ、「この国は前例のない形で試されている。上院の同僚全てに申し上げる。歴史に見つめられている」と強調した。

一方で、ロシア疑惑を調査する上院司法委の小委員会を率いる共和党幹部のリンジー・グレアム議員(サウスカロライナ州選出)は、コーミー氏の宣誓証言を求めた。

上院情報委は16日の非公式会合でコーミー氏の証言を求めたが、前長官はこれを辞退した。

グレアム議員は「コーミー氏に司法委員会の前に立ち、自分の言い分を語るよう要請した」と報道陣に話した。

「そうすることが、本人にとっても良いことだと思う。この国にとっても良いことだ」

司法妨害なのか

下院情報委員会のアダム・シフ筆頭委員(民主党)は、トランプ氏によるこの介入がもし本当ならば、「捜査介入ないしは捜査妨害」に相当すると非難した。

共和党重鎮のジョン・マケイン上院議員は夕食会で、トランプ氏にまつわるスキャンダルがいまや「ウォーターゲート級」になったと発言したと報道されている。

鍵となる法律は、合衆国法典第18巻第1512条。「公式の手続きを妨害、影響、阻止する、もしくはしようとする」者を訴追できると、幅広く定義している。

第1512条によると、訴追されるにはその人が単に司法手続きを妨害しようとしただけでなく、「腐敗した」意図、つまり故意性が構成要件となる。ワシントン・ポストが取材した法律の専門家たちは、この場合そのような意図があったかははっきりしないと答えている。

米メディアの反応は

コーミー氏のメモについて、ニューヨーク・タイムズは社説で、共和党議員たちへの不満をあらわにした。

「連邦議会の共和党議員たちはいつになったら、もうさすがにたくさんだと判断するのか」、「トランプ氏の支持率が30%を下回る必要があるというのか。自分たちのひどく不人気な政策をまずゴリ押ししてからでないと駄目なのか。あるいは、ついに自分たちの良心に照らして、自分たちは憲法を守ると誓約したことを、ついには思い出すことがるのだろうか」と同紙は書いた。

ワシントン・ポストのダン・バルツ記者は、嵐は過ぎ去るのを待てばいいという共和党の作戦はついに座礁したが、それでも多くの共和党議員は抵抗し続けるだろうと書いた。

「しかしこの2日間で明らかになった内容から、誰もが計算し直すしかない事態の推移が明らかになった」

政治ニュースサイト「ポリティコ」は、「共和党はトランプについて限界に達しつつあるかもしれない」と書き、トランプ政権の危機によって自分たちの立法計画全てが脅かされかねないため、共和党は身動きできずにいるのだと書いた。

「共和党議員たちが身動きできず、ホワイトハウスと上下両院を抑えているにもかかわらず、何の法案も成立させられないなら、自分たちは多数党だと来年の中間選挙でどうやって有権者を説得できるというのか」

一方で、保守系フォックス・ニュースのアンカー、タッカー・カールソン氏は視聴者に、目にする記事の内容全てをありのままに受け止めないよう、視聴者に呼びかけた。

「ワシントンでは本当に大勢が」大統領を辞めさせようとしているとカールソン氏は述べ、「動機はなんでしょう? まったく分からないことが多い。耳にして無批判に受け入れる内容の多くは、疑問に思った方がいい」と促した。

(英語記事 Trump 'asked FBI to halt Flynn inquiry'

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