「指輪物語」作者の新著出版 執筆から100年後 

J・R・R・トールキンさん
Image caption J・R・R・トールキンさん

ファンタジー小説「指輪物語」の作者J・R・R・トールキンさんによる新しい本が、1日に出版される。執筆されたのは100年前だ。

邦題「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化もされた物語の前史にあたる「ベレンとルシアン」は、トールキンさんにとって非常に「個人的な思い入れ」のある作品だと研究者は言う。第1次世界大戦のソンムの戦いから帰還後に執筆した。

物語は人間の男ベレンと不死のエルフ族の姫ルシアンの恋物語を軸に、「指輪物語」に至る人間とエルフの関係や、貴重な宝石をめぐる悪の冥王との戦いを描く。

オックスフォード大学の教授だったトールキンさんの息子、クリストファーさん(92)が編集した。後に「シルマリルリオン」として出版された物語の一部が含まれている。物語の一番早い段階の形が後に「シルマリリオン」の一部となるため、どう変化したか比較できるようになっている。

トールキン教授が作りだした世界、「ミドルアース(中つ国)」に関する大量の作品が、その死後に息子クリストファーさんによって編纂(へんさん)・出版されている。「ベレンとルシアン」は、最後に出版された「フーリンの子供たち」の発表10周年を記念して、米ハーパーコリンズが出版する。

挿絵は、トールキン作品の挿絵画家として名高いアラン・リーさんが担当した。リーさんは、ピーター・ジャクソン監督の映画「ロード・オブ・ザ・リング」3部作に参加し、アカデミー賞を得ている。

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Image caption ベレンとルシアンの恋物語には、トールキン教授と妻イーディスさんの関係も反映されている

トールキン教授と第1次世界大戦に関する著作のあるトールキン研究者、ジョン・ガースさんによると、教授にとって「中つ国」の物語執筆は、戦場で目の当たりにした惨劇の「つきものを落とす」行為に等しかったという。

「塹壕(ざんごう)で伝染病にかかって帰国したトールキンさんは、1916年から1917年にかけて療養生活を送っていた」とガースさんは説明する。

「大事な親友を2人、ソンムで失った彼は、身も心もボロボロだったに違いない」

療養中のトールキンさんが妻のイーディスさんと東ヨークシャーの森を散歩した時、白い花でいっぱいの野原でイーディスさんが踊った。この時の様子が、ベレンとルシアンの物語でも大切な場面となった。

「恐ろしい戦場を経験したトールキンさんは、これほどの喜びをまた味わえるとは思っていなかったかもしれない」とガースさん。

オックスフォードのウォルバーコート墓地にあるトールキン夫妻の墓には、「ベレン」と「ルシアン」の名前が刻まれている。

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Image caption トールキン作品の挿絵画家として知られるアラン・リーさんが、新著にも挿絵で参加
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トールキンさんの「ホビット」は1937年、「指輪物語」3部作は1954年から1955年にかけて出版された。「指輪物語」の原書は総部数1億5000万部で、史上最も発行部数の多い小説のひとつ。

2001年~2003年公開の映画3部作も歴史的な興行収入を上げ、3作目の映画「王の帰還」は「ベン・ハー」に並ぶ最多11部門のアカデミー賞を受賞した。

(英語記事 JRR Tolkien book Beren and Lúthien published after 100 years

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