【英総選挙】 過半数割れのメイ首相、内閣改造 ゴーブ氏返り咲き

Theresa May
Image caption 内閣改造について首相官邸で答えるメイ首相(11日)

英総選挙で下院過半数を失った与党・保守党を率いるテリーザ・メイ英首相は、北アイルランドの保守政党、民主統一党(DUP)の10議員の支持をもとに、新政府を組閣すると発表し、11日までに顔ぶれを決定した。昨年の党首選でメイ首相に敗れたマイケル・ゴーブ前法相が環境相として政権に返り咲いた。総選挙の結果、下院は単独過半数の政党がない「宙吊り議会(hung parliament)」となった。

11日には、かつてブレグジット(英国の欧州連合離脱)推進の立役者となったものの、昨年の党首選でメイ首相に敗れたゴーブ前法相が環境相として政権に返り咲くなど、新しいメイ内閣の顔ぶれが決まった。

首相はBBCに対して、新内閣は「保守党全体から幅広く才能ある人を」取り入れたもので、社会問題と「ブレグジットの成功実現」に注力し、「全国民のために機能する政府」を目指すと述べた。

首相はブレグジット交渉や教育改革のほか、「住宅不足の問題に取り組み」、「国民を支える適切な精神医療法案」を用意すると述べた。

今後も続投するかどうかの質問に首相は、「もし再選されれば任期を満了すると選挙中に言いました」と答えた。

ゴーブ新環境相は任命についてスカイニュースに対して「かなり驚いた」と答えた。「もちろん今日が内閣改造の日だとは知っていたが、まさか自分がこの役目に選ばれるとは思っていなかった。政府に参加できてとてもうれしいし、テリーザを支えられてうれしい」と話した。

やはり党首選を争ったアンドレア・レッドソム環境相は、下院院内総務となった。

デイミアン・グリーン労働年金相は、筆頭国務大臣だったベン・ガマー氏の落選を受けて、後任となった。新労働年金相には、デイビッド・ゴーク財務省首席担当官が選ばれた。

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Image caption マイケル・ゴーブ新環境相

フィリップ・ハモンド財務相、ボリス・ジョンソン外相、アンバー・ラッド内相、デイビッド・デイビスEU離脱担当相、マイケル・ファロン国防相、ジェレミー・ハント保健相ら、主要閣僚は続投となった。

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Image caption デイミアン・グリーン新筆頭国務大臣

9日にバッキンガム宮殿を訪れエリザベス女王から儀礼的に組閣の許可を得たメイ首相は、ダウニング街の首相官邸前で、下院第一党として「正当」な政府を作れるのは保守党だけだと述べた。

「女王陛下とお会いしてきました。これから政権を組閣します」と首相は述べ、国に確実性を提供し、国の全員にとって良いブレグジット交渉を進め、イスラム過激主義から国を守り、公平で繁栄の機会を誰もが共有する国づくりを進めていくと表明した。

首相はDUPの「友人や仲間」と共に、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)交渉を前進させていくと述べ、「では仕事を始めましょう」と呼びかけた。

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Image caption 総選挙後で過半数を失った後、自分が新政府を組閣すると発表するメイ首相(9日、ロンドン・ダウニング街)

投票率68.7%

開票作業が最後まで続いたロンドンのケンジントン選挙区では9日夜、わずか20票差で労働党の勝利が決まり、これで全650議席の結果が確定した。

保守党318議席(13減)、労働党262議席(30増)、スコットランド国民党(SNP)35議席(21減)、自由民主党12議席(4増)、DUP10議席(2増)、シン・フェイン7議席(3増)、プライド・カムリ4議席(1増)、緑の党1議席(増減なし)、その他1議席。投票率は68.7%、投票数は4684万3896票。

保守党は331議席から13議席減らして、318議席を獲得。過半数326議席には足りない。しかしDUPの10票が確保できれば、過半数に達する。

262議席を得た労働党のジェレミー・コービン党首は、メイ首相に辞任を要求。自分が少数内閣の首班として「仕える用意がある」と述べている。自由民主党のティム・ファロン党首は、メイ首相は「恥を知るべきだ」、「かけらほどの自尊心があるなら」辞任すべきだと批判した。

労働党は、独自に少数政府を組閣する意欲を示しているが、仮にSNPや自由民主党、緑の党、プライド・カムリの各党といわゆる「革新連合」を組んだとしても、合計314議席にしかならず、過半数には足りない。

SNPは21減の35議席と後退。このため、SNPが掲げたスコットランド独立のための2回目の住民投票の実施は、当面遠のいたとみられている。

続投発表後にメイ首相は記者団に対して、「もっと大きい差をつけて過半数を得たかったが、そういう結果にならなかった」と述べた。

「うまくいかなかった候補全員、残念だと思う(略)特に、この国のために多くを捧げ、落選するべきでなかったのに落選した議員や閣僚は本当に残念だったと思う」

「今回の結果を振り返りながら、党を前進させるため今後何をすべきか検討する」

メイ首相は4月、ブレグジット交渉に向けた足場固めのために総選挙の前倒しを発表した。しかし党の政権公約が高齢者の在宅介護費の自己負担分を引き上げたことが、保守党支持層に強く批判されたほか、首相が党首討論会に一切参加しなかったことも問題視された。

スコットランド保守党から懸念

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Image caption DUPはブレグジットを強く支持している。アーリーン・フォスター党首(左)はメイ首相と協議したと認めた

メイ首相は、個別案件ごとに賛成票を保守党に「貸す」、「信任と予算」と呼ばれる閣外協力の非公式な取り決めを、DUPと交わすものとみられる。DUP関係者は、話し合いは始まっているが、正式には何も決まっていないと話す。

DUPのアーリーン・フォスター党首は、メイ首相と話し合ったことを認め、「この国が大きな課題に直面するなか、どうやって安定をもたらすことができるか探るため」協議を続ける方針だと述べた。

DUPは常に北アイルランドとその住民にとって「最善の取り決め」を追求するものの、英国全体の利益を常に重視していくとフォスター氏は話した。

スコットランド保守党のルース・デイビッドソン代表は、DUPとどのような取り決めをしても、英国内のLGBT(性的少数者)の権利に影響させないよう首相に保証を求めたと明らかにした。デイビッドソン代表は同性愛者。英国内では北アイルランドのみ、同性結婚を法的に認めていない。

デイビッドソン代表の側近はBBCに対して、「DUP議員よりもスコットランドの保守党議員の方が多い。首相はそれを覚えていてほしい」と述べた。

DUPとは

社会的保守政策を掲げるDUPは、北アイルランドと英国との連合を支持し、ブレグジットを支持する。

同性結婚と人工中絶に反対している。北アイルランドでは医療上の特例を除き、人工中絶は違法。

DUP議員の一人は気候変動を熱心に否定し、元議員は「創造主義」(人類は進化したのではなく神に創造されたと信じる主義)を学校の理科の授業で進化論と並行して教えるべきだと主張したことがある。

(英語記事 May to forge 'government of certainty' with DUP backing

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