ロンドン北部の襲撃 容疑者家族「ショック」

ロンドン北部フィンスブリー・パークのモスク前で取り押さえられた容疑者(19日未明) Image copyright Facebook
Image caption ロンドン北部フィンスブリー・パークのモスク前で取り押さえられた容疑者(19日未明)

ロンドン北部のフィンスブリー・パークで19日未明、ムスリム(イスラム教徒)福祉施設の近くでワゴン車が歩行者に突っ込み、多数が死傷した事件で、警察は容疑者の名前をダレン・オズボーン容疑者(47)と発表した。容疑者の家族は「ショック」で「打ちのめされている」とコメントした。

ロンドン警視庁は、オズボーン容疑者をテロ準備・実行の容疑と、殺人および殺人未遂の疑いで逮捕したという。

調べによると、4人の子供がおり、容疑者の母親や姉妹、甥は「とてつもないショックで信じられない。まだ実感できていない」とコメント。「負傷した人たちに心から思いを寄せている」と述べた。

BBCの取材によると、容疑者は西部ウェールズのカーディフに複数の不動産を所有していた。警察は19日、カーディフ市内の住所を家宅捜索した。

ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監は、「明らかにムスリム(イスラム教徒)への攻撃」で、フィンスブリー・パーク周辺には「特に宗教施設の周り」の警備を強化し、武装警官も投入すると表明した。

ベン・ウォレス保安担当閣外相は、治安当局は容疑者について把握しておらず、単独犯だったようだと話した。

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ロンドン北部襲撃 容疑者取り押さえの瞬間

ムスリム指導者が容疑者を群衆から守った

「ムスリム福祉ハウス」の近くで歩行者をワゴン車で次々にひいたとされる容疑者は、現場でその場に居合わせた人たちに取り押さえられた。現場にいた人たちによると、容疑者はムスリムを殺したいと繰り返していたという。

「ムスリム福祉ハウス」の指導者モハメド・マフムード師が、容疑者を押さえつける人たちを容疑者から引き離し、通りかかった警察車両を呼びとめたという。

マフムード師は報道陣に、「そこで警察に状況を説明した。男をここに取り押さえている。ワゴン車で大勢をひいた。大勢が男を痛めつけようとしている。この場から連れていかないと、とんでもないことだが、ひどいことになるかもしれないと」と説明。「警察が無事に男を連れ去るまで、大勢が男に近寄れないようにしていた」という。

ムスリム福祉センターのトゥフィク・カシミ代表によると、自分を押さえつける人たちに容疑者が「当然の報いだ」、「自分のやるべきことをやった」などと話していたという。

Image caption 緑の印が襲撃現場。近くにムスリム福祉ハウス(Muslim Welfare House)、線路の反対側にモスクがある
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「大混乱だった」 フィンスブリー・パーク襲撃

警察によると、事件で一人が死亡し11人が負傷。負傷者のうち9人が病院に搬送された。負傷者の数人は重傷という。また現場で倒れた男性が後に死亡したが、事件が直接の死因かは明らかになっていない。

19日夜には、事件現場の近くにあるフィンスブリー・パーク・モスクの外で様々な宗教指導者が集まり、追悼集会を行った。

モスクのモハメド・コズバル師は、襲撃は「私たちの家族、私たちの自由、私たちの尊厳」を狙ったものだと批判。死亡した男性には子供が6人いたと話した。

英国教会のステップニー主教、エイドリアン・ニューマン牧師は、「ひとつの信仰に対する攻撃は、我々全員への攻撃だ」と強調した。

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Image caption 現場で証拠を集める鑑識捜査員
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Image caption フィンスブリー・パーク・モスク前の追悼集会。女性が掲げるプラカードには「愛が勝つ、テロは負ける」と書いてある

ウェストミンスター、マンチェスター、ロンドン橋に続き、英国では3カ月の間にテロ攻撃が4回相次いだことになる。

テリーザ・メイ英首相は首相官邸前で、「またしても、罪のない普通の人たちの日常生活を標的にした攻撃だ。今回は、1年の中で特に神聖な月にその日の断食を終えてモスクで共に祈ったばかりの、英国ムスリムを襲ったものだ」と述べ、他の攻撃と「まったく同じように不快きわまりない」と非難した。

メイ首相は官邸前で談話を発表した後、フィンスブリー・パーク・モスクを訪れ、宗教指導者たちと意見交換した。

事件現場が地元選挙区内にある野党・労働党のジェレミー・コービン党首は現場を訪れ、BBCに対して、「モスクへの攻撃、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)への攻撃、教会への攻撃は実際、我々全員への攻撃だ」と述べた。

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Image caption 現場近くには花束が寄せられている

<現場の声> チェリー・ウィルソン、BBCニュース

地元の人たちは、ここは誇り高く多文化が共存する場所だと言う。最大のライバル関係といえば、(サッカーの)アーセナルとトットナムのどちらを応援するかぐらいだと。

しかし、ロンドンでまたしても警察が襲撃現場を捜査する様子を見守る住民たちは、ショックを隠せない。

4人の子供の母親、ニコラ・シニアさん(43)は、子供たちを学校に送り届けた後に帰宅する途中、立ち止まって現場の様子を眺めていた。

「怖いです。報復があると思う? 子供たちが心配です。公園に行ってもいいのか、教会に行ってもいいのか。同じようなことがしょっちゅう起きてる気がする」


<解説> 過激主義との戦い 危険な分岐点――フランク・ガードナー治安担当編集委員

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今回の攻撃は、英国の無防備な市民をさらに攻撃しようと計画する連中の思うつぼになりかねない。

過激派のいわゆる「イスラム国」(IS)のオンライン支持者たちはたちまち、フィンスブリー・パーク攻撃をとらえて、欧米で暮らすムスリムに敵対し攻撃する風潮が高まっている証拠だと言い募った。

ISに戦闘員を勧誘したり、プロパガンダを吹聴する者たちは、必ず今回の攻撃を自分たちのいいように使うだろう。過激主義は過激主義の温床となる。

極右の反ムスリム過激主義と、暴力的なイスラム聖戦主義は、ムスリムと非ムスリムの平和的共存は不可能だという確信で一致している。

最近相次いだテロ攻撃の後に、英国各地で宗教を越えた祈りが捧げられ、宗教を越えた連帯行動が相次いだことは、反イスラムとイスラム聖戦主義の両方の過激主義者にとって、同じように唾棄すべきものなのだ。

どちらの過激主義者にとっても、目標は社会の分断だ。どちらの過激主義者も同じように、このような犯罪的な挑発行為で今後も、社会の分断を実現しようとするだろう。


(英語記事 Finsbury Park suspect Darren Osborne's family 'in shock'

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