米人気コメディーの主演が人種差別ツイート、ABCは番組打ち切り

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Image caption 米女優ロザンヌ・バー氏のツイートが原因で、米ABCは人気コメディー番組を第2シーズンで打ち切った

米ABCテレビは29日、主演女優による人種差別ツイートを理由に、高視聴率の人気コメディー番組を打ち切ると発表した。主演女優でコメディアンのロザンヌ・バー氏(65)はツイートで、バラク・オバマ前大統領の側近を「猿」になぞらえた。

ABCテレビは、「ロザンヌのツイートはおぞましく不快で、我々の価値観に一致しない。そのため、番組の打ち切りを決定した」と発表した。

バー氏はツイッターで28日、オバマ氏の側近バレリー・ジャレット氏が、ムスリム同胞団と映画「猿の惑星」の落とし子だと書いた。激しい非難を浴びてツイートを削除し、「下手な冗談だった」と謝罪したが、事態は収まらなかった。

シットコム(シチュエーション・コメディー=コメディードラマ)「Roseanne」は1988年~1997年に、労働階級の白人を描いて米国で大ヒットした同名シリーズを再開したもの。3月の初回放送は2500万人が視聴した。第1シーズン全10話の放送中で、すでに第2シーズンの製作も決まっていた。

新シリーズは、バー氏がハリウッド作品にほとんど登場しないトランプ大統領支持者を演じていることもあり、米国の保守派から高く評価されていた。バー氏は役柄を離れた本人もトランプ氏の支持者で、トランプ氏もバー氏に自ら電話をして新シリーズの成功を称賛していた。

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Image caption ジャレット氏(中央)はオバマ氏の最も古く親しい側近の1人

相次ぐ攻撃ツイート

バー氏の当初の差別ツイートは、別のツイッター利用者が、オバマ政権中に進行していたとトランプ氏や保守派が主張する監視活動について、ジャレット氏がその隠蔽を手伝ったと書いたツイートに反応したもの。

アフリカ系米国人の両親のもと、イランで生まれたジャレット氏は、シカゴ市政に関わっていた1990年代にミシェルさんを通じてオバマ氏と知り合った。それ以来、オバマ氏の市民活動や政界入り、ひいてはホワイトハウス入りを支え続けた最も古い側近の1人。オバマ政権では大統領上級顧問を務めた。

そのジャレット氏を中傷した自分のツイートについて、バー氏は「バレリー・ジャレットと全ての米国人に謝ります」と書いた。「彼女の政治と外見について、下手な冗談を書いて、本当に申し訳ない。不見識だった。許してください。あのジョークは悪趣味だった」とバー氏はツイートした。

しかしバー氏は、これ以前にも民主党関係者を攻撃したり、ユダヤ系の世界的投資家ジョージ・ソロス氏が「ナチス協力者」などと中傷するツイートを繰り返していた。ソロス氏の広報担当は、バー氏の発言は「侮辱だ」と反発した。

28日にはビル・クリントン元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の娘、チェルシー・クリントンさんが、ソロス氏の親類と結婚しているとツイートし、翌日にはチェルシーさんにツイートで謝罪。その謝罪ツイートの中でも、ソロス氏を「同胞を裏切ってナチスに協力した」と中傷していた。

27日には、オバマ夫妻が動画配信サイト「ネットフリックス」と契約してテレビ番組や映画の製作に取り組むという発表について、「ホワイトハウスから芸能界に行くべきじゃない」と批判していた。その上でバー氏は、「ただし、芸能界からホワイトハウスはいいと思うし」とトランプ氏は支持し、さらに「私もいつかそうするかもしれない」と、大統領を目指すかのようなツイートをしていた。

バー氏は2012年大統領選に、緑の党の候補として出馬した。

「学びの機会

番組打ち切りが発表されて間もなく、以前から予定されてたMSNBCテレビの人種差別タウンホールに出席していたジャレット氏は、今回の騒ぎは「学びの機会」だと述べた。

「私は大丈夫です。それよりも、自分をすぐに擁護してくれる大勢の友人やフォロワーがいない、世間の人たちのことが心配です」とジャレット氏は述べ、アフリカ系米国人など一般市民が日常的に差別や偏見にさらされている現実について苦言した。

ジャレット氏によると、ABCの親会社ディズニーのロバート・アイガー最高経営責任者(CEO)が電話で謝罪し、バー氏のツイートは「まったく容認しない」と言明したという。

ABCによる番組打ち切りに続き、芸能事務所ICMパートナーズはバー氏との代理契約を取りやめた。

米芸能メディアによると、ICMが社員にあてた社内メールは、バー氏のツイートを「恥ずべきもので容認できない」と非難していたという。

番組で娘役を演じる俳優サラ・ギルバート氏はツイッターで、「これは私たち全員にとって非常に悲しくて辛いことです。私たちは自信をもって自慢できる、そして観る人に愛される番組を作ったので。それは出演者1人の意見や発言とは別物なので」と書いた。

バー氏の問題ツイートの後、番組の顧問プロデューサーの1人、ワンダ・サイクス氏は自分は番組を離れるとツイートしていた。

人気コメディシリーズ「モダン・ファミリー」のプロデューサーで、1980-90年代の最初の「Roseanne」シリーズの脚本チームにいたダニー・ズーカー氏は、「最初の『ロザンヌ』で自分たちは、移民排斥や人種差別、同性愛差別を非難した。今の彼女の姿には吐き気を覚える。今後もこの番組を観ないのを楽しみにしている」と書いた。

<解説> 予想通りの結末――ジェイムズ・クック、BBCロサンゼルス特派員

なんとも、実に予想通りだった。

ロザンヌの復活は、華々しかった分だけあっという間に終わった。

主演のロザンヌ・バーはシットコム世界のドナルド・トランプだ。ぶしつけで挑発的で、時には非常に侮蔑的で不快な存在だ。

もう何年も前からバー氏はソーシャルメディアで、悪口雑言と挑発と、奇妙な陰謀論を撒き散らしていた。

ABCの重役たちは、その彼女の冠番組再開を決める前から、本人の言動は承知していた。リスクを承知で賭けに出たわけで、当初は賭けは成功したかのように思われた。

視聴率は素晴らしく、批評家たちは絶賛した。トランプ氏に投票した数百万人(自分たち向けの番組がないと不満を抱いていた観客層だ)に同情的な調子で米国政治の分断を番組で取り上げつつ、トランプ氏に反対する大勢の観客も楽しめる番組になっていると。

その番組が打ち切りとなった今、次に予想される展開は、番組ファンとトランプ政権からの反発だ。そしておそらく、大統領本人からも。


(英語記事 ABC drops Roseanne show after racist tweet

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