【視点】日本の学生運動に新時代か 政治とファッションが混合

安全保障関連法案をめぐる抗議活動は、日本の若者は政治に関心がないという見方を変えた Image copyright Getty Images
Image caption 安全保障関連法案をめぐる抗議活動は、日本の若者は政治に関心がないという見方を変えた

東京の渋谷駅前交差点は、この街の中でも最も知られた場所と言えるだろう。

巨大な液晶画面が掲げられ、コマーシャルの音がたえまなく響くこの交差点は、日本の若者文化への入り口であり、交差点から延びる道それぞれが、有名ブランド店やクラブに通じている。

多くの国民が反対の声を上げるなかで安全保障関連法案が国会で可決されてから1カ月たった日曜日、政府に対する抗議活動を続けようと、学生運動の参加者たちが渋谷駅前交差点横の広場を埋め尽くしていた。

メガホンからレコードやターンテーブルまで、さまざまな物を持ち込み、洒落たストリートファッションで身を固めた参加者たちは、デモ活動、パーティー半々の午後を過ごそうと集まったかに見える。

色々な演説が続き、「民主主義ってなんだ!」と壇上と群衆はコールを掛け合った。

集会では、地元で人気のDJ「Chabe」がレゲエやリミックスを流し、終盤にはラップグループの「スチャダラパー」が参加し会場を沸かすなど、高いファッション性を印象付けた。

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Image caption 現在の学生運動には音楽が大きな位置を占める

まさに「アパレル・アクティビズム」なのだ。

学生団体「SEALDs」が主導し、1年前から始まった抗議集会は、洗練性に気を遣い、プラカードなどもおしゃれな作りにし、メディアをうまく活用して人々の心をとらえた。

団体を当初駆り立てたのは、安倍晋三首相の政策が平和憲法の解釈を変え、日本が長年大事にしてきた専守防衛から離れることで、無制限に戦争に巻き込まれる可能性が高まるのに反対していたからだった。彼らはまた、学費の高騰や所得格差に対しても抗議した。

集会の場所も意図的に選ばれた。国会前の通常のデモだけでなく、もっと幅広い人々の賛同を集められる場所でデモをしようと考えた。

渋谷の集会で檀上に上がった1人で、大学で哲学を学ぶ小林叶さんはこう語る。「ここでデモをすることで、通常だったら関心を持たない人に訴えることができる。だから意義があると感じる」。

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Image caption 60年代の学生運動には暴力がつきものだった

政府に対する抗議活動がこれほどまでに盛り上がったのは1960年代の学生運動以来だが、当時、過激思想と暴力に彩られたのとは大きな違いがある。

1960年代は、ベトナム戦争反対や、抑圧的な大学当局への抗議がきっかけだった。警察との暴力的な衝突や、大量の逮捕者が出て、東京大学の学生がデモの最中に死亡する事件まで起きた。

リベラル派の中心的な思想は、現在の抗議活動にも流れている。しかし1960年代のように、マルクス主義を信奉し、大学内のデモが中心で、労働組合のストライキを支持するのとは違って、寛容で排他的でない空気が圧倒的に強い。

これが現在の抗議活動を勢いづけた大きな理由だ。日本社会では往々にして、政治的な意見表明には往々にして負のイメージが付きまとってきた。

デモの後は掃除

1960年代にバリケードに立てこもった往年の活動家の中には、SEALDsのファッション性が高い抗議活動が、中身より見た目重視だと嫌う向きもある。

全学連も特に、器用な戦術や警察への協力的な態度を批判する。

SEALDsが毎週国会前で行ったデモは、整然としてマナーが守られたデモの良い例だ。多くの学生はデモ終了後にすぐ帰らず、日が昇るころまで清掃を行った。

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Image caption 渋谷駅前の交差点は東京で最も有名な場所の一つだ

しかし、SEALDsの創設メンバーである奥田愛基さんは、運動への参加にリスクが全くないわけではないことを知った。

さまざまな機会でスポットライトを浴びていた奥田さんにとって、渋谷の集会で最後に「スチャダラパー」が歌うなか、ステージに短時間上がるだけで、登壇はかなり控えめだった。

奥田さんと家族に殺害脅迫が来たのは、集会の少し前のことだ。顔を広く知られるSEALDsメンバーが、ソーシャルメディア上で匿名の人からひどい言葉を投げかけられるのは常だった。

彼らの努力もむなしく、議論を呼んだ2つの法案の国会通過は止めることができなかった。ひとつは特定秘密保護法で、「特定秘密」に指定された情報を外部に漏らした内部告発者だけでなく、それを報道したジャーナリストでさえも刑事告発される可能性がある。

2つ目は、海外に派遣された自衛隊が戦闘にも関われるようにする安全保障関連法案だ。

民主主義とは何か

それでも、彼らの活動は政治をめぐる議論の状況を一変させたと、上智大学の中野晃一教授(政治学)は指摘する。

中野教授は「彼らの活動は立憲主義や自由民主主義を擁護しただけではない」と話す。「政治的意見の領域を何十年かぶりに左寄りに戻した」という。

秩序に挑戦するようなことを書くのを本能的に嫌う政府寄りのメディアも、抗議活動がもたらしたインパクトを無視することはできなかったし、ほかの新聞やテレビは、洗練されたスタイリッシュなアクティビスムに飛びついて報じた。

SEALDsが小説家で元活動家の高橋源一郎氏と共著で出版した『民主主義ってなんだ?』は、ベストセラーになった。この本では、自由民主主義の理想実現に向けた提唱がリストアップされている。

急速に影響力を増したことで、彼らが街中でのデモからより組織化された政治活動にシフトするのではないかと考える人もいる。

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Image caption 学生の抗議活動を主導した奥田さんは政治をファッションと混合させた

奥田さんが今年9月、国会が開いた安全保障関連法案の公聴会に招かれ、トレードマークだった「シュプリーム」ブランドのリュックと細見のジーンズを脱ぎ捨て、スーツとネクタイ姿になった時には、一部の人は眉をひそめた。

このような変化はグループにとって大きな転換点になり得る。前出の小林さんを含む一部のメンバーは、個人主義や参加者の自律をうたってきた活動の理想が損なわれるのではないかと懸念する。

小林さんは「SEALDsがこれから何をするのでも、とても大きな影響力を持つだろうと思うが、それと同じくらい大切なのは、各自が、それぞれの個人的で日常的な視点から感じていることを言えることだ」と語る。

「Voices of Protest Japan」という研究プロジェクトを率いるデビッド・スレイター教授(文化人類学)は、SEALDsのこのような変容は、内から変化を促すという彼らの希望に沿っており、筋は通っているとしながらも、危険がないわけではないと指摘する。

「政治システムが大方において機能不全に陥っており、一部には日本の民主的プロセスを損なった主な原因だとさえ言われるなかで、それに組み込まれる危険性がある」とスレイター教授は語る。

「SEALDsは政治プロセスに距離を置くことで、独立した声を得た。その声を失わないでいられるかが問われている」

寄稿筆者のマイク・スンダ氏は、東京をベースに音楽や日本の若者・都市文化について発信するライター)

(英語記事:Japan's student protests: To the barricades in designer gear

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