声の大きいサルほど「精子が少ない」と 国際チームが研究発表

black and gold howler monkeys roaring. This species commonly has several adult males (black fur) and adult females (golden fur) in a group. Image copyright Mariana Rano
Image caption 黒と金のホエザルは通常、大人のオス(黒)と大人のメス(金)が数匹ずつ一緒に群れを作っている

ホエザルの雄が吠える時の深いうなり声は、不十分な生殖能力を補うためのものかもしれない。国際的な研究チームは、ホエザルの雄は声が大きいか睾丸(こうがん)が大きいかのどちらかだが、その両方は両立しない、という研究を発表した。

研究チームは、ホエザルが吠えるときの「見事な鳴き声の進化」を理解しようとして調べた結果、この結論にたどりついたという。この発見によって、何かの特徴を得るために別の特徴を捨てるという進化上の交換は、これまで考えられていた以上に頻繁に起きている可能性が示唆された。

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Hear the roar that earned howler monkeys their name, but costs them their reproductive capability

<ビデオ>ホエザルの雄が吠える際のこの鳴き声が名前の由来になっているが、生殖能力と引き換えの能力なのかもしれない。

生物学の専門誌「Current Biology」に掲載された論文によると、ホエザルの雄はその名前の由来となっている大きな鳴き声で、敵を威圧し、雌に求愛する。音が出るのは、喉の中で共鳴装置の役割を果たす舌骨(ぜっこつ)という骨のおかげだ。声帯が弦楽器の弦だとするなら、舌骨は本体で、舌骨が大きければ大きいほど鳴き声も大きくなる。

Image copyright Jacob Dunn
Image caption 左上から時計回りで、ホエザルの頭蓋骨、あごの骨、舌骨。ほかの部位と比べて舌骨がいかに大きいか分かる。ジェイコブ・ダン博士提供。

研究を主導した英ケンブリッジ大学のジェイク・ダン博士は「雌は深い声の方が魅力的だと感じているようだ」と話す。

ホエザルのさまざまな種類を調べた研究チームは、舌骨の大きさが千差万別なことに気付いた。

「最大の舌骨は最小のものの14倍も大きい。この部位についてどうしてこれほどのバリエーションがあるのか、とても興味がわいて理解しようとした」と博士は言う。

ダン博士らは米ユタ大学との共同研究で、欧米各地の博物館が保管するホエザルの舌骨200個をレーザーでスキャンし大きさを比較。正確を期すために、生きたオスのホエザル2匹のMRI画像も撮った。

舌骨の大きさの違いを計測するなかで、ほかにもうひとつ個体ごとに顕著に大きさの違う部位があるのに博士たちは気づいた。

「睾丸の大きさが劇的に違った。最大のものは最小の6.5倍もあった」とダン博士。

ハーレムのために吠える

複数の個体を比較する中で、ホエザルの雄は「巨大な声道を持つか、大きい睾丸を持つか。つまり低周波でより印象的な声を持つか、精子をたくさん作るかの、その二者択一のようだ」とダン博士と研究チームは気づいた。

複数の雌と群れを作り、よその雄と競う雄の声はより深く、睾丸はより小さい傾向がある。群れに複数の雄がいる場合は、声で競わない分だけ雄の声は小さく、睾丸は大きかった。

体が大きいほど生殖器が小さい生き物はセイウチやアザラシ、アシカなどほかにも例があるとダン博士は言う。

人間でも、声の低い男性ほど精子の数が少ないかもしれないと指摘する論文が2012年に発表されている。

しかし「声の大きさと精子の生産数」が交換条件となっていることを明示する事例の発見は、今回が初めてだとダン博士。

「こうした二者択一が予想よりよくあることかもしれないと分かったのは、意外だった」

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