【視点】日本の自衛隊の実力は? 安保関連法成立で牙のないトラはどう変わる

Japanese Self-Defence Forces in Kuwait, November 2004 file picture Image copyright AP

米シンクタンクのアジア軍事問題アナリスト、フランツ=シュテファン・ガディ氏が、日本のいわゆる自衛隊の戦闘態勢がどれだけ整っているのかを検討する。

日本と軍隊との関係性は、かつて日本という国を決定づける特徴だった。実際のところ、1860年代に始まった明治維新で近代日本の礎を築いた改革者たちは、「富国強兵」を決起の大号令としたのだ。

20世紀初頭の島国・日本は、軍隊を持つ国家というよりはむしろ、国家を持つ軍隊へと徐々に姿を変えていった。戦時中のプロパガンダ、「進め一億火の玉だ」というスローガンが豪語していたように。

しかし第2次世界大戦以降、全てが一変した。

攻撃から防衛に

戦争に大敗しただけでなく、日本人270万人の命を奪われた日本では、敗戦を機に軍隊との蜜月は終わった。

日本を占領支配した戦勝国アメリカが起草した新たな日本国憲法は、通常の軍隊を組織することを禁じた。日本は「平和国家」になることになった。

ところが、1950年の朝鮮戦争勃発を機に、アジアの共産化を恐れたアメリカは日本政府に再軍備を迫った。

共産主義国家・中国の進攻に対抗するため、アメリカは日本の自衛隊を創設した。だが、自衛隊は今日まで攻撃のために発砲したことは1度もない。

自衛隊は戦闘で存在意義を証明できず、ほとんどカルト的な軍隊嫌いを前に、自衛隊は冷戦時代を通して、国民に馬鹿にされ見下され続けた。

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Image caption 自衛隊はゴジラにかなわなかった

初期のゴジラ映画をどれでもいいから見てみるといい。自衛隊は自発性がなく、何より暴れるゴジラから東京を守ることができない無力な男たちの集団として描かれている。 当時の日本社会が自衛隊をどう思っていたか、その片鱗がうかがえる。

自衛隊の創設当初、制服姿で街を歩く隊員たちが石を投げつけられることすらあった。

偶然の英雄

1990年代に冷戦が終わり、自衛隊はようやくイメージアップができるようになった。もちろん戦場においてではなく、国際的な平和維持軍として。

自衛隊は一時期、アメリカの「有志連合」の一員としてイラク南部に派遣された。地元イラク人を含めた周りの人たちに守ってもらう必要はあったのだが。自衛隊は実に武力行使に神経質で、機関銃の誤射が国内で大きく報じられたほどだ。

また自衛隊は、その救命・救助活動を称賛されてきた。例えば1995年の阪神・淡路大震災や2011年の福島原発事故での活動が挙げられる。

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Image caption 洪水で家に取り残された住民を救助する陸上自衛隊

大半の日本人は今も自衛隊を災害救助隊だと見ているのだ。

それが2015年ともなると、安倍晋三首相や与党自民党の下で事態は変わりつつあるようだ。

激しい議論を引き起こした安全保障関連2法は、9月に参議院で可決成立した。これによって自衛隊は日本そのものが武力攻撃を受けていなくても、同盟国の防護に駆けつけることができるようになった。

強力な戦闘力

日本がこれで海外紛争に巻き込まれるかもしれない、それどころか日本が戦争を起こす可能性すらあると、国の内外ではヒステリックな不安の声が上がった。しかし新法をよりじっくり精査すると、戦後日本の遺産をあっさり手放すにはまだ長い道のりがあることが分かる。

新法の下で自衛隊が同盟国を支援するには要件が3つある。

  • 日本の存立危機事態であること
  • 武力以外に他に適当な手段がない場合
  • 侵略を抑止する必要最小限度の実力行使にとどまる場合

加えて自衛隊は、他の国連平和維持部隊や危機的状況にある在外邦人を救出できるようになるし、武器を専守防衛だけでなく先制的にも使えるようになる。

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Image caption 演習中の自衛隊の戦車

このように活動の状況は限られているものの、自衛隊は少なくとも、強力な戦闘部隊になる可能性を秘めている。

そもそも伝統的に集団の結束を重んじ、慎重に計画を練り、細部に気を配るという日本の文化は、今日のハイテクを駆使した軍事環境ではとりわけ重要で、現代の軍隊にとって理想的な資質だ。

実際、自衛隊と共に訓練し、実践力向上のために毎年様々な合同軍事演習に参加しているアメリカの陸海軍兵士や海兵隊員は、総じて自衛隊員の能力の高さを評価している。

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Image caption 海上自衛隊の観艦式で浮上した潜水艦

自衛隊はまた第4世代主力戦車やライセンス生産された攻撃ヘリコプター「アパッチ」、最新式の無人偵察機など、アジア全域でも最新鋭の装備を備えており、新しい第5世代ジェット戦闘機も間もなく入手にする。

日本の海軍にあたる海上自衛隊(JMSDF)は、仮想敵の中国人民解放軍海軍(PLAN)よりも技術的に進んでおり、経験も多く、訓練レベルも高いとみられている。加えて、高度な訓練を積んだ独自の特殊部隊の特別警備隊(SBU)も備えている。

とはいえ自衛隊には文化的にも法的にも予算的にも、大きな制約は残る。

例えば、日本は爆撃機や航空母艦、長期距離弾道ミサイルなどの保有を禁じているし、近々取得する計画もない。こうした「攻撃型」の装備は引き続き違憲だからだ。

加えて、いくらか改善されたとはいえ、自衛隊は学校の「落ちこぼれ」や「田舎者」の集まりだという、あまりありがたくない評判も受け続けている。

では、たとえば領有権が争われている尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐり中国と軍事衝突が起きた場合、自衛隊はどれくらいの実力を発揮するのだろうか。尖閣をめぐる衝突こそ、隔年の日米統合訓練で想定される離島防衛のシナリオだ。

戦闘経験のないほかの軍隊と同じように、戦場の混乱で自衛隊も当初はおそらく苦戦を強いられるだろう。だが、そのような不測の事態に対しても絶えず厳しい軍事訓練を積んできた日本人の性質と、卓越した計画能力をもってすれば、防衛においてもきっと能力を発揮するだろう。

ゴジラは一安心

しかしながら自衛隊は、攻撃兵器を持たず人員と装備が限られていることから、長期にわたって単独で日本を防衛できるわけでも、攻撃に打って出られるわけでもないというのが本当のところだ。

自衛隊にはアメリカの後ろ盾がある。日本の強みはまさにそこにある。

だが国民の印象とは裏腹に、日米はまだ相互防衛条約がなく、アメリカの紛争時に日本がアメリカを支援する義務はまだない。

日本は、紛争下のアメリカを支援するかどうかを選択できるのだ。つまり日本が今後、紛争下にあるアメリカを支援するとは決まっているわけではないのだ。

これは両国の相互防衛協力関係を損なう。

では、自衛隊が近い将来、攻撃目的で発砲する可能性はどれくらいなのだろう。例えば中国が日出ずる国に侵攻しようとしたり、北朝鮮が東京にミサイルを発射したりする事態にならない限り、その可能性はゴジラが日本海に再登場するのと同じくらいだと言えるだろう。

寄稿の筆者フランツ=シュテファン・ガディ氏は、東西インスティテュートの上級フェローで「The Diploma」誌の副編集長。

(英語記事 Toothless tiger: Japan Self-Defence Forces