【ロシア旅客機墜落】エジプト観光業に大打撃 シナイ半島で旅客機墜落

Empty sun loungers on a beach in Sharm el-Sheikh - November 2015
Image caption ふだんは混雑するシャルムエルシェイクのビーチだが、今は日光浴する人がほとんどいない(2015年11月)

温かな海はトルコ石のような青い色で魅惑的に光り、ヤシの木や極彩色のエキゾチックな花々が彩る砂浜に打ち寄せる。

いつもの11月ならば、シャルムエルシェイクの砂浜に並ぶパラソルの下に、空いたデッキチェアを見つけるのは難しいはずだ。

いつもならば、ほとんどのデッキチェアは地元の寒さを逃れてやってきたロシアやイギリスの旅行客で埋まっているはずだ。

しかし今年は、ほとんどの観光客はいなくなってしまった。

妻と日光浴をしていたリチャード・ボーンさんは英西部のウェールズからやってきた人だ。「ビーチには誰もいない。何日か前まで満員だったが、ロシア人がみんないなくなってしまった」と言う。

「すごくみんな気の毒で。これからしばらくあちこちのホテルはどうやって生き延びるんだか」

近くにあるナーマ湾のバーやクラブは大音量で音楽をかけているが、それを耳にする客の数はどんどん少なくなっている。土産物を売る人たちも、ダイビングを教える人たちも、心配そうな表情で、手持無沙汰に座っている。

土産物店の店主ラエドさんはいつもは、プラスチックのスカラベやパピルスの巻紙など古代エジプト関連の小物を主に欧州からの観光客に売る。それが今では、「商売にならない」と嘆く始末だ。

人員整理の恐怖

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観光大国エジプト、ロシア旅客機墜落の影響は

エジプト・シナイ半島北部で10月31日にロシアのコガリムアビア航空9268便(乗客・乗員224人)が墜落した問題で、英国やロシアなど複数政府が、シャルムエルシェイク空港と自国の間のフライトを中止した。それ以来、このリゾート地は日に日に閑散としている。

機内に仕掛けられた爆弾が原因ではないかという指摘から、シャルムエルシェイク空港の警備体制に懸念が高まっているためだ。

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【ロシア旅客機墜落】 爆弾だったのか? ISなのか?

ここ数日で各国の航空会社は、足止めされていた数万人を次々と帰国させるため特別便を手配したが、新規の乗客は連れてきていない。

「普段だったら今頃90%の席は埋まって、みんな忙しく働いてみんな楽しく過ごしているはずなんだ」 テラジナ・ビーチ・クラブのオーナー、アムル・ダルウィシュさんはこう言う。

近い将来、スタッフを休職させる必要が出てくるかもしれないとダルウィシュさんは心配している。

「観光客がいつ戻ってこれるようになるのか分からないから。来月や来年の事業計画はおろか、来週の計画さえ立てられない」

エジプト観光省によると、ロシアと英国からのフライトキャンセルによって、エジプトは月22億エジプトドル(約340億円)を失う恐れがある。

シャルムエルシェイクを訪れる観光客の3分の2が、ロシアと英国からなのだ。そしてシャルムエルシェイクはエジプトの観光収入の約3割を稼ぎ出す一大リゾート地なのだ。

経済への打撃

シャルムエルシェイクはこれまで様々ショックをしのいできた。2004年から2006年にかけて紅海沿岸で過激派による爆弾事件が相次ぎ多くの犠牲者が出ても。人食いサメによる被害が出ても。

エジプトを長年支配したムバラク大統領の失脚につながった2011年の政変とそれ以降の政情不安も、シャルムエルシェイクはしのいできた。ギザのピラミッドやルクソールといった観光名所と比べても、シャルムエルシェイクの人気は衰えなかった。

しかしエジプト経済はいまだ脆弱で、今回の墜落の影響は大きな影響をもたらすはずだ。

タクシー運転手からホテルの受付係に至るまで、シャルムエルシェイクで働く人たちはエジプト各地からやってきて、地元に給料を送金している。観光業は外貨獲得の重要な手段でもある。

Image caption 閑散としたシャルムエルシェイク・ナーマ湾の往来(2015年11月)

「最悪のタイミングだ」とカイロにある経済シンクタンク「シグネット研究所」のアンガス・ブレアさんは言う。

「雇用と外貨収入という意味でエジプト経済はこのリゾート地が必要だ。間違いなく心理的打撃を与えるし、中央銀行にとっても問題になる。貿易のため外貨水準の低下をなんとかしようと中央銀行はただでさえかなり大変な思いをしているので」

墜落の原因解明作業は進んでいるが、今週になってロシア政府幹部は、ロシアからシャルムエルシェイクへのフライトが復活するまでには「少なくとも数カ月はかかる」と厳しい見通しを示した。

エジプトの警備体制を一気呵成に変更するのは無理だからというのがその理由だ。

回復への期待

シャルムエルシェイク空港の警備体制については、荷物検査手続きや、機内に積み込む食料・燃料の搬入ゲートの検査手続きについて、懸念が指摘されている。

短期的な解決としては、アラブ諸国や中欧諸国からの旅行客をより大勢、シャルムエルシェイクに誘致できないかという期待が持ち上がっている。

しかしほとんどの経営者は、厳しい状況にまた備えなくてはならないという現実を受け入れている。

「立ち直るまで時間はかかるが、こういう場所は決してダメにならない。素敵なリゾートで、気候は最高だ。海があってサンゴがあって砂漠がある。魔法のような場所だから」とダルウィシュさんは言う。

ウェールズから訪れているボーンさん夫妻も、シャルムエイルシェイクの魅力はそうそう消えてなくならないと信じている。自分たちの休暇は、到着翌日に起きた飛行機墜落が自分たちの休暇に影を落としてしまったし、帰国は少なくとも1日遅れになってしまったのだが。

「どこで起きてもおかしくないでしょう」 ジェニー・ボーンさんは我慢強くこう言った。

「来年も来ますよ」と夫のリチャードさん。「あの空港をなんとかすればいいだけで」

ほかの観光客も同じように思ってくれること。エジプトにとってはそれが頼みの綱だ。

(英語記事 Egypt tourism teeters after Sinai plane crash

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