地球深部の探査が始動――インド洋海底を掘削

蛇紋岩は海底から浸潤する海水によって変化したマントルでできている Image copyright CARDIFF UNIVERSITY
Image caption 蛇紋岩は海底から浸潤する海水によって変化したマントルでできている

地球の深部を研究する科学者チームが今週、インド洋海底での探査を開始する。地球の中心部にあるマントルからのサンプル採取を目指している。

探索によって、地球の地殻を形成する物質についてのこれまでの推測を確認しようとしている。

科学者チームを率いる英カーディフ大学のクリス・マックラウド教授(地質学)は、目標とする地下5000~5500メートルに到達するには数年かかると語る。 これに加えて、米科学掘削船ジョイデス・レゾリューション号から海底までは、水深700メートルだ。

Image copyright Thinkstock
Image caption 大陸地殻は厚さが数万メートルにも及ぶが、海洋地殻はずっと薄い

マクラウド氏は「合計3回の探索が必要になると思う」と語った。「2カ月の探査資金を確保してある。しかし、また戻ってくる必要があり、探査が完了するのは2020年代になるだろう」。

これまで何度か地殻を掘ってマントルに到達する試みが行われたが、成功例はない。

今回は成功の可能性が少し上がるかもしれない。探査が予定されている場所は、断層と浸食から地殻がすでに薄くなっているからだ。探査地点は南西インド洋海嶺アトランティス海台と呼ばれる。

国際深海科学掘削計画(IODP)が支援するこの計画では、新鮮で変質していない、かんらん岩を採取して研究に供するのを目指している。マントルの大きさから推測されるように、かんらん岩は地球の深部の大きな割合を占めている。

探査計画の目標そのものに価値がある。だが、研究者たちはさらに深度を目指すうち、地殻の形成過程のモデルも検証してみたいと考えるようになった。

マクラウド教授は特に地殻とマントルの境界の、いわゆる「モホ面」を調べたいと考えている。地震波の速度が急に変化する「不連続面」として知られる。

教科書の説明は、モホ面が地殻とマントルの境界で、地球表面にあり我々がよく知っている火成岩――花こう岩、玄武岩、斑れい岩といったもの――と、マントル内のかんらん岩を分ける境界線となっている。

しかし、マクラウド教授は不連続面によって、水がどれくらいの深さまで浸潤し蛇紋岩のような岩石を作っているのかも分かるのではないかと推測している。

Image copyright CARDIFF UNIVERSITY
Image caption 探査船が目指している南西インド洋海嶺アトランティス海台(矢印)

地殻の火成岩と同様の地震の影響があるため、海底に始まって、混じり物がないマントルの表面数百メートルまで多種のサンプルを採取しなくては、それが確認できないという。

証明された場合、モホ面についてより洗練された説明ができることになり、地球が形成された過程を理解する上で重要な多くの知見が得られる。

まず、海底地殻がこれまで考えられていたよりさまざまな厚さや構造があることが示される。

マクラウド教授は、「モホ面はすべての海盆であまり変わらない。また海底地殻が非常に均一だと思われていることから、シンプルだと推測されている」と語る。

「しかし、もし我々の仮説が正しいとすれば、すべてが変わる。もしモホ面が実際にマントルに水が浸潤する変化の境界だとすれば、我々が考えていた以上に海底地殻については未知の部分が多いということになる」

Image copyright IODP
Image caption 科学掘削船ジョイデスレゾリューション号

地球上の生命について非常に深い理解を提供する可能性もある。蛇紋岩の形成過程(蛇紋岩化作用)は微生物の生息に適した環境でもある。

かんらん岩のミネラルが水と接触してできる水素とメタンは単一細胞の生命体の材料になる。従来の仮説モデルが許容できる範囲よりも蛇紋岩が広がっているとすれば、地球の中の生命活動の規模はこれまで非常に過小評価されてきたことになる。

「もし蛇紋岩がもっと多くあるとすれば、どのくらい微生物が中にいるのか、想像もできない」とマクラウド教授は話す。

科学者チーム「IODP Expedition 360」は1日、スリランカのコロンボに停泊している科学掘削船ジョイデス・レゾリューション号に乗船し、来週出航する予定だ。

アトランティス海台は以前にも掘削されたことがあり、どのような状況かも知られているため、海底から1300メートルまで掘削できるとみられる第1回目の探査はかなり迅速に進むと予想されている。

すべて順調であれば、さらに深く進む次の掘削は2018年に行われるが、資金やジョイデス・レゾリューション号のような設備が手に入るかどうかによるという。

Image copyright IODP
Image caption 探査が行われるアトランティス海台は過去の調査で掘削に適していると判明した

(英語記事 Bid to drill deep inside Earth