温室効果ガスの排出が次の「氷河期を遅らせた」?

氷河期の地球 Image copyright Ittiz
Image caption 地球は過去250万年の間に氷河期と温暖期のサイクルを繰り返してきた

人類が大気に排出してきた温室効果ガスによって、次の氷河期の開始が5万年以上後ろ倒しになったかもしれない。ドイツの研究チームがこう指摘している。

1万2000年以上に地球を襲った氷河期など、氷河作用のきっかけとなる条件を分析した。

太陽の周りを移動する公転軌道上の今の位置は、氷河作用開始につながり得るが、それには大気中の二酸化炭素の量が多すぎるのだという。

ポツダム気候影響研究所の研究チームは、地球では今後しばらく温暖期が続くという分析を科学誌ネイチャーに発表した。

同研究所のアンドレイ・ガノポルスキ博士はBBCニュースに対して、「理論の上では次の氷河期の開始はずっと後のことなのかもしれないが、それが5万年後なのか10万年後なのか議論しても、実際にはあまり役に立たない」と話した。

「それよりも、我々人間が地球に影響力を持つようになったことを示しているのが大事だ。人間は、何万年にもわたる自然の動きを変えることができる」

地球は地質学上「第4紀」と呼ばれる過去250万年の間に、氷河期と温暖期の周期を繰り返してきた。

この間、地球上で氷床は出現しては消えていった。前回の氷河期のピークには、北米大陸から欧州北部、ロシア、アジアのほとんどが凍りついた。南半球でも、現在のチリとアルゼンチンのかなりの部分が凍結した。

揺れる惑星

地球が氷河期に入るかどうかを決める基本的な要因は、公転軌道の変化だ。

太陽の周りを移動する地球の軌道は真円ではなく、地軸(地球が自転する際の軸)も前後に揺れる。

こうした動きによって、太陽から地上に到達する放射能の量は変化するし、北半球の中緯度帯でそれがしきい値に到達すれば、氷河作用が始まることもある。

ガノポルスキ博士をはじめとする研究チームによる実験モデルはこれを確認すると共に、大気中に大量に存在する温室効果ガスの影響も浮き彫りにしている。

研究ではさらに、おそらく数百年前に実は氷河期が始まるはずだったのが、かろうじて免れたらしいということも分かった。産業革命が本格化する直前のことだ。

「現在の地球は太陽から最も遠い場所で(北半球が)夏を迎える時期にいる」とガノポルスキ博士は説明する。「通常ならば間氷期は終わり、次の氷河期が始まるはずの時期だ。天文学上は、氷河期開始にうってつけの状況にある。(200年前の)大気中の二酸化炭素濃度が240ppm(百万分の一)だったなら氷河期の開始もあり得たが、幸いにしてそれより高い280ppmだった」。そして更なる工業化によって現在の濃度は400ppmを超えている。

速い新陳代謝

研究チームによると、仮に二酸化炭素の量が18世紀のままだったとしても、間氷期の気候は今後少なくとも2万年は続いただろうし、5万年続いた可能性もあるという。

しかし産業革命以降、大気中に排出された二酸化炭素は500ギガトン近い。そのため、氷河期開始に最適な天文学上の条件が次に揃っても氷河作用は起きないだろうし、今後さらに500ギガトン排出すれば「今後10万年の間に氷河作用が始まる可能性は相当少なくなる」と研究チームは論文で見解を示している。

その上にさらに500ギガトンを追加すれば、10万年たった後にも氷河期はおそらく始まらないだろう。

この研究論文について英ケンブリッジ大学のエリック・ウォルフ教授は、「次の氷河期開始は何万年後のことだと示唆する論文は過去にもあった。氷河期の開始を決めるのは、氷床が形成される緯度が季節ごとの太陽エネルギーをどれだけ受けるかと、二酸化炭素の組み合わせだと、これまでも言われていた。しかしこの論文はそのしきい値がどこにあるのか、数値化に向けてさらに前進している」と説明。「氷河期開始につながる太陽光の照射と二酸化炭素の組み合わせがどのレベルか、比較的簡単に推測する方法があるとあらためて分かった」と評価している。

ユニバーシティー・コレッジ・ロンドンのクリス・ラプリー教授も、「興味深い結果だ。人類の行動が惑星の新陳代謝そのものを左右する、新しい『人新世』の時代に入ったという証拠がこれでさらに得られたことになる」と補足した。

(英語記事 Carbon emissions 'postpone ice age'

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