テロ攻撃……欧米で起きたほうが注目される?

マイク・ウェンドリング、BBCトレンディング

3月19日のイスタンブール爆弾攻撃現場 Image copyright EPA
Image caption 3月19日のイスタンブール爆弾攻撃現場。ブリュッセル連続攻撃の後、欧米での攻撃の方がトルコなどでの攻撃より注目されるという意見がソーシャルメディアに流れた

テロ攻撃は欧米で起きた方が、欧米で起きたというただそれだけの理由で、ソーシャルメディア(SNS)や報道機関に注目されるのだろうか?

攻撃があるたびに、同じような展開が繰り返される。悲しいほど同じだ。テロ攻撃があるたびに何百万もの人が悲しみ、ネット上では衝撃が広がる。爆弾攻撃や銃撃の速報が伝わるや否や、いろいろなハッシュタグが次々と登場する。その町の名前や名所のイラストを使って、「Pray for ... (どこそこのために祈ろう)」と。

続けてたちまち、まだ被害者が道端や病院で実際に苦しんでいる内から、感情的な政治論争が始まる。イスラム教について、外交政策について、移民政策について。時には北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)などについても。

特にSNSでは毎回同じ批判が繰り返される。SNS利用者と伝統的な報道機関はどちらも、西欧と北米の外で起きるテロ攻撃は常に無視する――という批判だ。たとえば2015年11月のパリ連続襲撃のあと、BBC.comで最も読まれた記事のひとつは、7カ月前のケニア襲撃に関するものだった。どうやら多くの人が、自分たちの言い分の裏付けとしてこのニュースを共有していたようだ。

22日のブリュッセル攻撃の後にも、似たような発想の流れが繰り広げられた。SNS上で話題になっているのを見てネット系ニュースメディアは、「なぜブリュッセルは大事でイスタンブールは違ったのか」とか、「ブリュッセルの前にも攻撃があった……けど聞かなかったはず」などの見出しを付けたまとめ記事を掲載した。

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Image caption 「ブリュッセルの悲劇に水を差すつもりはないが、ひとつの悲劇に(正しく)反応する世界が他の悲劇に沈黙する様子は悲しい」というツイート

けれども、これは本当にそうなのか? SNSや報道機関の人間は本当に、トルコやケニアの人たちが爆弾で殺されたとき「静か」だったり「沈黙」したりしていたのか?

まずSNSを見てみよう。

22日の攻撃の後、「Pray for Brussels(ブリュッセルのために祈ろう)」や「Pray for Belgium (ベルギーのために祈ろう)」というハッシュタグは、約65万回ツイートされた。3月19日のイスタンブール爆弾攻撃の後は、「トルコのために祈ろう」や「アンカラのために祈ろう」を含めれば、同様のハッシュタグは約40万回ツイートされた(フランス語やトルコ語でのツイートも含む)。

22日の攻撃の後、「ブリュッセル」の英語名や仏語名もツイッターで600万回以上使われた。イスタンブールの攻撃の後は「トルコ」や「イスタンブール」の単語が220万回使われた。

こうした数字がいずれも、大まかな概算に過ぎないことは念頭においてもらいたい(たとえば、町や国名に言及しても攻撃には触れないツイートもたくさんある)。しかし、いくつか結論を数字から導くことはできる。数字は同じではないが、トルコについてSNSが「沈黙」していたことにはならない。

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Image caption 「あなたたちはパリだった。アンカラやイスタンブールじゃなかった。そして今のあなたたちはブリュッセルだ」というツイート

一方でニュース・メディアの報道ぶりは、SNSとは別の話で、これはなかなか興味深い。

SNSでの会話量とは別に、グーグルで英語報道を検索すると、ブリュッセル攻撃に関する記事の数はトルコでの爆弾攻撃についての記事よりもはるかに多い。BBCトレンディングがざっと計算したところ、グーグル・ニュースが過去1カ月に取得した記事に「Istanbul attack(イスタンブール攻撃)」という表現が登場するのは10万回未満。一方で「Brussels attack(ブリュッセル攻撃)」という表現は1400万回ヒットした。3月13日のアンカラ爆弾攻撃にように死傷者数がほぼ同数の惨事と比べても、「アンカラ攻撃(Ankara attack)」という表現は200万ヒットに留まった。

ニュース記事の調査手法としてこれは不完全なものだ。けれども英語ニュースサイトの編集者たち、特にそのほとんどが欧州や北米にいるのだろう編集者たちはもっぱら、トルコの爆弾攻撃よりもブリュッセル攻撃の方が読者には関心が高いニュースだろうと判断した様子だ。

SNSがニュースの世界をいかに塗り替えているか、論評は尽きない。そしてそのほとんどは正しい。フェイスブックやツイッターはニュース業界を塗り替えたし、人がニュースを観たり読んだりする方法を大きく変えた。以前なら見逃したかもしれないニュースがSNSでいかに大きく注目されるかを知って、記者たちはSNSの反応に敏感になったし、SNSは取材する側にとって新しい情報源や調査手段となった。

けれども報道機関の報道の形はいまだに編集者と、編集者のニュース判断が決める。日々の報道の中でどのニュースを大きく扱うべきか選ぶのは、編集者だ。そして編集者のそうした判断は、SNSで何が人気かどうかと必ずしも一致していないのだ。

(英語記事 Do terror attacks in the Western world get more attention than others?

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