なぜ2016年に有名人が次々と亡くなるのか

ローランド・ヒューズ記者

2010年10月、ニューヨークのアポロ・シアターで Image copyright Reuters
Image caption プリンスは4月21日、57歳で亡くなった。写真は2010年10月、ニューヨークのアポロ・シアターで。

年が改まってまだ4カ月にしかならないが、2016年はすでに暗い、暗い年になりつつある。

有名人の訃報がないまま1週間が過ぎる方が珍しいような気さえする。1月の第2週にデイビッド・ボウイが亡くなり、その翌週には俳優アラン・リックマンが亡くなった。最近では英国の人気コメディアン、ビクトリア・ウッドが急逝したと思ったら、今度はプリンスだ。(文中敬称略)

「2016年、もうたくさんだ」。あるいはもっと下品な表現で、人々は繰り返し、しかも定期的に、2016年を罵倒している。では、有名人の訃報がこうして続く現象は、今後普通のことになっていくのだろうか。

こうしたことに詳しいはずのBBC訃報担当編集長ニック・サーペルによると、答えは「イエス」だ。

有名人の訃報の数は今年に入って、「とてつもなく」増えているとニックは言う。

基本的な数字を見ると、はっきりと上昇傾向にあるのが分かる。有名人の死亡が確認されるとBBCのテレビ、ラジオ、オンラインに流れる訃報を用意するのが、ニックの仕事だ。

ニックが用意してBBCの各媒体が使う訃報の数は、近年かなり増えてきた。

BBCが伝えた訃報の数(1月1日~3月31日の期間で比較)

例年の1月1日から3月31日にかけての訃報の数を比較すると、2012年にはわずか5件だったものが、今年は24件というとんでもない数に増えている。ほぼ5倍だ。しかも4月に入って亡くなった、米国人歌手マール・ハガードや元麻薬密輸人ハワード・マークス、そして今週亡くなったビクトリア・ウッドとプリンスは、この数に含まれていないのだ。

それとも、単にBBCが作成する訃報の数が増えたから、実際に報道される数も増えているということはないのか。

確かにニックが10年前に今の仕事を始めた時よりも、訃報の数は増えている。これまでの蓄積は1500件で、毎週数件ずつ増えていく。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
プリンスさん急死 世界に衝撃走る
お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
ファンや音楽界、アートの世界に多大な影響を与えたプリンスさんのヒットをいくつか振り返る。

しかし他社の報道を見ても、結論は一緒だ。

ここ英国では日刊紙デイリー・テレグラフが、亡くなった文化系著名人の写真ギャラリーを作成し、更新し続けている。2014年のこの時期、その年のギャラリーには38人の写真が並んでいた。昨年のこの時期は30人だった。しかし今年は、すでに75人に達している。

毎年の年初には「deathlist.net」という(かなり縁起でもない)サイトが、その年に死去するかもしれない有名人の名簿を掲載する。死を予言された人が4月のこの時期までに実際何人亡くなっていたかを見ると、過去10年のうち6年は、2人以下だった。しかし今年は、名前を挙げられた5人がすでに死亡している。

こうやって次々と挙げていくと、「どうして?」という疑問が湧いてくる。

理由はいくつかあると、ニック・サーペルは言う。

「1960年代から有名になり始めた人たちが、いま70歳代に差し掛かり、死に始めている」とニックは指摘する。「それに昔に比べて有名人が増えている。私の父や祖父の時代には、本当に有名だと言える人たちは映画俳優だけだった。テレビがなかったので。その後には、テレビに出ていないと有名人とは言えない時代が続いた」。

ベビーブームの影響

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
デイビッド・ボウイ追悼 変身と挑戦を振り返る 

寿命を迎えつつある人の多くは、人口が一気に急増した1946年から1964年の間に生まれた、いわゆるベビーブーマー世代だ。たとえば米国の国勢調査局によると、2014年には7600万人のベビーブーマーがいた。人口の23%だ。

ここ英国では、65歳以上が人口の18%近くを占める。40年前に比べると47%の増加だ。

ベビーブーマー世代の赤ちゃんが大勢生まれたということは、その中から大勢がやがて有名になったということだ。そしてその有名になった赤ちゃんたちは今では52歳から70歳となり、亡くなり始めているのだ。

たとえば英国では65歳~69歳になると、死亡率が本格的に増え始める。2014年にはその年齢層の男性1000人あたり14.2人が死亡した。対照的に60歳~64歳の男性の死亡率は1000人あたり9.4人にとどまった。

今年に入って亡くなった有名人の多くは、ベビーブーム世代だった。プリンス(57)、アラン・リックマン(69)、デイビッド・ボウイ(69)、ビクトリア・ウッド(62)はいずれもそうだ。

そもそも有名人とは

最近やたらと有名人が亡くなると感じるもうひとつの理由は、昔より多くの有名人を知っているからかもしれない。

「10年前からソーシャルメディアの影響が大きい」とニック・サーペルは言う。

プリンスの訃報が発表される数時間前には、アメリカの元プロレスラーでポルノスター、チャイナさん(45)が亡くなったと明らかになり、多くの人が追悼の言葉をソーシャルメディアに投稿していた。その死に言及するツイートはアメリカ発に限定されず、「Chyna」という名前を含む21日のツイートは40万件に上り、ナイジェリア・ラゴスやペルー・リマといった地域での関心も高かった。

誰かの訃報をこれほど簡単に知ることができるようになったのは、かつてないことだ。

Image caption アラン・リックマンは50年にわたりテレビ、映画、舞台からラジオまで幅広く活躍した

まだ続くのか

悪い知らせが? 「イエス」だ。たぶん。「今後10年の間に、ベビーブーム世代の有名人は80代になる。訃報は今のペースで続くだろう」とニック・サーペルは言う。

「しかもそのほかに、まだ死ぬには早すぎる人たちが死ぬ、予想外の急死がある」

ニックは毎年、年末のBBCニュース用に、その年1年に亡くなった人たちを振り返るコーナーをまとめる。これまではずっと30分のコーナーだったが、今年は早くも延長が決まった。すでに今の時点で、1時間にしても良いと言われているそうだ。

(英語記事 Why so many celebrities have died in 2016

この話題についてさらに読む