【米大統領選2016】なぜ私たちはクリントン氏に熱狂できないのか

キャティ・ケイ、キャスター(BBCワールド・ニュース)

「クリントン候補」は過去9年続いてきた(6日、カリフォルニア州で) Image copyright Reuters
Image caption 「クリントン候補」は過去9年続いてきた(6日、カリフォルニア州で)

ここまで来るのでさえ227年かかった。

1789年、独立したばかりのアメリカ合衆国の大統領にジョージ・ワシントンが就任した。その後、男性が42人(しかも41人は白人だ)続いた後に、ヒラリー・クリントンが初の主要政党の女性候補ととして新たな歴史を作ろうとしている。(文中一部敬称略)

なのに、なぜ私はもっと興奮していないのか。

政治はひとまず脇に置こう。政治的な傾向が何であれ、女性にとって、どう考えても大きな節目だ。ヒラリー・クリントン氏は「マダム・プレジデント」(訳注:大統領に対する呼びかけとして「ミスター・プレジデント」がよく使われる)と呼ばれる可能性があるのだ。世界で一番権力のある仕事に女性が就いたことは過去にない。

ビジネスや報道、法曹界、医療もしくは軍隊だけでなく、政治の世界でも、より多くの女性が高い地位に就けば、世界はもっと良くなると、そう信じているのなら、女性が米国のトップだったことがないのは、注目に値する。

ヒラリー・クリントンが大好きだろうが大嫌いだろうが、彼女が共和党だとしても民主党だとしても、リベラルだろうが保守だろうが、彼女は女性で、それ自体が大変なことだ。もちろん、それだけで投票する理由にはならない。しかし、いま立ち止まって考えてみるには、理由として十分だ。

もうずいぶん長いこと続いている話だというのも、熱気不足の理由かもしれない。

2007年1月20日にヒラリー・クリントンが最初に大統領選への立候補を表明した日以来、私たちは「大統領として初めて現実味のある女性候補」という物語を何度も書き直してきたとも言える。

私たちは疲れ果てている。感嘆する言葉を使い果たしてしまったのだ。元ファーストレディで上院議員で国務長官だった彼女の人生はつぶさに記録されてきたし、使えるエピソードを私たちは使い尽くしてしまった。女性の大統領は新しい。クリントンは新しくない。

多くの有権者が興奮していないのもそのせいかもしれない。ここ数週間ほど米国の女性たちから話を聞いたが、クリントン候補について特に若い女性たちがみんなして「別に……」という風に肩をすぼめたのは、特筆に値する。

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Image caption ビクトリア英女王から送られた米大統領執務室の机。そろそろ女性が使ってもいいのでは?

「古い話だし」「年寄りなだけ」「お堅い」「ただの普通の政治家」「昔からずっとい過ぎ」「共感できない」――。

もちろん、女性みんながそう言っているわけでは全くない。世論調査では、女性はドナルド・トランプよりもヒラリー・クリントンを支持している。しかし、あの有名な大統領執務室の机の向こう側に女性が座ることに、実に多くの若い女性がろくに興奮していないのは、本当に驚くべきことだ。

なにしろ、1880年にあの机を贈ったのはビクトリア英女王なのだし、そろそろ女性のリーダーが使う時ではないのか。

しかし、現在の20代女性は、自分が生きている間に女性の大統領が誕生すると確信している。それはフェミニストにとって朗報だし、私の世代の女性とは大きく違う。

ただし、ヒラリーにその女性大統領になってほしいのか、あるいはヒラリーがなるべきかというと、確信がもてないのだ。若い彼女たちには時間がある。それに対して50歳以上の女性たちは違う。初の女性大統領誕生について中高年女性は、若い女性にはあるはずのない切迫感を抱いている。

しかし、確実にヒラリーに投票するという女性の中でさえ、ヒラリー陣営に必ず献金する一部の女性の間でさえも、どうして今の自分はもっと興奮していないのか、残念だという悔恨に近い気持ちを耳にする。

断絶

2008年の大統領選挙では、初の女性候補への興奮があった。しかし今回、予備選でクリントン氏に投票し本選でも投票すると言う女性が何人も、ため息をつかんばかりに「もっと興奮できればいいんだけれど」と私に語ったのには驚いた。

そして、ただ単に彼女が嫌い、あるいはその政策や主張すべてが嫌い、という女性たちがいる。確かに共和党支持者の間では男女を問わず、クリントンを強く嫌う人は多い。

クリントン支持者の多くは、ヒラリー・クリントンが手堅く、有能で信頼できる大統領になると強く確信している。その一方で多くの人が、クリントン候補についてかなりの倦怠感のようなものを感じている。今のところ、信頼と倦怠感との間に断絶があるのだ。

クリントン氏の指名獲得がほぼ確実となり、トランプ氏が対立候補となった今、状況は変わる可能性も十分ある。一対一の対決になれば、クリントン候補への熱意が高まるかもしれない。しかし、その反対もあり得る。

近い将来のいつか、女性が大統領候補になったことについて、わざわざ記事にしなくてもいい日が来てほしい。

民主党だろうが共和党だろうが、女性の候補、あるいは女性大統領でさえあまりに当たり前で、ニュースにもならなくなる時代。それこそが本当の進歩だ。いつかそう遠くない日に、そうなるといい。

(英語記事 Why aren't we more excited about Clinton?

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