危機に直面する韓国大統領 背後の友人関係とは?

野党は朴氏が崔氏の操り人形になっていると批判している Image copyright AFP
Image caption 野党は朴氏が崔氏の操り人形になっていると批判している

韓国のメディアは、朴槿恵(パク・クネ)大統領の新興宗教との関わりや、旧来の友人が大統領に対して持つ秘密めいた影響力をめぐる疑惑について、盛んに報じている。スキャンダルの登場人物や、これが大統領退陣につながる可能性について、BBCのソウル特派員、スティーブン・エバンズが解説する。

政治的な嵐の渦中にいる2人の女性、大統領とその親友、崔順実(チェ・スンシル)氏の間の力関係について、本当のところを知るのは本人たちだけだ。しかし、2人とも互いの関係について何も語っていない。

大統領との交友関係を使って金銭的な利益を得たとの疑いが掛けられているチェ氏は、先月31日に検察に出頭した。

わずかな情報しかないなか、うわさがますます、かまびすしくなっている。新聞やテレビは競って憶測を伝え、40年前から続く2人の謎めいた関係について、より大胆な推測を述べている。

大統領を助言してきたとされるチェ氏は、韓国のラスプーチンと呼ばれた彼女の父親、崔太敏(チェ・テミン氏)と同じような悪影響を及ぼす人物だったのか、それとも単なる友人だったのか。

孤独な任務

朴大統領も崔氏も人々の好奇心をそそる人物だ。

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Image caption 独身で近しい家族のいない朴氏は友人に頼るようになった

朴大統領の父親、故・朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は、軍事クーデターで独裁政権を打ち立てたが、のちに工業化した現代民主国家となる必要性を認めた。負の側面もあったにしろ、彼は現代韓国の生みの親だ。

朴正熙氏は1979年に、側近だった韓国中央情報部(KCIA)のトップにによって暗殺された。致命傷となった銃弾を撃ち込んだ金載圭(キム・ジェギュ)KCIA部長は、大統領が新興宗教の創始者崔太敏氏の言いなりだと考えていた。

崔太敏氏は、今スキャンダルの渦中にある崔氏の父親だ。

朴大統領暗殺の5年前、大統領の妻で現在の朴大統領の母親も、ソウル中心部で北朝鮮同調者による凶弾に倒れ、死亡している。

欧州留学中だった朴氏は急遽(きゅうきょ)帰国。父親が出席する公式行事に同伴するようになり、実質的なファースト・レディとしての役割を果たすようになった。

両親を2人とも政治的暴力で失った朴氏は、自らの意思で政治の道を歩み始めた。しかしその彼女自身も刃物で襲われ、頬を60針縫う大けがを負った。朴氏の右耳下から顎にかけて細長い傷がいまでも残っている。

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Image caption 暴漢に襲われたけがの治療を終え退院した際に支持者の前で語るパク氏(2006年5月)

非常に特殊な経験を経て大統領になった朴氏は独身で、近しい家族に頼ることもなく、青瓦台と呼ばれる大統領府で、ただでさえ厳しく孤独な任務に就いている。

そのため朴氏は崔氏に頼るようになったのか。

謎めいた助言者

崔氏の父親の崔太敏氏はおもしろい経歴の持ち主だ。現地メディアによると結婚歴は6回。自らの名前を頻繁に変えているという。

もともと仏教徒だったが、キリスト教に改宗し、新興宗教団体「大韓救国宣教会」を創設した。その立場で当時の朴正熙大統領、そして娘で現在の大統領パク氏の知遇を得た。若き日の朴氏と崔太敏氏の娘チェ氏は友人同士になった。

それから40年、2人の友人関係が人々の厳しい視線にさらされている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、崔太敏氏は朴氏に対し、殺された朴氏の母親が夢に現れ、娘を助けてほしい、と懇願したと話し、朴氏の心をつかんだという。

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Image caption スキャンダルでは数十年にわたる朴氏の友人関係が焦点になっている

しかし、この一風変わった関係が広く知られるようなったのはこれが初めてではない。

告発サイト「ウィキリークス」は、2007年の米外交電で「朴氏は、反対派が『韓国のラスプーチン』と呼ぶ牧師、崔太敏氏との約35年前のつながりや、母親の暗殺後、ファーストレディとして青瓦台にいた当時、崔氏のどのような影響下にあったのかを含む、自身の過去について説明しなくてはならなかった」と述べられていたと暴露している。

この秘密めいた助言者をめぐる疑惑が、今の朴大統領に対する政治的逆風の原因になっている。

検察当局は崔氏が作った財団に違法性がないか調べている。大統領とのつながりをちらつかせながら、財団に寄付をするよう企業に圧力をかけていたのではないかという疑いがかけられている。

真偽のほどは分からない。しかし、韓国ではこれまで、汚職による政治家の失脚はほとんどなかった。

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Image caption 朴大統領への抗議デモが首都ソウルで繰り返し開かれている(先月29日)

しかし今回の一件は、政治家として致命的になり得る。機密情報を含む書類を大統領が助言者に渡し、承認を求めていたという疑惑があるからだ。

韓国のケーブルテレビ局は、崔氏が以前使っていた事務所で見つかったコンピューターのハードドライブに、朴大統領が崔氏に演説原稿の変更と承認を求めた証拠があったと報道している。

朴大統領はすでに謝罪しているが、何についてなのかは明確ではない。テレビカメラの前で朴氏は頭を下げ、「理由は何であったにしろ、スキャンダルが国家に懸念をもたらしたことを申し訳なく思うし、国民に謙虚に謝罪する」と語った。

朴氏は、「崔氏は、演説原稿の表現や、前回の選挙の広報活動について助言をしてくれた。就任後もしばらく支援してくれた」と述べ、崔氏の関与を認めた。

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Image caption 謝罪する朴大統領(先月27日)

朴氏は、崔氏の助言は、自分が青瓦台入りし、正式な顧問を得る前までの期間のみだったと主張している。

しかし、謝罪には野党だけでなく、与党の一部も満足しておらず、怒りはまだ収まっていないようだ。

(英語記事 Park Geun-hye and the friendship behind S Korea's presidential crisis

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