【米大統領選2016】敗れたクリントン氏の得票数、オバマ氏除き史上最多か

クリントン氏は過去のどの白人候補よりも多くの票を獲得し、敗れた。写真は敗北宣言後のクリントン氏(11月9日) Image copyright Getty Images
Image caption クリントン氏は過去のどの白人候補よりも多くの票を獲得し、敗れた。写真は敗北宣言後のクリントン氏(11月9日)

ドナルド・トランプ次期米大統領の政権移行作業が進むなか、ヒラリー・クリントン氏が静かに、歴史的な記録を達成したようだ。大統領選の郵送や在外投票の開票も進み、クリントン氏が2008年のバラク・オバマ氏を除く過去のどの候補よりも、多く得票していたことが明らかになった。米国立公文書記録管理局と超党派の選挙分析サイト「クック・ポリティカル・レポート」のデータから判明した。

最新の開票結果によると、クリントン氏の得票数は2012年に再選されたオバマ大統領を超えた。トランプ氏に対しては、260万票以上、上回っている(得票率はトランプ氏の46%に対して48%)。

米大統領候補が全体の得票数では勝りながらも、必要な選挙人270人を獲得できずに選挙に敗れた例は過去5人。クリントン氏の得票数はその中でも特に大差をつけて、当選候補を上回っている。

<近年の米大統領選での得票数>

・2008年のオバマ氏が最多。クリントン氏はそれに続き、2012年のオバマ氏を上回った。

・2000年にはゴア氏がブッシュ氏を約54万票上回った。クリントン氏は現在、トランプ氏を260万票以上、上回っている。

○ それは有権者が増えたからでは?

過去100年の間に米国の人口は劇的に増えた。以前の候補よりもクリントン氏が多く得票した理由は、部分的にはこの人口増によって説明できる。

米国は今年、登録有権者の人数が史上初めて2億人を超えた

なので単純に得票数を強調するよりも、その数の意味合いを説明した方が理解の助けになるかもしれない。

クリントン氏は現在、得票数でトランプ氏を260万票以上上回っている。これに対して2004年にブッシュ大統領は、民主党候補ジョン・ケリー氏に300万票差をつけて再選を果たした。

またロナルド・レーガン大統領は1984年に18%差で再選されている。

もっともブッシュ氏の場合もレーガン氏の場合も、それだけの差をつけて敗れたのではなく、勝ったわけだが。

候補が全体の得票数では勝りながらも落選したもっとも最近のケースは2000年。ブッシュ氏の得票数はゴア氏を約54万票下回ったが、それでも当選した。

この16年間の人口増を加味したとして、クリントン氏の得票数はどういう位置づけになるだろう。

スタンフォード大学の政治アナリスト、デイビッド・ブレイディー氏によると、選挙権年齢の人口比で比べると、2004年の投票率は今年よりも1.7%高かったことになる。

選挙権のある年齢の人口における投票率が2004年並みだったなら、今年の投票者数は実際より約200万人以上、多かったはずだったという。

○ 実際の影響は?

トランプ氏はすでに、必要な選挙人270人を超えて306人を確保している。対するクリントン氏の選挙人は232人だ。つまり、緑の党の候補だったジル・スタイン氏がミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア各州で再集計を求めているものの、それがどうなっても選挙人団の投票結果にはおそらく影響はない。

スタンフォード大学のブレイディー氏は、1960年のメジャーリーグ・ワールドシリーズにたとえる。当時、ピッツバーグ・パイレーツの合計得点24点に対してニューヨーク・ヤンキースは合計55得点した。それでも、シリーズを4勝3敗で優勝したのは、パイレーツだった。

「(クリントン氏は)必要なだけの州で勝てなかったから、ワールド・シリーズで敗れるわけだ」とブレイディー氏。

スタンフォード大フーバー研究所の上級研究員ビル・ウェイレン氏は、クリントン氏の得票数が必要な選挙人数の獲得につながらなかったのは、その票がそもそも民主党地盤のカリフォルニア、ニューヨーク、イリノイ、マサチューセッツといった各州に集中しているからだと説明する。

「米国の人口変動がどこで起きているのかを反映している。増えている人口は、東西両岸に特に集中している」

全体の得票数によって選挙結果が変わることはない。しかし、「クリントン氏が民主党支持基盤を動員できなかった」という説への反論材料にはなるし、クリントン支持者の溜飲はこれである程度は下ることだろう。

実際のところ、結果を左右する一部の激戦州でトランプ氏とクリントン氏の票差は、独立系候補スタイン氏の得票数よりも小さかった。ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの3州で僅差で勝ったことで、トランプ氏は当選したわけだが、3州でスタイン氏が得た票がすべてクリントン氏に行っていれば、結果は違ったものになっていた。

しかし3州およびミネソタ州の有権者動向をブレイディー氏が分析した結果、クリントン氏が得票率7割以上で勝った地区では、人口は増えたものの投票率は下がっていたことが分かった。

その逆に、トランプ氏が得票率7割以上で勝った地区では、人口は減少したものの投票率は上昇。つまり、2008年や2012年のオバマ氏に比べると、勝敗の鍵となる地区の有権者はクリントン氏についてあまり盛り上がらなかったことが分かる。

○ トランプ氏は信任を得ているのか?

クリントン氏が得票数で勝ったため、一部の民主党関係者はことさらに苦い思いをしている。トランプ氏はクリントン氏が得た支持の多さを無視し、国民の信任を得ていないのに統治しようとしている――というのが、その言い分だ。

マイク・ペンス次期副大統領や、共和党全国委員会委員長でトランプ政権の首席補佐官となるラインス・プリーバス氏は、トランプ氏の勝利は「地滑り的」な圧勝だったと自慢している。

しかしウェイレン氏は、「厳密に言えば、トランプ氏が信任を得ているとは言えない」と述べ、2008年に得票数でも勝り選挙人365人を獲得したオバマ氏でさえ、国民全体の信任を得たとは主張しなかったと指摘する。

それでもウェイレン氏は、知的もしくは感情的な意味ではトランプ氏は信任を得たと主張しても良いはずだと言う。

トランプ氏は、既存の政治や社会の仕組みを拒否する人たちの主張を取り込んで選挙戦を展開していたが、それでも相当数の米国人がクリントン氏に投票した。

「ただでさえ今回の選挙に否定的な感情が強いなかで、(クリントン氏が)総得票数で勝っても選挙に負けたという展開は、負の感情を募らせるだけで問題だ」とウェイレン氏は言う。

(取材: コートニー・スブラマニアン)

(英語記事 Did Clinton win more votes than any white man in history?

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