『君の名は。』が中国でも大ヒット その理由は

『君の名は。』が中国でも大ヒット Image copyright ©2016 YNFP
Image caption 『君の名は。』が中国でも大ヒット

日本のアニメ映画『君の名は。』が、日本だけでなく中国でも大ヒットしている。中国で最も成功した日本映画の記録を塗り替えた、その理由は何なのか。

有名なハリウッドスターや高額なスタントを使っているわけではないものの、12月初めの公開以来、興行収入は7800万ドル (約91億円)近くに達した。

なぜこれほど好調なのか? BBCのアシュリー・ニーム記者が探った。

現実逃避を求める中国ファンを魅了

新海誠監督(43)原作の『君の名は。』は、体が入れ替わる10代の男女2人の恋愛を描いている。

悲運の若きカップルがすれ違う幻想的なドラマが、中国の観客の想像力を掻き立てた。

その証拠に、中国の映画評価サイトの猫眼電影では、レビューの平均値が10点満点中、9.3点になっている。

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映画ファンの1人、テイラーさんは「言葉にならないほど美しい映画で、ひとつひとつのショットがまるで絵画のようだった」と評価している。

しかしささやかな現実逃避を求める中国の若者たちには、ファンタジーの要素がアピールしたのかもしれない。

「この映画を見たら、自分が若かった頃の青春時代が恋しくなって、本当に心が動かされた」という感想もあった。

タイミングがすべて

中国の映画専門家たちは、『君の名は。』がちょうど良いタイミングで若い中国人の琴線に触れたと考えている。

「映画ブームをけん引している、いわゆる『ポスト90』と呼ばれる1990年代生まれ、可処分所得が一番大きいこの層をターゲットにした恋愛物語だ」。情報サイト「チャイナ・フィルム・インサイダー」のアナリスト、ジョナサン・パピシュ氏はこう分析する。

さらにパピシュ氏は、「中国で人気が高まりつつある若年層のサブカルチャー、ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、小説)にもちょうど当てはまる」と言う。

2億人の若い消費者のおかげで、中国の若年層向けエンターテインメント市場は急速に拡大している。中国の投資銀行、中信証券によると、市場規模は今後数年のうちに、5000億元(約8兆43000億円)に倍増する見込みだという。

今の中国は今までになくハリウッドへの出資を拡大しているが(映画スタジオから映画館まで、大連万逹があらゆるものに投資しているように)、それと同時に、ハリウッド以外のプロデューサーによる映画をもっと受け入れられる状態にまで、中国市場は熟してきたとパピシュ氏は言う。

中国の消費者は、ファッション、旅行先、購買習慣において国際的なテイストを求めている。ならば、映画市場もこれに違わない理由はない――というのが、パピシュ氏の見解だ。

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Image caption 悲運の若きカップルがすれ違う幻想的なドラマが、中国の観客の想像力を掻き立てた

一度きりの現象なのか

『君の名は。』は7800万ドル近い興行収入を上げ、『STAND BY ME ドラえもん』に代わり中国での日本映画の興行収入歴代1位となった。

アニメ・クリエーターにとって、これは氷山の一角に過ぎないかもしれない。

日本動画協会によると、日本アニメの海外での興行収入は昨年、3億ドル弱(約352億円)と80%近く急増した。ただし、増加分のうち中国が占める割合は不明だ。

ただし、ひとつはっきりしている。成功は、保証されているわけではないのだ。

「日本アニメは中国でよく知られていて、人気もあります。でもすべての映画がヒットするわけではありません」と話すのは、アジア映画コンサルティング会社のアーティザン・ゲートウェイで最高責任者を務めるランス・パウ氏だ。

今年中国で公開された日本映画11本のうち9本がアニメ作品だったが、チケットの売り上げが2000万ドル(約23億4000万円)を超えたのは3作品だけだった。

パウ氏は、ファン層を確立した有名な日本のシリーズ作品なら、そのキャラクターを色々と見ながら育ったミレニアル世代を中心に、好成績を収めるだろうと言う。

しかしそれでも、中国での日本映画の売り上げは、ほとんどのハリウッド大ヒット作に大きく遅れを取っている。

チケット売り上げで比較すると、『ワイルド・スピード SKY MISSION』が3億5000万ドル(約410億円)超、『トランスフォーマー/ロストエイジ』が2億8600万ドル(約335億円)、『ズートピア』が2億2100万ドル(約260億円)だった。

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Image caption 新海誠監督

今やアニメのゴールは海外市場?

『君の名は。』の大ヒットは中国に限ったことではない。先ごろは第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞でアニメ映画賞を受賞し、米アカデミー賞のノミネートも検討されている。

しかし『君の名は。』のプロデューサーはBBCに対して、今後も一番に意識するのは日本市場だと話した。

配給会社・東宝の川村元気氏は、「日本では通常、ビジネスは国内で完結してしまうので、ビジネスの観点から海外に出ていかなければ、という考えはなかった」と話す。

「けれども吹き替えのおかげで言葉の壁を乗り越えられたし、アニメなら、大掛かりなセットやロケ地を使わなくても広い世界を表現して、もっと幅広い海外の観客に訴えかけられる」

日本のアニメ業界にとって、海外での成功はますます重要な収入源となりそうだ。

アニメは日本の若者に共感されているが、日本の観客が歳を取るにつれてやがてアニメを好まなくなる可能性がある。

「2025年には、日本の人口の4分の1以上が65歳以上になる。日本の出生率は、ドイツや経済協力開発機構(OECD)全加盟国の平均値より低いのが現状だ」と静岡大学経営情報学科の竹下誠二郎教授は指摘する。

「こうしたことをひっくるめると、日本企業にとっては、新規需要を作り出すために海外進出を考え始める方が得策でしょう」

(英語記事 Why is Japanese anime getting big in China?

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