米国の移民・難民入国制限、なぜこの7カ国? 政府説明と実際のデータ

ジャック・グッドマン、BBCニュース

President Donald Trump is seen through a window speaking on the phone with King of Saudi Arabia Image copyright Mark Wilson/Getty Images

ドナルド・トランプ米大統領は27日、特定7カ国の国民の米国入国を90日間禁止する大統領令に署名した。イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの7カ国だ。

シリア難民など難民の受け入れも制限する多岐にわたる入国制限は、オバマ政権下ですでにあった規制を参考に、策定されたものとみられる。特定7カ国は、共和党多数の連邦議会が2015年に可決した査証(ビザ)制度改革法案の中に、「懸念対象国」として挙げられていた。

米国のビザ免除プログラムは、38カ国の国民に対して90日間の無査証入国を認める。日本や英国、フランス、ドイツなどが含まれ、渡航者は電子渡航認証システム(ESTA)を使い事前申請する。

2015年12月に連邦議会は超党派の議員立法で、この制度を変更する法案を可決。ホワイトハウスもこれを支持し、署名成立させた。2011年3月以降に特定の国々に渡航したことのがある人は、ESTAによるビザ免除が適用されなくなった。国内でテロ組織が大きな影響を及ぼしている、もしくはテロリストをかくまっていると見なされた国が対象となった。

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Image caption 大統領令に対する抗議が米国各地で相次いだ。写真はフロリダ州のマイアミ国際空港で

法律で当初指定されたイラン、イラク、シリア、スーダンに加え、2016年2月にはリビア、ソマリア、イエメンも対象となった。この同じ計7カ国が、トランプ氏の大統領令でも規制対象となった。

新しい制度では、2011年3月以降にこの7カ国に渡航した人は、ビザを事前に申請し、認められないと、米国に入国できなくなった。

オバマ政権がこの制度変更を承認したのは、2015年11月のパリ連続襲撃事件を受けての対応だった。規制対象がきわめて幅広いトランプ氏の大統領令と異なり、オバマ政権の措置は、そもそも90日間の短期滞在のためのビザ免除プログラムに該当する人に限定されていた。7カ国の国籍者の入国をすべて一時停止するという措置ではなかった。

トランプ大統領は29日、自分の政策は「イラク難民へのビザを禁止した」オバマ氏の命令に「似ている」と表明した。

これは、2011年5月の出来事を念頭においた言及だった。米連邦捜査局(FBI)は当時、連邦法にもとづきイラク市民2人をテロ容疑で逮捕。2人は、過激派アルカイダを具体的に支援し、イラク国内における米軍への攻撃に関与したとして、起訴された。有罪判決を受け、現在も服役中。

下院対テロ・情報小委員会は公聴会で、この2人が「イラク難民受け入れの特別プログラム」を悪用したと指摘。イラク難民の審査方法があらためて点検されることとなり、同年のイラク難民受け入れ人数は前年の1万8016人から9388人に一時的に減少した。翌年の受け入れは1万2163人と増えた。

この7カ国の市民が最も危険なのか?

トランプ氏の大統領命令は、2001年9月11日の米同時多発テロ以来、外国生まれの人物たちが「多数の」テロ関連犯罪を起こしてきたと主張している。大統領令は、この中にはビザで入国した人や難民受け入れプログラムで入国した人も含まれると主張する。

米同時多発テロの実行犯たちは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)、レバノン、そしてエジプトの出身だった。

下院の国土安全保障委員会は2015年9月、いわゆる「イスラム国」(IS)が西側諸国で60件のテロ計画やテロ攻撃を指揮、もしくはそのきっかけを作ったと報告。60件の中には、米国内での15件も含まれる。イスラム過激派組織に加わったことが確認されている米国市民は、250人。

米ジャーナリストや学識関係者が参加するシンクタンク「ニュー・アメリカ財団」によると、イスラム聖戦主義攻撃に関与した、あるいはそうした攻撃の実行者として死亡したテロ犯の米国在住資格は次の通り――。

・全体の82%は米国籍か永住権を保有

・188人は米国生まれ

・83人は米国籍に帰化した市民

・43人は永住権を持つ市民

・13人は難民

・12人は在住資格不明

・11人は非移民ビザで入国

・8人は不法移民

・38人は不明

近年の米国内で起きた重大な無差別大量殺人事件の犯人はいずれも、入国制限対象の7カ国の市民ではなかった。一部の例を挙げると――。

・フォートローダデール空港乱射(2017年1月)――米国市民

・フロリダ州オーランドのナイトクラブ乱射事件(2016年6月)――アフガニスタン人の両親をもつ米国市民

・カリフォルニア州サンバーナディーノ乱射事件(2015年12月)――パキスタン人の両親をもつ米国市民とパキスタン市民

・テネシー州チャタヌーガ乱射事件(2015年7月)――クウェート生まれの米国市民

・サウスカロライナ州チャールストン教会乱射事件(2015年6月)――米国市民

・ボストン・マラソン爆破事件(2013年4月)――チェチェン系の兄弟。兄はロシアとキルギス国籍で米国永住権を所持。弟は米国市民権を得ていた。

財団のまとめによると、2001年以降に米国内で起きたテロ事件の82%は、市民や永住権のある住民が起こした。同時多発テロ以来、イスラム聖戦主義者によって米国内で殺害されたのは94人。

対象7カ国のうち2カ国の国民が、傷害事件に関わった事例はある。

米シンクタンク「ケイトー研究所」の調査は、米国内で米国人が外国人によるテロ攻撃で殺害される可能性よりも、テロではない殺人事件で殺される可能性の方が253倍高いと指摘している。

共和党のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)とリンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、大統領令がイスラム教圏にどう受け止められるかを強く懸念し、「この国をもっと安全にするよりも、むしろテロリストの募集に役立つかもしれない」と苦言した。

しかしトランプ大統領はこの批判を受け入れず、取材に対して米国の敵はすでに怒っているのだからと反論。自分の第一の責任は国の安全を守ることだと強調した。

そしてトランプ氏の支持者たちも全面的に賛成している。

「ドナルド・トランプはこれは一時的なものだと言っているし、私はあの人を信用している」と、ニューヨーク・スタテン島の住民は言う。「第一の仕事は米国民を守ることだ」。

(英語記事 US travel ban: Why these seven countries?

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