レディー・ガガのスーパーボウル・ショー 政治性は?

ローランド・ヒューズ、BBCニュース(ワシントン)

米スーパーボウルのハーフタイム・ショーで熱唱するレディー・ガガ(5日、テキサス州ヒューストンのNRGスタジアム) Image copyright Getty Images
Image caption 米スーパーボウルのハーフタイム・ショーで熱唱するレディー・ガガ(5日、テキサス州ヒューストンのNRGスタジアム)

まず最初に。レディー・ガガは無事なのか? マイクを放り投げ、飛んでくるフットボールをつかみ、深い穴に飛び込んだように見えたのだが。それが最後の姿だったのだが。

それが、13分間のめまぐるしくも激しいショーの締めくくりだった。米テキサス州ヒューストンのスタジアムの屋上に登場したレディー・ガガは、おもむろに場内に飛び降りて、空中を数キロ走って宙乗りのアクロバットも披露した。何もかも歌いながら。しかも衣装転換さえやってのけた。なかなか悪くない。

レディー・ガガは見事にやってのけたというのが、大方の評価だ。アメリカンフットボールのファンにとっての最大イベント、スーパーボウルのハーフタイム・ショーで。

この成功によって、レディー・ガガはローリングストーンズやマイケル・ジャクソン、ビヨンセなどの大物と肩を並べることになる(ビヨンセについては後述する)。

しかし試合前にはひとつのことが、さかんに取り沙汰されていた。つまり、どれほど政治的なショーになるのかという。

政治性はどの程度?

以前のレディー・ガガは自分にとって大事なテーマについて、臆することなく発言してきた。性的少数者(LGBTQ)についてはことさらに。

ドナルド・トランプ米大統領の就任から2週間しかたっていない。しかも新大統領は、LGBTQの権利を縮小する大統領令を準備しているという報道もある。

昨年のスーパーボウルではビヨンセが黒人の権利闘争を描き、黒人の人権を主張する、強烈に政治的なパフォーマンスを展開した。それだけに今年のガガも、何かはっきり明確で鋭い政治的メッセージを発するのではないかと思われていた。

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Image caption スーパーボウルのハーフタイムで、宙乗り演技をしながら歌うレディー・ガガ(5日)

それだけに、それほどはっきりしたメッセージ性がなかったことは多少意外だったかもしれない。

本人が約束していた通りだった。公平なショーにすると。

「ハーフタイムショーで何か発言するとしたら、それは今まで言い続けてきたことだけです」とガガは言っていたし、その通りになった。

ビヨンセのショーとは違い、黒人解放組織ブラックパンサーの扮装をしたダンサーはいなかった。

しかし冒頭には、ウディー・ガスリー作の愛国歌「この国はあなたの国 この国は私の国」の一節も登場したし、「神のもと分断されることのないひとつの国、すべての人の自由と正義を与える国」に忠誠を誓う、米国人の忠誠の誓いの一部も登場した。

レディー・ガガに政治メッセージを期待する人たちには、これで効く。そしてそれ以外のすべての人には、純粋に愛国的なメッセージとして届く。全員が満足だ。

しかし特筆すべき瞬間がひとつあった。演奏した6曲のうちのひとつは、自分をのけもののように感じる人たちへの応援歌「Born This Way(こういう風に生まれた)」だったので。

「ゲイでもストレートでもバイ・レズビアンでもトランスジェンダーでも 私は正しい道を進んでる 私は生き延びるために生まれてきた」

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Image caption 作家でLGBTQ活動家のタイラー・オークリーさんは「アメリカで年間最大のスポーツイベントで、トランスジェンダーを受け入れるメッセージが発せられた。このことをじっとかみしめよう」とツイートした
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Image caption 活動家コール・レッドフォードさんは「小さな町でカムアウトしてないゲイの子がこれを観ただろう。スタジアムを埋め尽くす人たちが『自分はこういう風に生まれた』って考え方に歓声を送る光景を。だからこれは大事だったんだ」と書いた

(LGBTQコミュニティーが嫌悪するマイク・ペンス副大統領が場内にいたことと、「Born This Way」が選曲されたことは、偶然の一致ではなかったかもしれない)

ではレディー・ガガは悪魔崇拝の儀式を執り行ったわけではないと?

そのようだ。

スーパーボウルに先駆けて、右派組織インフォウォーズは、悪魔崇拝の儀式になると大真面目に心配していた。

しかしヒューストン警察によると、5日夜に悪魔崇拝的な活動が行われたという報告は今のところない。

CMは?

米国では、ムスリム(イスラム教徒)が多数派の7カ国からの入国禁止命令を裁判官が3日に食い止めたばかりだ。その直後のスーパーボルにおいて、紛れもないメッセージがひとつ繰り返された。

「我々はみんな一緒にひとつの国、ひとつの国民だ。我々はお互いがどこから来て、ここにどうやってたどり着いたのか、お互いの物語を尊重する」という意味合いのメッセージだ。

最もあからさまだったのが、民泊情報サイトエアービーアンドビーのCMだった。「#weaccept(私たちは受け入れる)」というハッシュタグのもとに、様々な肌の色の人たちが集まるというそのコマーシャル映像は、先週わずか数日間で製作されたものだという。

「あなたが誰で、どこから来た人で、誰を愛して、誰を信仰しているとしても、ここはみんなの場所だと私たちは信じます」、「たくさんのことを受け入れると、世界はもっと美しくなる」と同社CMは呼びかけた。

過去に多様性の受け入れが不充分だと批判されてきた同社は、CMでさらに難民支援プロジェクトの実施を発表した。

同様に、材木会社のCMは、合法移民となるために中米から米国へと旅する家族の姿を描いていた(インターネットに掲載された長編バージョンでは、国境までたどり着いたこの家族の前に巨大な壁が立ちはだかるものの、その壁に誰かが扉を作っていてくれたという展開になっている)。

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Image caption 中米から合法移民として米国へと旅する家族の姿をスーパーボウルのコマーシャルとして流した材木会社のツイート

さらに大手ビール会社は、ドイツ移民として米国にやってきた創設者の(おそらく架空の)苦労話をCMとして放送。これもまた、今年のスーパーボウルを貫くメッセージを共有したものだった。

トランプ氏は滞在先のフロリダ州で試合中継を観戦したと報じられているが、最後までは見なかった様子で、レディー・ガガのショーについての感想ツイートもしていない。

どっちが勝ったの?

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ボストンの白組がアトランタの紅組に勝った(訳注・白いユニフォームのニューイングランド・ペイトリオッツが、赤いユニフォームのアトランタ・ファルコンズに34対23で勝った)。しかもスーパーボウル史上初の延長戦を経て、ようやく。

(英語記事 All about Lady Gaga's Super Bowl show

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