トランプ米政権で日米関係は1980年代のように?

カリシュマ・バスワニ アジア経済編集委員

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それは「帝国の逆襲」とマイケル・ジャクソンの「ビート・イット」の時代だった。

マドンナのおかげで10代の女の子たちはこぞって「シュシュ」ないしは「スクランチー」で髪を結ぶようになり、ジェーン・フォンダによってレオタードやレッグウォーマーがおしゃれアイテムの仲間入りをした。

音楽を聴くのにカセットテープを愛用する人は多く、しかもその多くは日本のソニー製の革命的な「ウォークマン」を使っていた。

とはいえ、アジアの影響を喜ばない人たちもいた。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などの本が次々とベストセラーになり、アジアの超大国の台頭に当時多くの米国人が抱いていた敵対心は、いっそう強まった。

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Image caption 1985年当時のロナルド・レーガン米大統領

そしてロナルド・レーガン米大統領は、米国製品に対する日本の市場開放が不十分だと日本を激しく批判していた。

「こちらが日本に車を売っても、日本で車を売るなんてとても無理だという状況を向こうは作り出してくる。なのに、向こうはこっちに車を売ってくるんだ」というような物言いが、当時もよく飛び交っていた。

しかし上の発言は、1982年のレーガン大統領ではなく、2017年のドナルド・トランプ大統領のものだ

ということは、時代は1980年代に逆戻りしているのか?

安倍晋三首相が新大統領と会談し、のんびりゴルフに興じながらタフな交渉に臨もうというなか、これはかなり的を射た問いかけだ。

車と牛

ゴルフ会談では為替も話題に上るのだろう。1980年代と同様に米ドルは日本の円よりも強く、米国の消費者にとって日本製品は割安になっている。

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Image caption 日本の自動車最大手トヨタは今後5年間で米国に100億ドル投資する方針と

当時も今も、両国関係で主に問題となるのは、自動車産業と農業だ。

1980年代当時、自動車と牛肉とオレンジの輸出入で米国の対日貿易赤字は、当時の米国の国内総生産(GDP)の2割近くにまで上った。

現在の貿易赤字は半減しているが、それでも今回の首脳会談でも同じような分野が話題の中心となる。

1.自動車産業

日本の自動車メーカー各社は1980年代に、米国市場に製品を不当にダンピングしているという批判を回避するため、米国内に工場を設置した。

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Image caption トヨタのメキシコ新工場計画がトランプ氏の怒りを買った。写真は、トヨタの建物のの前で抗議するトランプ支持者たち。

その結果、最近では米国内で600万台の日本車が売れているが、日本で造られたのは約100万台どまりだ。

それでもまだ、足りないらしい。

トヨタ自動車のメキシコ工場新設はトランプ氏の怒りを買い、批判の標的にされた。

それに応えてトヨタは、今後5年間で米国に100億ドルを投資する方針を示した。

しかしアナリストの多くは、日本政府が特に農業などの他分野で大幅に譲歩するまで、トランプ氏の強硬姿勢は続くだろうと指摘する。

2.農業

農家保護のために日本が農産物の輸入にかけている関税は平均14%だ。これに対して米国の農産物関税は5%とはるかに低い。

環太平洋経済連携協定(TPP)が実現していれば、日本の関税の多くは撤廃されるはずだった。

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日本は米国産牛肉の最大輸入国だ。そして米国産牛肉への関税は、16年以内に74%削減されるはずだった。

しかしトランプ氏は米国のTPP離脱宣言によって事実上、TPPを白紙化した。日本が米国と貿易取引をして日本車を米国の消費者に売りたいなら、今まで以上に大胆に関税を下げろと主張するのだろう。

3. 為替

トランプ氏は日本が金融政策と為替介入によって、対ドル円安を維持し、米国での日本製品が割安になるよう操作していると言う。

日本政府にとって聞きなれた批判だ。それゆえに日本は1985年にはプラザ合意に署名したし、円はやがてドルに対して46%値上がりした。

この円高が日本の「失われた数十年」の原因となったと、複数のエコノミストは言う。低賃金と低成長の時代から、日本は未だに抜け出せずにいる。

それだけに、これ以上の円高につながる取り決めについて、日本政府は警戒しているはずだ。

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Image caption 11月にニューヨークのトランプ・タワーで当選間もないトランプ氏と会談した安倍首相

特に最近では、トランプ大統領のツイートが騒ぎになるたびに投資家は安全な投資先としての円に避難するため、円高基調が続いている。円高が続くと日本にとって、輸出主導の回復経路は継続が難しくなる。

日本政府の希望

安倍首相はトランプ大統領に、今の日本は1980年代の日本とは大きく違うのだと、一生懸命強調するのだろう。今の日本は当時とは違うし、貿易について日本に対して激昂するべきではないと。

当時も今もほとんど変わらないのは、日本の米国依存だ。

1980年代の日本政府が米国に対して通商関係で次々と譲歩したのは、地政学的な思惑からだった。日本は自分の裏庭で引き続き、米国に軍事的にも政治的にも守ってほしかったのだ。

その思いはある程度、現在も変わらない。

日本の立場を新大統領に理解してもらうためには、安倍首相は新たに譲歩するしかなくなるかもしれない。たとえそれで「日本株式会社」が痛手を受けるとしても。

(英語記事 Press rewind: Trump, Tokyo and a welcome back to the 1980s

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