【解説】北朝鮮のミサイル開発計画 歴史と現状

北朝鮮は現在、さまざまな性能のミサイルを合わせて1000発以上保有していると考えられる。

北朝鮮のミサイル開発は1960~70年代の近距離ロケット砲から、80~90年代には短・中距離弾道ミサイルへと進んだ。

現在はさらに射程の長いミサイルの研究、開発を進めているとみられる。

Image caption 北朝鮮のミサイルの射程範囲。(①-ノドン、②-テポドン1、③-ムスダン、④-テポドン2)

最近では、欧米諸国の標的を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発中だと公言している。

短距離ミサイル

北朝鮮による近代的なミサイルの開発は、旧ソ連製の「スカッド」から始まった。1976年に初めて、エジプトから入手したとされる。

1984年には、このスカッドを基に国産の短距離ミサイル「火星(ファソン)」を製造していた。

Image copyright AFP
Image caption 短距離ミサイル「火星」は2012年の軍事パレードに出された

北朝鮮は現在、韓国を射程に収める短距離ミサイルを何種類も保有しているとみられる。北朝鮮と韓国の関係は危うく、両国は今も国際法上の戦争状態にある。

米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)によると、「火星5」(スカッドB)と「火星6」(スカッドC)はそれぞれ300キロと500キロの射程を持つ。

これらのミサイルは通常弾頭だけでなく、生物・化学弾頭や核弾頭を塔載できるとも考えられている。

どちらもすでに実験を経て配備済みだ。火星6はイランにも輸出された。

Image caption 朝鮮半島の軍施設。赤は北朝鮮の弾道ミサイル施設、黄色は核施、黒点は北朝鮮と韓国の軍基地、橙色の点は米軍基地

準中距離ミサイル

北朝鮮はさらに1980年代末、新たな準中距離ミサイルの開発に乗り出した。射程約1000キロの「ノドン」だ。

スカッド・ミサイルをベースにした設計だが1.5倍の大きさがあり、より強力なエンジンを持つ。

英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は2016年4月時点の分析で、ノドンが韓国全土と日本の大半を射程に収めていると断定した。

またIISSによれば、2010年10月に公開された改良型ノドンは、射程を1600キロまで伸ばした可能性がある。これは沖縄県の米軍基地に届く距離だ。

ノドンの発射実験は2006年、2009年、2014年と2016年に実施されたとみられる。

中距離ミサイル

Image copyright EPA
Image caption 中距離ミサイル「ムスダン」は米軍基地があるグアムを攻撃できるとされる

北朝鮮は数年前から中距離ミサイル「ムスダン」の開発を進め、2016年も数回にわたって発射実験を行った。

ムスダンの推定射程は非常に幅広い説があり、イスラエル情報当局が2500キロ、米ミサイル防衛局は約3200キロとしているが、一部情報筋は最大4000キロとの見方を示す。

ムスダンは「ノドンB」「テポドンX」とも呼ばれる。射程を短く想定した場合でも、韓国全土や日本への攻撃に使用できる。

長く見積もれば米領グアムの米軍基地が射程に入る。最大積載量は不明だが、1.0~1.25トンと推定される。

北朝鮮はまた、2016年8月に「地対地中長距離弾道ミサイル」の「北極星」を潜水艦から試射したと発表。さらに今年2月、地上から「北極星2型」を発射した。

2型には固体燃料を使い、配備と発射を迅速化したと主張した。射程の詳細はまだ明らかになっていない。

Image copyright (C) British Broadcasting Corporation
Image caption 北朝鮮の主なミサイルの大きさ(左軸)と射程距離(右軸)/出典:ジェームズ・マーティン不拡散研究センター、米国科学者連盟、グローバルセキュリティー、米議会報告書、国際戦略研究所

多段式ミサイル

北朝鮮で「白頭山1」と呼ばれる「テポドン1」は、同国初の多段式ミサイルだった。1998年に人工衛星の打ち上げと称する発射実験が行われた。

独立系シンクタンク、米科学者連盟(FAS)によれば、1段目にノドン、2段目には火星6が使われたとみられる。

これに続く「テポドン2」(白頭山2)も同じ2~3段式の弾道ミサイルだが、大幅な改良が加えられている。この10年間で数回、発射実験が行われた。

Image copyright AFP
Image caption 最新の多段式ミサイル「テポドン」は中距離ミサイルだ

テポドン2の射程は5000キロから1万5000キロの間と推定される。CNSは最大6000キロとの見方を示す。

北朝鮮は宇宙用に改良したテポドン2を「銀河」と名付け、「運搬ロケット」という呼び方をしている。2016年2月には、銀河を使った人工衛星の打ち上げに成功した。

宇宙ロケットとミサイルは軌道がわずかに異なり、ロケットは目的に合わせて改良されている可能性もある。しかし構造やエンジン、燃料などの基本的な技術に違いはない。

テポドン2の発射が成功し、その射程が推定される最大の距離まで達したとすれば、オーストラリアや米国の一部をはじめとする国々が射程に入ることになる。

大陸間弾道ミサイル

北朝鮮は現在、同国最大の射程を持つ移動発射式ミサイルの開発を進めているとされる。このミサイルは専門家の間で「KN-08」または「火星13」と呼ばれている。

開発の動きを示す兆候のひとつとして、2016年9月には新型ロケットエンジンの燃焼実験が実施された。これは弾道ミサイル用のエンジンではないかと指摘されている。

米国防総省は、北朝鮮が少なくとも6発のKN-08を保有しているとみる。KN-08は米本土の多くの地域まで届く可能性がある。

北朝鮮はさらにKN-14と呼ばれる改良型も開発したとされるが、どちらのミサイルもこれまでに発射実験は公開していない。

だが金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は今年1月、大陸間弾道ミサイルの開発が「最終段階」にあると宣言した。その直後には、発射実験が間近に迫っていることを示す兆候もみられた。

北朝鮮がこれに先立ち、核弾頭を小型化したと主張していたことも考えると、長距離核兵器の開発が近いかもしれないという可能性はますます高まっている。ただ専門家らは証拠がないとの理由から、その可能性に疑問を投げ掛けている。


ミサイルの射程

短距離 1000キロ以下

準中距離 1000~3000キロ

中距離 3000~5500キロ

大陸間 5500キロ以上

出典・米国科学者連盟(FAS)


(英語記事 North Korea's missile programme

この話題についてさらに読む

関連リンク

BBCは外部サイトの内容に責任を負いません