米大統領が異例の欠席 ホワイトハウス記者会夕食会

夕食会でトランプ氏をからかったコメディアンのハサン・ミナジ氏(後方)と、ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者(手前中央)、ロイター通信のスティーブ・アドラー編集局長(30日) Image copyright Reuters
Image caption 夕食会でトランプ氏をからかったコメディアンのハサン・ミナジ氏(後方)と、ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者(手前中央)、ロイター通信のスティーブ・アドラー編集局長(30日)

米大統領とホワイトハウスの記者団がお互いを痛烈にからかい合うのが慣例となっている、毎年恒例のホワイトハウス記者団夕食会が30日に開かれたが、ドナルド・トランプ氏は欠席した。大統領の欠席は、銃撃されて負傷したロナルド・レーガン大統領が欠席した1981年以来の異例な事態となった。

前年の夕食会では、バラク・オバマ大統領(当時)がトランプ氏を徹底的にこき下ろした。このため民主党は、大統領となったトランプ氏が欠席するのは、まだ前回の傷が治っていないからではないかと皮肉った。

トランプ氏はこの日、代わりにペンシルベニア州で支援者集会を開き、「すごく退屈な」夕食会から遠く離れて、「これほど嬉しいことはない」と述べた。

大統領が欠席した(そしてBBCも欠席した)正装の会場では何があったのか――。


1. コメディアンの最難関

ホワイトハウス記者会夕食会では、大統領がまず軽い調子で自分と記者団をからかってから、次にコメディアンが大統領をネタにしてからかうのが慣例だ。

しかしその展開は、今年はあり得なかった。コメディーニュース番組「デイリー・ショー」の「特派員」、ハサン・ミナジ氏が「お集まりの皆さん、ホワイトハウス記者会夕食会のシリーズ最終回にようこそ!」とあいさつしたように。

トランプ氏とマスコミをネタにしたジョークに、集まった報道関係者は何度か「うーん……」と頭を抱えていたものの、クスクス笑いが聞こえるジョークもあった。

比較的、受けが良かったミナジ氏のジョークはたとえば――、

  • 「この国の指導者はこの場にいません。だってモスクワに住んでるから。すごい長いフライトだし。それで、もう片方の奴はというと、ペンシルベニアにいるらしい。冗談が通じないので」
  • 「どうしてドナルド・トランプが今日、ロースト(からかわれる、の意味)されたくなかったのか、分かりますよ。見た目からして、70年間ずっとノンストップでロースト(焼く、の意味)されてきたみたいだから」
  • (報道陣に)「このトランプ時代に、皆さんは今まで以上に完璧じゃないとダメなんですよね。大統領は皆さんを通じてニュースを知るので(中略)だからミスはできない。誰か1人のミスを、大統領は会社全体のせいにするから。おかげで、マイノリティー(少数者)が日ごろどういう気持ちでいるか、わかったでしょ」
  • 「あと4時間もすればドナルド・トランプは、ニッキー・ミナジ(女性ラッパー)がこの夕食会ですべりまくったってツイートしますよ」
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Image caption 「ホワイトハウス記者会夕食会ですべりまくるニッキー・ミナジ」と自分の写真をツイートしたハサン・ミナジさん

2. ボールドウィン版トランプものまね

俳優アレック・ボールドウィンさんは大統領選中から、米NBCの人気コント番組「サタデー・ナイト・ライブ」(SNL)でトランプ氏の物まねを繰り返し、本人の怒りを招いた。

「まったく一方的な、偏った番組だ。なにひとつ面白くない」と、当選間もない大統領はツイートしたこともある

とはいえ、国の最高指導者が出席しないというなら、その代わりとなるものを……と思うのは当然のことだ。そこで、ボールドウィン氏は「トランプかつら」をかぶり、中継映像で搭乗した。

「その調子でがんばりたまえ!」 ボールドウィン版トランプ氏は、薄笑いを浮かべながら記者団を「激励」した。

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Image caption 「その調子でがんばりたまえ!」 ボールドウィン版トランプ氏が記者団を激励

3. 「ホワイトハウス記者団夕食会じゃない会」

「デイリー・ショー」出身のサマンサ・ビー氏が司会する人気の深夜トーク番組「フル・フロンタル」は29日夜、 「ホワイトハウス記者団夕食会じゃない会」を主催。下世話なジョークが次々とツイッター上をかけめぐった。

トランプ氏を次々とジョークで罵倒したビー氏はたとえば、トランプ氏が大統領に就任してからというもの、フォックスニュースについてはさかんにツイートするのに対して、末娘ティファニーさんについてはほとんどツイートしていないと皮肉った。

俳優のウィル・フェレル氏は、かつてSNLで人気をとったジョージ・W・ブッシュ氏の物まねを復活させて登場。「今となっては僕のことどう思うよ?」との開口一番で会場を大いに沸かせた。

ほかにも、「ハチミツのツボから頭が出せなくなったトランプ氏の代わりに、マイク・ペンス副大統領が国の指導者となったアメリカ」の話題などが登場した。

「夕食会じゃない」というだけあり、会場では夕食は出されなかったが、VIPにはタコス・サラダが提供されたという情報もある。

ビー氏は、このイベントで集めた20万ドル(約2200万円)を、取材記者を守る団体に寄付した。

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Image caption 「ホワイトハウス記者団夕食会じゃない会」で司会するサマンサ・ビー氏(29日、ワシントン)

4. オバマ式マイクドロップを懐かしむ

8回目にして最後となった昨年の記者会夕食会で、オバマ氏は「オバマ・アウト」とマイクドロップでスピーチを締めくくり、会場を後にした。マイクドロップとは、ラッパーたちが「以上」とその場を締めくくる意味で使うジェスター。

強烈な印象を残したこの場面を懐かしむ人たちが、ツイッターに次々と思いを投稿。レジーナ・ローガンさんは「当時は良かった」と書き、タミーさんは「本物の大統領、お願いだから帰ってきて」と投稿した。

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オバマ米大統領 トランプ氏話題に痛烈ジョーク

一方で、オバマ氏に陰謀論者だとひどくからかわれたトランプ氏が、結局は大統領になったという展開の皮肉を指摘する人たちもいた。

右派を自認する「クリス11962」さんは、「トランプは絶対に大統領にならないってオバマが言った、あれがマイクドロップだったのか?」と書いた。

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Image caption 「オバマ・アウト」でマイクドロップ。昨年4月30日のホワイトハウス記者会夕食会より

5.ウォーターゲートの英雄たちが叱責

大統領が欠席したホワイトハウス記者会夕食会の主賓は、代わりにかつてウォーターゲート事件報道で有名となった米紙ワシントン・ポストのボブ・ウッドワードとカール・バーンスティーン両氏だった。

リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだ両記者は、トランプ氏によるマスコミ攻撃を批判。ウッドワード記者は「偽ニュース!」というトランプ氏の決まり文句を取り上げ、「大統領、マスコミは偽ニュースではありません。やりとりを続ける前に、まずその点をはっきりさせておきましょう」と発言。

「状況がどうであれ、マスコミが称えられていようが唾棄(だき)だれていようが、我々は職務を頑なに遂行すべきだし、遂行しなくてはならないし、そうするはずだと私は信じている」

ウッドワード氏のスピーチは、この夕食会が大統領を公然とからかうための場であると同時に、優れた報道を称え、米国の表現の自由を保障する憲法修正第1条を称えるための場だと、あらためて強調した。

ロイター通信記者でホワイトハウス記者会会長のジェフ・メイソン氏も、「私たちは駄目になりつつある報道機関ではありません。そして私たちは、米国人の敵ではありません」と述べ、会場は総立ちになって拍手を送った。

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Image caption 左から、ウッドワード氏、バーンスティーン氏、メイソン氏

6.次回こそは?

今年は出席を拒否したものの、来年もそうだとは限らないようだ。

トランプ氏は先週、ロイター通信の取材に対して、「もちろん来年は行くよ」と答えている。

わくわくする? では来年4月の最終土曜日は、あけておくように……。

(英語記事 White House Correspondents' dinner: Six takes from the event

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