【解説】FBI長官解任――知りたかった5つのこと

アンソニー・ザーチャー、BBC北米担当記者

トランプ大統領とコーミー長官の関係は1年前から二転三転した Image copyright REUTERS/Jonathan Ernst, Kevin Lamarque
Image caption トランプ大統領とコーミー長官の関係は1年前から二転三転した

ドナルド・トランプ米大統領が連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官をいきなり解任したことで、ワシントンは揺れに揺れている。

ホワイトハウスは解任理由を、ヒラリー・クリントン氏のメール問題の取り扱いが不適切だったからだと説明している。しかし民主党は、大統領選へのロシア介入疑惑とトランプ陣営との関係について、特別検察官を任命するよう求めている。コーミー氏はFBI長官として、クリントン氏のメール問題の捜査だけでなく、ロシア疑惑の捜査を指揮していた。

ではこれからどうなるのか。BBCのアンソニー・ザーチャー北米担当記者が解説する。

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トランプ氏とコーミー氏の複雑な関係

後任のFBI長官は? トランプ政権が決めるのか

FBI長官を罷免する権限は大統領にあり、後任を決める権限も大統領にある。しかし政治任用の高官職なので、トランプ大統領が指名する候補は、上院(定数100議席)が過半数で承認しなくてはならない。

上院は現在、共和党議員が52人で多数を占める。このため、与党・共和党がトランプ氏支持でまとまる限り、民主党はトランプ氏が指名する後任長官の就任を阻止できない。

FBI長官が政局に巻き込まれないよう制度的には、仕組みが作られている。任期は10年で、つまり複数の大統領任期にわたるよう設定されている。FBI長官が任期途中で解任されたのは、1993年のことだ。そこまで遡らなくてはならないほど異例のことで、政治的リスクがつきまとう動きだ。


退官したコーミー氏は、在任中の事柄について今後証言できるのか

退官したとはいえ、コーミー氏は依然として、機密情報や進行中の捜査内容について自由に発言できない。

けれども、本人にその気があれば、ホワイトハウスとのやり取りについてまったく示唆できないわけでもない。もしここ数カ月の間に政治的圧力がかけられていたなら、それについても同様だ。

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Image caption FBI長官として上院司法委公聴会に出席したコーミー氏(3日)

民主党は早くも、解任に至る経緯についてコーミー氏の議会証言を要求している。トランプ氏はFBI長官のポストから追い出したかもしれないが、国民が見守る舞台からコーミー氏を完全に降ろしてしまうのは、そうそう簡単なことではない。


民主党はなぜ今になってコーミー氏解任に反対するのか

コーミー長官が大統領選の直前に、民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏のメール問題について捜査を再開したと発表したことを機に、クリントン氏をはじめ、チャック・シューマー上院院内総務もナンシー・ペロシ下院院内総務も、民主党幹部はこぞってコーミー氏を批判してきた。

クリントン氏は今月2日、ニューヨークで開かれた「世界女性サミット」で、自分が敗れた一因はコーミー長官の発表だったとあらためて述べていた。

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Image caption ヒラリー・クリントン氏

しかし民主党側のコーミー批判の大半は昨年11月のものだった。政治の世界の6カ月は永遠に相当する。そしてこの半年の間でコーミー氏は、ロシアとトランプ陣営の結託を捜査するFBIの顔となっていた。

民主党関係者の多くはコーミー氏の大ファンでは決してなかっただろうが、それでもこの数カ月来、大統領の権限に対抗していくだけの独立性と気概をもった人物として、コーミー氏に一目置くようになっていた。

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米民主党幹部「大統領、それは大きな間違いです」

長官解任でFBIの将来は?

トランプ政権は大統領以下、コーミー氏の解任はFBIに対す国民の信頼回復に必要な措置だったとこぞって主張する。

確かに前長官は、党派対立を超えた批判の対象だった。政党を問わず大勢が、政治性にまみれていない新しい長官の方がFBIのためになると考えた。

しかし大統領の決断によって、当座のFBIは大混乱に陥った。局内の職員は軒並み、不意打ちを食らった。

ロシア疑惑の捜査そのものも、司法省の判断待ちで、宙に浮いたままだ。

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Image caption コーミー長官解任と同じ日にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(左)がホワイトハウスを訪れ、レックス・ティラーソン国務長官(右)やトランプ大統領と会談した

となると、大統領が誰を後任に選ぶかが決め手となる。それが誰でも民主党は厳しい疑いの目を向けるだろう。特に党派性のある人物ならなおさらだ。

FBI再建作業は困難なものになるだろう。そしてトランプ政権は今のところ、助けになっていない。


「自分は捜査対象ではないと3回にわたり説明してもらった」となぜわざわざ書いたのか

トランプ氏はコーミー長官にあてた手紙で、「自分は捜査の対象ではないと、3回の別の機会に説明してもらったのはありがたく思うが」と書いた。

このようなことを書く必要はなかった。というよりもむしろ、おそらく書くべきではなかった。

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Image caption トランプ大統領がコーミー長官にあてた解任の通知

自分は捜査対象ではないとコーミー長官に言われた――。大統領とFBI長官の間にこのようなやりとりがあったという情報はこれまで公表されていなかったし、FBIが捜査中の状態でこのようなやりとりがあったとすれば、それは極めて異例だ。こうわざわざ書いてしまったことで、トランプ氏は自らこの点に脚光を浴びせてしまったのだ。


(英語記事 FBI chief Comey sacking: Five things you wanted to know

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