トッピングに花びらはいかが? ベトナムで人気ピザ屋経営する日本人

4Psのピザ

誇り高いイタリア人は、益子陽介氏の出すピザの一部のトッピングにたじろぐかもしれないが、益子氏の品質管理に対するこだわりは評価せざるを得ないだろう。

ベトナム在住の日本人、益子氏(38)は、ベトナムで最も人気あるピザチェーンの一つ「Pizza 4Ps(ピザフォーピース)」の創業者だ。

Pizza 4Psは、ホーチミン市(旧サイゴン)とハノイ市、ダナンのベトナム3大都市で活気溢れるレストラン6店を運営しており、毎日3000人を超える顧客をもてなしている。

顧客は、サーモンみそクリームや照り焼きチキン、しょうが味のフライドポークといったピザの美味しさを味わってみようと店に押し掛ける。

マルゲリータやパルマハムといったより伝統的なピザもある。益子氏の細部へのこだわりは相当なもので、2011年にホーチミン市で最初のレストランをオープンした際、完全に丸くないピザの代金は受け取らなかったほどだ。

さらに、ピザの主要な材料である小麦粉やトマトソースなどをイタリアから輸入しているが、モッツァレラチーズについては、イタリアからの輸入では長時間に及ぶ貨物輸送のせいで新鮮さが十分保てなかったり、週に2回しか配達を受け取れなかったりという点を益子氏は心配した。

Image copyright Aaron Joel Santos
Image caption 益子氏は妻の早苗氏と事業を営んでいる

そのため、益子氏は独自に食材を作ることにした。チーズはベトナムになかったため、地元からの助けは求められなかった。その代わり益子氏は、ユーチューブの動画で研究して自分自身でチーズの作り方を学んだ。

その後、ベトナムで買える牛乳の品質に不満を持った益子氏は、牧場と自分の牛を購入した。

こだわり過ぎだという人もいるかもしれないが、益子氏は他の方法では手に入らなかっただろうと言う。

「私たちのレストランは『驚きを届け、幸せを共有する』のが使命です」と益子氏。「使命を追及するため、いつも顧客の期待の上を行くことを心がけています」

Image caption Pizza 4Psはより伝統的なイタリアンピザも販売している

日本人もベトナム人もピザを食べることで有名なわけではないが、益子氏が初めてピザを作ったのは、2004年に東京の自宅の庭で薪をくべるビザ釜を設置した時からだ。

益子氏は「毎週末、自分たちのピザを友人たちと作る経験をして、美味しい食事をいい空間で出せば人を幸せにできるんだと気づかされました」と話す。

益子氏が仕事としてピザ作りをしようと決意したのは、それから7年後のことだ。当時、益子氏は日系投資会社の従業員としてベトナムに住んでいた。

台頭するベトナムの中間層の可能性に魅了された益子氏は、ピザハットやドミノピザのような世界的なピザチェーンがベトナムで店舗を開店し、人気を博しているのに気が付いた。ベトナムはフランスの植民地だったので、パン製品、特にフランスパンには馴染みがあった。そのため、多くの人にとってピザは急すぎる変化というわけではなかったのだ。

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Image caption こうしたレストランは増加するベトナムの中間層に人気だ

自家製ピザとの楽しい思い出がある益子氏は、仕事を辞めて、10万ドル(約1100万円)の貯金をはたいてホーチミン市の中心部にPizza 4Psの第一号店を開店させた。

変わった名前の一部、4Psは「平和のために(for peace)」を表している。益子氏は、「4Psという名前には、心の平穏と心の豊かさに対する私たちの願いが込められている」と説明する。

益子氏は昔を振り返り、投資の仕事を辞めるのは簡単な決断ではなかったと語る。

「前職には何の問題もありませんでした。会社は住宅も提供してくれいましたし。最初の店をオープンした時、長女は3歳でした。もちろん、レストランが上手くいかないのではという恐れはありましたが、同時に、挑戦しなければならないとも思いました」。

Image caption レストランは人で賑わう中心地にある

レストランがたちまち流行ったのは益子氏にとって幸いだった。そしてそれ以降、益子氏の会社は着実に成長を続けた。

10人で始めた会社はいまや、700人のベトナム人正社員と、13人の日本人従業員を抱え、日本人のうち5人は経営陣としての役割を担っている。

レストラン開店当初は、顧客の9割がベトナム駐在の日本人で、ベトナム人とそれ以外の外国人がそれぞれ5%だったと益子氏は振り返る。

今では食事をする人の7割以上がベトナム人だ。

Image caption Pizza 4Psは甘いデザートピザも販売している

Pizza 4Psは自前のチーズ作りに加え、ルッコラやレタスなど野菜の栽培をベトナム人農家に依頼しているほか、ホテルや他のレストランにもチーズの一部を販売している。

益子氏は「2016年の売上高は750万ドル(約8億3000万円)で、2017年は1500万ドルを見込んでいる」という。

会社を証券取引所に上場し、他の国で出店するのが最終的な目標だ。

事業運営の助けとして益子氏が頼りにしているのは妻の早苗氏だ。二人は同じ日系投資ファンドで働いている時に出会った。

Image caption この会社にはベトナム人と日本人の従業員の両方がいる

益子氏がCEOを担う一方、早苗氏は人事やマーケティングを担当している。

Pizza 4Psでは職場での公用語として日本語やベトナム語を選ぶより、従業員には代わりに英語で会話するよう促している。

益子氏は、これがコミュニケーション上の問題の原因になる時もあると認めながらも、文化の違いが最大の問題になる時があるという。

早苗氏は「ベトナム人と日本人の労働文化には差があり、埋めるのは難しい。それでも改善しつつある」と説明する。

Image caption 益子氏は毎日、仕事前に瞑想する

ベトナムの投資ファンド、シードコムのハン・ゾー副社長は、Pizza 4Psの成功に驚かなかったという。

「過去5年間、ベトナム経済は成長し、中間層も急成長しました。みんなちょうど多様な食べ物や飲み物を前より受け入れるようになったところで、Pizza 4Psはとてもユニークな味わいを提供しています」と語る。

益子氏はベトナムのピザ市場は成長し続けると確信しており、Pizza 4Psが今後も成功し続けるために自分の時間を注ぎ込んでいる。

益子さんは「毎日午前9時に出社し、13時間働いてます。人生を仕事に捧げています」と話す。

(英語記事 Fancy a four flowers or ginger fried pork pizza?)

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