【ロンドン火災】 政府幹部4人が「火災リスクを知らされていた」

グレンフェル・タワーを前に黙祷を捧げる消防士たち(19日午前) Image copyright AFP
Image caption グレンフェル・タワーを前に黙祷を捧げる消防士たち(19日午前)

英国の現行の防火規則では、ロンドン西部で大火災に遭った「グレンフェル・タワー」のような公営高層住宅は安全ではないと警告する専門家たちの書簡を、政府幹部4人が受け取っていたことがBBCの取材で分かった。14日未明のグレンフェル・タワー火災では、19日までに少なくとも79人が死亡、もしくは行方不明で死亡が推定されている。

BBC番組「パノラマ」が入手した超党派の「防火安全救助議員連盟」による書簡は、コミュニティ・地方自治省に対して、グレンフェル・タワーのような高層住宅には火災「リスク」があると警告していた。同省は、安全基準の改善に取り組んでいたところだと話している。

2009年の高層住宅火事を機に

2009年にロンドン南部の公営高層住宅「ラカナル・ハウス」で起きた火事で6人が死亡した後、検死官は「(コミュニティ・地方自治省は)、高層集合住宅の供給事業者に対して、スプリンクラーの設置を検討するよう促すべき」だと勧告している。

しかし、この勧告は無視された。政府は2013年に消防法規の見直しを約束したが、先送りにされたまま、まだ実現していない。

BBC番組「パノラマ」が入手した超党派の「防火安全救助議連」は、政府に「次の悲劇を待っている余裕はない」と訴えている。

コミュニティ・地方自治省の大臣・閣外相計4人がこの書簡を受け取っているが、規制強化は実現しなかった。

名誉幹事として議連に参加するロニー・キング元消防総監は、高層住宅の防火対策について政府は相次ぐ警告を無視してきたと非難する。

「我々は4年かけて、『いいか、証拠がある。証拠はこれだ。世論も明らかにこれを支持している。政府はすぐに対策をとるべきだ』と言い続けてきた」

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Image caption 警察は、全員の無事が確認された住宅の写真を新たに公開した

2014年3月に議連はさらに、「防火基準刷新の根拠となる証拠がすでに十分あり、それで人命が救われるのだから、よもや行動を起こすまでに今までの2年に加えてさらにもう3年もかかるなどということは、ありえないでしょう」と書いた。

「英国内には、自動スプリンクラーがない老朽化した公営高層住宅がこのほか4000棟あると推計されている。それでもこの弱点を改善するためには、今一度の悲劇を待っている余裕はあるのだろうか」

議連はその後も繰り返し、コミュニティ・地方自治省に書簡を書き送った。やがて当時、同省の閣外相だったスティーブン・ウィリアムズ議員(自由民主党)が、「指摘されている具体的な変更の検討が緊急のものだという根拠を、私は何一つ見ても聞いてもいない。ゆえに、この事案の優先度を高めるよう促したりして、本省の業務を混乱させるつもりはない」と返事している。

これに対して議連は、「人命の安全に影響のある、信頼性と独立性の高い証拠が、緊急のものでないなど、いったいどうやってそのような結論に至ったのか、理解に苦しむ」と反論している。

「そのためもし今から2017年までの間に、たとえば在宅介護施設や高層住宅などにおいて、我々が提起した問題が関係するような重大な火災が発生し、人命が失われるような事態になった場合、我々は本件を周知せざるを得ない」

一連の書簡は、グレンフェル・タワーの大規模修繕工事の前に書かれた。

議連は2014年2月に、消防法について当時のエリック・ピクルズ・コミュニティ・地方自治相に手紙を書いている。ピクルズ自治相(当時)は、2013年の2月と3月に別々の検死官から、2カ所の公営高層住宅火事について、防火安全基準の点検を要請されている。

2015年12月にも議論は、当時のコミュニティ・地方自治閣外相だったジェイムズ・ウォートン議員(保守党)に書簡を書き送り、外装材が原因で建物の外壁が延焼する危険性を指摘している。

「いまの建物には、手に入りやすい可燃性の素材が非常にたくさん使われている。材木とポリスチレンを混ぜ合わせたものを、芯や外装や断熱材などどに使っているのが一例だ」

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「火災の原因になりやすいこうした素材は、結果的に多くの火事を引き起こしている。住宅開発業者に対する適切な勧告が、まったく存在しないからだ。延焼を防ぐための基準がほとんど、あるいはまったくない状態だ」

議連からの書簡を受け取った4人目の同省幹部はギャビン・バーウェル氏だ。住宅計画担当の閣外大臣だったバーウェル氏は現在、テリーザ・メイ首相の官房長官だ。バーウェル氏は昨年月9に、議連から書簡を受け取っている。

バーウェル氏は昨年11月に、コミュニティ・地方自治省として消防法規を点検しており、「いずれしかるべき時に」発表すると返答した。

今年4月の時点でバーウェル氏は、「建築基準に関する発表をまとめるのに、予想以上に時間がかかったことは認める」と返信している。

議連は「2010年以来、3人の閣外相が同じような返事を繰り返してきた」と指摘。「消火対策の専門家たちの主張に、耳を傾けるべき時だ」と強調した。

政府は、未だに消防法規の再点検の予定はないと話している。

コミュニティ・地方自治省は、グレンフェル火災に対する警察の捜査はすでに始まっているが、「出火原因と、なぜあのように延焼したのかを完全に理解できるまでには、かなりの時間がかかる」と話している。

同省はさらに、「ラカナル・ハウス火災の後で検死官が提出した勧告に従い、政府は防火安全基準の改善に取り組んできた。最後の勧告は、防災基準の簡易化で、これには着手済みで今年夏にも諮問内容が公表される予定だった」と説明している。

「防火基準は複雑な問題で、高い基準を整えることを政府は優先事項としてきた。諮問作業を支えるための調査など、相当の作業がすでに終わっている。今回の悲劇を受けてもちろん、この諮問作業が次の一歩としてふさわしいかは検討しなくてはならない。政府の対応を近く発表する」

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この専門家議連の書簡とは別に、グレンフェル・タワーで当日、消防隊が最初に冷蔵庫の出火を消火していたことが分かった。

「パノラマ」の取材によると、通報で出動した消防隊は、冷蔵庫を消火し、住民に鎮火したと伝えた後、外にいた消防士たちが、建物の側面から出火しているのに気付いたという。

(英語記事 Four ministers were warned about tower block fire risks

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