睡眠不足は脳にどう影響する

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睡眠不足が脳に与える影響について、カナダの研究チームが世界最大規模の調査に乗り出した。

カナダ・オンタリオ州にあるウェスタン大学の研究チームは、認知テストにオンラインで申し込むよう世界中の人に呼び掛けている。

特別に考案されたコンピューター・ゲームは、推論、言語理解、意思決定などのスキルをテストする。

テストを試す有志ボランティアに私も加わり、テストを受けながら脳をスキャンしてもらった。

先駆的

Prof Adrian Owen, a British neuroscientist based at the Brain and Mind Institute in London, Ontario, is leading the study.

He told me: "We all know what it feels like to not get enough sleep but we know very little about the effects on the brain; we want to see how it affects cognition, memory and your ability to concentrate."

The team will collate the cognitive scores and see the variations depending on how much sleep people have had.

Everyone's sleep requirements are different, but if enough people join the study, it may allow scientists to determine the average number of hours needed for optimum brain function.

I joined four volunteers spending the night at Western University, where we road-tested the brain games and were able to demonstrate how lack of sleep affects cognitive performance.

オンタリオ州ロンドンの脳精神学会を拠点に活動する英国出身の神経科学者、エイドリアン・オーウェン教授がこの研究を指揮している。

「睡眠不足がどんな感じか誰でも知っていますが、脳への影響はほとんど分かっていない。そのため、睡眠不足が認知、記憶、集中力にどう影響するのか知ろうとしている」と教授は話した。

研究チームは認知スコアを集計し、睡眠時間によってスコアがどれだけ変動するかを観察する。

必要な睡眠時間は人によって異なるが、十分な人数が研究に参加すれば、脳が機能を最大限発揮するのに必要な平均時間を科学者が見極められるかもしれない。

ウェスタン大学で夜を過ごす4人の有志に私も加わった。我々は頭脳ゲームを実際に試し、睡眠不足がどれだけ認知能力に影響するかを具体的に示した。

(キャプション)有志の人たち(上左から時計回りに)フーマン ・ガンジャビ 医師、シルビー・ソルースキー さん、エバン・アグニューさん、セシリア・クラマーさん


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Image caption (左上から時計回りに)実験に参加したフーマン ・ガンジャビ医師、シルビー・ソルースキー さん、エバン・アグニューさん、セシリア・クラマーさん

実験に参加した4人

  • フーマン・ガンジャビ医師(42)。精神科医。夜間の当直勤務が多い。「睡眠時間4~5時間は自分にとって普通。睡眠不足で心臓病や脳卒中のリスクが高まるのは知っているが、大勢の医師同様、自分に当てはめて考えていない」。
  • シルビー・ソルースキーさん(31)。5歳未満の娘2人の母親。「私にとってよく眠れる夜とは、娘たちに2~3回しか起こされないとき。邪魔されずに朝までぐっする眠る感覚を忘れている。翌日はいつも頭がぼーっとしている」
  • エバン・アグニューさん(75)。退職前は夜勤担当。「まとめて8時間も寝る必要があったことがない。この歳になると、1度に4時間以上必要とは思わない。日中に1、2度昼寝をして、睡眠時間を補う」
  • セシリア・クラマーさん(31)。神経科学者。夜行性のねずみを使った認知研究を行っている。つまり、夜遅くまで研究室にいる。「睡眠時間が足りないと翌日は脳がうまく機能しないので、科学論文を読むような複雑なこと何もできなくなる」。
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Image caption 調査に使われる頭脳jゲーム。左の「Double Trouble」では、上の単語と同じ色の単語をクリックする。右の「Odd One Out(仲間外れ探し)」は呼び名の通りの作業をする。難易度はどんどんあがっていく。

テスト内容

研究が使われる頭脳ゲームは、どのパソコンやタブレット、スマートフォンでもできる。

ダブル・トラブル――一見簡単そうだが、かなり脳の灰白質の運動になる。上の単語が書かれた色に合致する単語を下から選んでクリックしなければならない。つまり、上の単語が「青」でも赤色で書かれていたら、赤色で書かれた単語をクリックしなければならない。それが「青」という単語であっても。ややこしい。

仲間外れ探し――最初は簡単だが、他と違う形を1つ探すうちにどんどん複雑になる。

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Image caption こちらも調査の頭脳ゲーム。「Grammatical Reasoning(文法的推論)」は一見簡単そうだが、それも上の説明文が否定文になるまでの話だ。「Spatial Planning(空間計画)」は、数字をクリックして正しい場所に動かす

文法的推論――表示される図形について、説明文が合っているか間違っているかを判断する。簡単そうに聞こえるが、説明が否定文になると簡単ではない。

空間計画――事前計画力のテスト。他のゲーム同様、私たちが日中繰り返し使う認知能力を測定する。


みんなの成績は?

朝4時まで寝ずに過ごした後、4時間の睡眠が許された。

その朝、認知能力テストを再び受けたが、エバンさんとセシリアさんと私の3人は、前の晩より点数が著しく悪かった。

夜間当直勤務に慣れているフーマンさんは、点数の極端な悪化はなかった。一方でシルビアさんの点数はむしろ高くなった。

シルビアさんは、「今朝は少し頭がぼーっとしたが、ほんの少しの睡眠で働くのに慣れているのかもしれない。子供たちが起きたらすぐに稼働開始なので、私にはこれが普通だ」と話した。

睡眠が減ると自分がうまく機能できなくなるのは、私はかなり前から自覚していた。なので、認知能力テストの点数が朝になると劇的に悪化しても意外ではなかった。

私の脳内では何が起きていたのか。それを探るため、磁気共鳴画像装置(MRI)に入っている間に何度も認知能力テストを受けた。

2度スキャンされた。通常の睡眠の後と、睡眠不足の夜の後だ。

MRIは、脳の血流を検知できる。そのため、一番活発に働いている部分の活動が増した。ここではオレンジ色のかたまりとして表示されている。

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Image caption 左のスキャン画像は、普通に眠った後に認知能力テストを受けている最中の、私の脳。右は、睡眠不足な状態の私の脳

スキャン画像の違いは明らかだった。睡眠が足りないと、私の脳の調子はかなりひどかった。ほとんど活動していなかったのだ。

オーウェン教授が、科学的に説明してくれた。「意思決定や問題解決、記憶で極めて重要として知られる前頭葉と頭頂葉の活動が、ぐっと減ってしまう」。

疲れている時の車の運転は危険だと誰もが知っている。反応時間が損なわれるし、運転中に居眠りしてしまうかもしれないからだ。

しかし、睡眠不足が日常生活に与えるもっと微妙な影響については、あまり理解されていない。

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Image caption 睡眠と認知力の研究を主導するウェスタン大学のエイドリアン・オーウェン教授

「睡眠不足は意思決定に、重大な影響を与えているかもしれない。家を買うとか、結婚とか、大事なことは睡眠不足の状態で決めない方が良いかもしれない」とオーウェン教授は言う。

なぜ重要なのか

We spend nearly a third of our lives asleep, and it is as vital to our wellbeing as the food we eat and the air we breathe.

But our 24-hour culture means we are getting less sleep than ever.

Last month, a paper in Nature Reviews Neuroscience said there was "remarkably little understanding" of the consequences on the brain of chronic sleep loss.

It spoke of the "precipitous decline in sleep duration throughout industrialised nations", adding that more research was urgently needed.

Those who volunteer for the sleep study may help find some of the answers needed by both science and society.

私たちは人生の3分の1近くを眠って過ごす。何を食べるか、どういう空気を吸うかと同じくらい、睡眠は健やかな暮らしに不可欠だ。

24時間365日常に活動が続く現代において、私たちの睡眠時間はどんどん短くなっている。

5月に神経科学誌「ネイチャー・レビューズ・ニューロサイエンス」に掲載された論文は、慢性的な睡眠不足が脳に及ぼす影響は「意外なほどほとんど理解されていない」と論考した。

論文は「先進工業諸国全体での睡眠時間の急激な低下」について説明し、さらなる研究が緊急に必要だと加えた。

科学と社会の両方が必要とする答えを見つける作業に、睡眠研究に参加する人たちは、貢献できるかもしれない。

(英語記事 How lack of sleep affects the brain

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