ブレグジットについて知っておくべき全て

アレックス・ハント記者、ブライアン・ウィーラー記者

英国とEUの旗

英国の欧州連合(EU)離脱に向けた正式な交渉が始まったのに合わせ、分かりやすいブレグジット・ガイドをここにお届けする。基本的事項から交渉手続きの詳細に至るまで。後半では、読者からの質問にお答えする。

ブレグジット」という言葉

英国のEU離脱を縮めた表現として使われるようになった言葉だ。英国を意味する「Britain」と離脱を意味する「Exit」から造語、「Brexit=ブレグジット」が生まれた。過去に、ギリシャのユーロ離脱の可能性について、ギリシャのGreekとExitから「Grexit=グレグジット」と表現されたのと同様だ。

なぜ英国はEUを離脱するのか

英国がEUから離脱すべきか残留すべきかについて、選挙権年齢に達している国民のほぼ全員が投票できる国民投票が、2016年6月23日の木曜日に実施された。51.9%対48.1%で、離脱派が勝利した。投票率は71.8%で、3000万人以上が票を投じた。

英国全土での内訳は

イングランドは、53.4%対46.6%で離脱が多数。ウェールズもまた、52.5%対47.5%で、ブレグジットに賛成した人が多かった。スコットランドと北アイルランドはいずれも、EU残留を支持した。スコットランドでは62%が残留を支持し、離脱派は38%だった、北アイルランドでは残留55.8%、離脱44.2%だった。

国民投票の結果を受けた首相交代

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Image caption キャメロン氏が首相を辞任し、メイ氏が新たに就任した

英国に新たな首相が誕生した。テリーザ・メイ氏だ。残留派の敗北を受けて国民投票当日に辞任を発表したデイビッド・キャメロン氏の後任として、内相だったメイ氏が就任した。キャメロン氏同様、メイ氏は英国のEU離脱に反対だったが、残留運動では非常に目立たない役回りしか果たさず、EUに対して熱心なようには決してみられなかった。離脱派だった主要なライバルらが辞退したため、本格的な保守党の党首選を経ずに首相に就任した。

メイ首相のブレグジットでの立ち位置は

メイ首相は、国民投票運動中はブレグジットに反対していたが、英国民が求めていることだから、という理由で現在はブレグジットを支持している。メイ首相の主な主張は「ブレグジットはブレグジット」で、3月29日には、EU離脱に向けた2年間の手続きを発動。メイ首相は自身の交渉の最終目標を、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長(EU大統領)宛の書簡に記した。

メイ首相はなぜ総選挙を実施したのか

キャメロン氏の辞任を受け、メイ氏が首相に就任した。つまり、メイ氏本人が選挙に勝ったわけではない。首相官邸に引っ越した際、国民投票でブレグジットが決まるという激動の後しばらくは安定した時期が必要として、総選挙の前倒し実施の可能性を否定していた。次回実施予定の2020年まで喜んで待つと言っていた。

しかしイースター復活祭の祝日開けに、メイ首相は2017年6月8日の選挙実施に気が変わったと発表し、みんなを驚かせた。

メイ首相は、欧州首脳陣相手のブレグジット交渉で足元を固める必要性があるとの理由を挙げた。首相は、労働党やスコットランド国民党SNP、その他野党や、上院貴族院の議員が自身の戦略を阻止し挫折させようとして、英国が分断して政府の力がないとEUの首脳陣からみられるのを恐れていた。

総選挙で何が起こったか

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メイ首相のばくちは裏目に出た。保守党は過半数を失い、選挙戦前より議員数が減ったのだ。つまり、下院で確実に勝てるだけの十分な保守党議員数をメイ首相はもはや持っていない。

そのためメイ首相は、北アイルランドの政党、民主統一党DUPと取引をしている。DUPには10議席あり、少数与党政権を成立させられるのだ。DUPはまた、ブレグジットを支持しつつも、EU加盟国のアイルランド共和国との往来の自由を確保したいと考えており、つまりそれはEU内の自由貿易域となる関税同盟に加盟し続けることを意味する可能性もある。

メイ首相は選挙にあたり、より多くの過半数を取ってブレグジット交渉をより有利に進めるため、メイ首相に投票するよう国民に訴えていた。そこから判断すると、首相の立場は今や弱まり、離脱の取り決めについて政府内で表決を取る際に、反対意見の議員に手荒く扱われやすくなったということになる。メイ首相は、安定性と確実性を提供するために、首相であり続けたいとしている。

ブレグジット交渉は遅れるのか

遅れることはない。交渉は予定通り、6月19日に開始した。下の写真は、初回協議の様子。

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メイ政権が崩壊して労働党が政権を取ったら

それでもブレグジットは実施されることになる。労働党のジェレミー・コービン党首は、国民投票を再び実施する可能性を否定している。ただし、EUとの最終的なブレグジット合意を固める際に、議員は決定的な発言権を持つと発言している。つまり、よりよい取引に向け、英国は再び交渉段階に戻ろうとするかもしれないということだ。

650議席中12議席を確保した自由民主党は、「ハードブレグジット=強硬なEU離脱」(下記参照)に反対しており、どの取り決めについてであれ、国民投票を再び実施すると公約している。国民投票の際には、EU残留への運動を展開するとみられている。同党はまた、労働党や保守党を問わず、いかなる連立も否定している。

SNPのニコラ・スタージョン党首は、EU残留を支持したスコットランドが、単一市場への残留を含む何らかの特別措置をブレグジット後に受けられるよう求めている。ブレグジットの合意内容が最終的に固まる前に、スコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票実施を要求している。

経済は今のところどうか

キャメロン前首相とキャメロン政権で財務相を務めたジョージ・オズボーン氏、その他EUへの残留を支持していた幹部クラスの多くが、国民投票の結果が英国のEU離脱となった場合、すぐに経済危機が訪れると予測していた。住宅価格は下落し、不況になり失業率が大きく拡大し、大幅な歳出削減を実施するのに緊急予算が必要となるだろうと。

ポンドは実際、国民投票の翌日に急降下し、対ドルで15%、対ユーロでは10%それぞれ低い状態が続いている。しかしすぐに経済危機が訪れるとの予測については、英国経済は2016年に1.8%の伸びを示しており、当たっていない。この伸び率は、世界の工業先進国G7の中で1.9%のドイツに次いで2位だ。

物価上昇(インフレ)率は今年4月、2.6%となり3年半振りの最高水準を記録したが、失業率は下がり続け、過去11年で最低の4.8%だ。国家統計局によると、住宅価格の年間上昇率は昨年6月の9.4%から低下したが、それでも3月はインフレ率を上回る4.1%だった。

欧州連合とは

英語名称の頭文字から取られた「EU」と呼ばれることが多い欧州連合は、欧州28カ国が参加する経済および政治の同盟だ。第2次世界大戦後、貿易相手とは戦争を避けようとする傾向があるとの考えから、経済的協力を促進するために同盟が作られた。

以来、加盟国がまるで一つの国であるかのように、物資や人が基本的に自由に動ける「単一市場」へと成長した。加盟国19カ国で使用されているEU独自の通貨「ユーロ」や、独自の議会があり、今や環境、交通、消費者の権利、さらには携帯電話料金のようなものも含め幅広い規定を定めている。

第50条とは

「第50条」とは、EUを離脱したい国がある場合の計画だ。EU全加盟国が調印し2009年に立法化された協定「EU基本条約(通称リスボン条約)」の一部だ。リスボン条約が調印されるまでは、加盟国がEUを離脱するための正式な仕組みが存在しなかった。

第50条はわずか5段落と、非常に短い。そこには、いかなる加盟国もEUからの離脱を決められること、欧州理事会に通知の上、EUと離脱について交渉しなければいけないこと、合意までに2年あること、全員が合意すれば延長は可能、離脱国は離脱に関するEU内の協議に参加できないこと、などが定められている。

英国がEUから離脱するのはいつ

英国がEUから離脱するには、リスボン条約の第50条を発動させなければならない。50条を発動すれば、離脱の条件に合意するために双方に2年間という期間が与えられる。メイ首相は3月29日に第50条を発動したため、英国が離脱するのは2019年3月29日の金曜日ということになる。EU加盟国全28カ国が合意すれば、延長も可能だ。

英国で施行中のEU法はどうなる

保守党は、総選挙で勝ったので、「Great Repeal Bill」(大廃止法案)を制定する予定だ。これにより、英国内で最も重要な法律はEU法でなくなる。大廃止法案は、EU法全項目をひとまとめに英国の法律へと合体させるものと考えられており、その後は、政府が時間をかけて、維持、変更、削除すべき部分を決める。

労働党は、総選挙に勝ったら大廃止法案を廃案にして「EU権利と保護法案」に替える意向を明らかにしていた。この法案は、全てのEU法を英国法に移すものだが、項目の変更や廃止は絶対できない。労働党は、労働者の権利、消費者の権利、環境に関するEU法を維持したいとしている。

ブレグジットに関する最高裁での裁判は何だったのか

法廷闘争の後、英国の最高裁は今年1月、第50条発動に先立ち議会の承認が必要との判決を下した。2行のブレグジット法案が議会にかけられたのはそのためだ。労働党議員らには法案を支持するよう指示が下され、法案は下院で可決された。しかし、すでに英国にいるEU加盟国国民の権利保障と、EUとの最終合意には「実効力のある」議決が必要という点を盛り込むよう上院で修正された。下院がこれらの修正案を否決し、上院が要求を取り下げ、労働党も修正案への支持を取り下げたため、修正されていない法案が法律として成立した。これにより、メイ氏は英国の離脱を正式に通告する書簡をEUに出せることになった。

英国のEU離脱を誰が交渉するのか

メイ首相は、経験豊富な保守党議員でEU離脱を主張していたデイビッド・デービス下院議員を担当相として、ブレグジットの責任を負う省を立ち上げた。同じくEU離脱を主張していた元国防相のリアム・フォックス氏は新たに国際貿易担当相に、公式なEU離脱運動を主導したボリス・ジョンソン氏は外相となった。この3人が、EUとの交渉や新たな国際協定の模索にそれぞれ役割を果たすことになる。ただし、最終決定権を持つのは、メイ首相となる。

英国のEU離脱にはどのくらい時間がかかるか

第50条が一度発動されてしまえば、英国が離脱交渉できる期間は2年となる。しかしブレグジットのしくみがどうなっているのか本当に分かっている人は誰もいない。第50条は、2009年後半に策定されたばかりで、これまで適用されたことがないのだ。前外相でメイ政権では財務相に任命されたフィリップ・ハモンド氏は、国民投票の運動中は英国のEU残留を求め、英国の出口交渉の完了までに最長で6年かかる可能性があると示唆していた。英国のEU離脱の条件は、27カ国それぞれの国会で合意される必要があり、これには何年もかかると同氏は主張していた。

英国がEUの加盟国でなくなるまで、EU法は英国で効力を持ち続ける。英国は引き続き、EU条約や法律を順守することになるが、意思決定のいかなるプロセスにも参加することはない。

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Image caption ブレグジットまでの流れ

なぜ時間がかかるのか

何千もの項目を抱える、43年分の条約や合意をほどく作業は、決して単純ではない。これまで行われたことがないため、さらに困難を極めるだろう。担当者たちは、ある程度、交渉を進めながら調整していくことになる。中でも離脱後の貿易協定は、30以上もの欧州全土の国と地域の議会が全会一致で承認する必要があり、国民投票を実施する議会もあると考えられるため、最も複雑な交渉になるだろう。

英国とEUの交渉で重点的に取り組むのは

メイ首相は単一市場に残ることは目指さないと明言している。しかし今回の総選挙でその戦略が実現するかどうか、分からなくなった。一部の保守党議員や、総選挙で勢力を強めた労働党は単一市場からの離脱に反対しているためだ。労働党は、EUの一員でなくても、単一市場に残ることで得られるすべての利益を享受したいとしている。単一市場に残るということは、欧州司法裁判所の管轄に残り、人の自由な移動を保障するために欧州が抱える難民を制限なく受け入れなければならない。メイ首相は4月29日、離脱手続きを正式に始める手紙に署名した。この手紙から、メイ首相が離脱交渉で何を重点的に求めるかが明らかになった。

メイ首相はEUと新たな関税同盟を結びたいとしている。関税同盟とは、同盟国同士の商品に関税を課さず、同盟国以外からの商品については共通の関税を課すことに合意するものだ。現在、英国はEUの関税同盟に加盟しており、他国と独自の貿易協定を結べない。

ソフト・ブレグジットとハード・ブレグジットの違い

この2つの言葉は英国のEU離脱に関して議論する際、頻繁に使われてきた。どちらにも厳密な定義はないが、離脱後のEUとの距離感の違いを示している。

一方の極端な「ハード」ブレグジットは、単一市場を抜けてでも、人の自由な移動といった課題で妥協しないという離脱。そして対照的なのは「ソフト」ブレグジットで、ノルウェーが歩んだ道と同様に、単一市場に残る結果として人の自由な移動を受け入れなければならない離脱だ。

もしEUと合意に達しなかったら何が起きるか

メイ首相は悪い合意なら合意しないで離脱した方がましだと語っている。英国は貿易に関する合意がなければ、世界貿易機関WTOの規則の下で税関検査や関税をかけせざるを得なくなる可能性がある。

労働党は、合意なしの離脱は選択肢にすべきでなく、最終的なブレグジットの合意については議員に発言権を与えるとしたが、合意条件に関して2回目の国民投票を実施する可能性は否定した。

EU域内の貿易相手国は英国と貿易戦争を始めたくないため、英国が単一市場を抜けてもほとんど何も変わらないと主張する人もいる。また、海外とのモノの売買を行う英国企業の費用が増えると言う人もいる。 

単一市場へのアクセスがない場合、世界的な金融の中心地という英国の立場や、英国とアイルランドの国境がどうなるのかといった疑問もある。さらに、EU域内に住む英国人は居住権と無料で受けられる緊急医療サービスの権利を失ってしまうという懸念もある。

英国に住むEU市民に何が起きるか

少なくとも5年間合法的に英国に在住しているEU市民は「英国定住資格」が適用され、配偶者や子供を呼び寄せられることが、メイ首相の15ページにわたる提案書で分かった。

メイ首相は英国に在住している320万人のEU市民、並びに欧州経済地域(EEA)のメンバーではあるものの、EUに加盟していない3カ国とスイスの国民を安心させたいとした。

しかし将来の法的立場や権利は、EU離脱後もEU域内にとどまる120万人の英国人と同じものでなければならないとも指摘する。

EU側のブレグジット交渉を主導するミシェル・バルニエ主席交渉官は英国の提案が不十分であり、現行のEU法で保障されているものと同じレベルが必要とした。英国政府からより明確で野心的な提案を求めている。

英国側の提案の要旨は以下の通り。

  • 定住資格が与えられた人は現在同様に居住や仕事、教育、そして福祉が保障される
  • 資格取得の期限は決まっていないものの、2017年3月29日から2019年3月29日までの間となる
  • 国外在住のEU市民の家族は英国に戻り定住資格を申請できる
  • 規定の期日までに英国に5年未満在住しているEU市民は、引き続き英国で生活、仕事ができる
  • 5年以上在住すれば、定住資格を申請できる
  • 期日以降に英国に渡航した者でも一時的に滞在できる
  • しかし上記の者は永住権を得られる「見込みはない」ものとする
  • 当局が申請書を処理する時間を与えるため、「包括的な在留資格」が適用される可能性がある
  • 内務省は今後、働いていない英国在住のEU市民が「総合疫病保険」に入っているかを示す証拠を必要としない

労働党は政権を取った「その日」から、英国に住むEU市民の権利を保障するとした。

英国に5年間在住し、永住権を持っているEU市民は、ブレグジット後も権利が奪われる心配はない。

EU域内で働く英国民には何が起きるか

多くはEUと結ぶ合意の内容次第だ。もし英国政府がEU市民の労働許可に制限をかけると決めれば、ほかの国々も英国民に労働ビザを申請させるなど、同等の措置を講じる可能性がある。

英国で働きたいEU市民についてはどうか

この点についても、人材が不足している業種で技能を持った労働者に限って入国させるという、現在EU市民以外に適応しているような労働許可制度を英政府が導入するか否かの決断にかかっている。市民に助言を提供する団体、シチズンズ・アドバイスは、EU市民の権利はまだ変わっておらず、EU離脱の国民投票を受けて差別を受けたと感じる人には連絡をするようあらためて呼び掛けた。

ポンド安が店頭価格にどう影響するか

英国から海外旅行する人は、離脱を決めた国民投票後、ポンドで買えるユーロやドルが少なくなったことに気づいただろう。日々の支出に対する影響はもっと大きくなりそうだ。たとえポンドがいくらか値を戻しても、為替の専門家は、ポンドが国民投票の行われた2016年6月23日時点から少なくとも10%低い水準で長期的に推移し続けるとみている。

つまり、結果的に輸入品の価格がより高くなる。食品や衣料、住まい用品の値段の一部にはすでに価格上昇が見られ、大手スーパーチェーン「テスコ」とマーマイト製造メーカー間で起きた論争が最も顕著に物語っていたように、店頭価格を上げるか否かが問題になった。

最近発表された英国の4月のインフレ統計によると、消費者物価を表すCPIHのインフレ率が3年半ぶりの高値となる2.6に上昇し、費用に対する更なる上昇圧力が今後数カ月にわたって波及しそうな兆候を見せている。

移民は減るか

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メイ首相は、離脱を決定した国民投票で、英国民が移民削減を望んでいるという最も重要なメッセージの一つを受け取ったと語った。メイ首相は、入国者数から出国者数を引いた差である純移動の人数を年間10万人未満の「持続可能な」水準に下げる決意を持ち続けているため、移民削減が離脱交渉の焦点になると述べた。

労働党は、英国がEUを離脱したら人の自由な移動を終わらせなければならないと語った。働く、もしくは勉強するために英国に来る人に対してどのような制度を適用するか労働党はまだ明らかにしていない。

2016年に英国へ入国した純移動は推計24万8000人で、2015年から8万4000人減った。英国に入国した総数の内訳は、EU市民以外が26万4000人、EU市民が25万人、英国民が万4000人で、英国を出国したとみられる総数33万9000人のうち、11万7000人がEU市民だった。

国民投票が再び実施される可能性は

可能性はかなり低いだろう。保守党も労働党も共に、英国民はきっぱりと離脱に投票したのだから2回目の国民投票は民主主義に反して信頼を裏切る行為だと主張し、新たな国民投票の可能性は否定した。

議員はブレグジット合意を採決するか

採決する。メイ氏は自身の優先順位をあきらめざるを得ない状況を避けるため、自らの交渉姿勢に関する採決は懸命に回避しようとしているようだが、2年に及ぶ交渉の末に残りのEU加盟国と合意した内容について、議会上下両院の承認を求める採決を行うと約束している。

労働党も議会での採決を約束しているが、保守党とは違い、労働党は合意内容が気に入らない場合に英国を再び交渉の場に戻す権限を議員に与えたいとしている。保守党の採決は、最終合意案を「承認するか、できなければ離脱する」ことが基盤になっている。

どんな取り決めでも欧州議会の合意を得なければならない。英国人の欧州議会議員はそこで投票する機会があるというのは触れておくべきだろう。

EUへの旅行にビザが必要になるか

英国民がEUに住んだり働いたりする権限は制限される可能性があるが、旅行者を抑制する意図はなさそうだ。EU加盟28か国と欧州経済地域(EEA)に加盟するアイスランドやリヒテンシュタイン、ノルウェー以外に英国民がビザなしに90日間旅行できる国は多くあり、そうした手続きは欧州各国と交渉できる可能性がある。

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パスポートはまだ使えるか

使える。パスポートは英国の文書であり、EUパスポートといったものはないので、パスポートはそのまま変わらない。BBCのクリス・モリス記者によると、政府は理論上、望めば、現在EU加盟国で統一されている色を変えることはできる。

英国はまだ単一市場に残っているという人もいる。だが、単一市場とは何か

単一市場は、EU支持者からEU最大の成果とみられており、そもそもEU設立の重要な根拠の一つだった。英国は、当時共同市場として知られていた市場に参加する前、欧州の自由貿易圏の加盟国だった。自由貿易圏の国々は関税なしに互いに取引ができるが、加盟国が経済統合する必要がないため、単一市場とは異なる。

1992年に完成したEUの単一市場は、あたかも一つの国であるかのようにEU域内でモノやサービス、資本、人の移動を自由に行い、EU域内ならどこでも事業を創業したり、職を見つけられる。単一市場は貿易の活性化、雇用創出、価格低下を意図していたが、製品が同じ技術水準で作られるよう共通の法制化を必要とし、「公平な競争の場」を確保するために別の規則を課している。

共通の法制化はあまりに多くの細かな規則を作り、加盟国が自国の内政をめぐる統制を奪われるとの非難もある。貧しい国からより富める国へ移動する大量の移民も、移動の自由という規則に疑問をもたらした。メイ首相は英国が単一市場に残ることを否定した。

一方、労働党のコービン党首は、単一市場への残留もEUとの交渉の選択肢に入れなくてはならないと主張している。

過去にEUを離脱した国はあるのか

EUを離脱した国はない。しかしデンマークの自治領グリーンランドは、より高度な自治権を獲得した後の1982年に国民投票を行い、48%反対に対し、52%が離脱に賛成、交渉期間を経て正式に離脱した。

スコットランドにとってEU離脱

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Image caption スタージョン氏はスコットランドの独立を問う住民投票を再び実施する可能性が高いと語った

二コラ・スタージョン自治政府首相は国民投票の際、離脱が支持されたことに対し、スコットランドは残留に投票したのに、EUから離脱しなければならないのは「民主的に受け入れられない」とした。スタージョン氏は、メイ首相が単一市場に残らないのなら、スコットランドは「ハード・ブレグジット」、あるいは英国から独立し、場合によってはEUに残留するかを選ぶ権利があると主張。2度目の独立投票実施を正式に要求した。2018年秋から2019年春の間に実施したいとした。

北アイルランドにとっては

北アイルランドとEU加盟国であるアイルランド共和国の間にある地続きの国境の扱いは、ブレグジット交渉の重要な部分になるだろう。現在は英国とアイルランドに共通通行地域がある。

昨年の国民投票ではスコットランド同様、EU残留に投票した。北アイルランドの投票結果は残留が56%、離脱が44%だった。

北アイルランド議会の機能が停止するまで、連立政権の一翼を担っていたシン・フェイン党は、英国からの離脱を問う住民投票を実施し、一刻も早くアイルランドと統合すべきだと呼びかけた。

保守党はシン・フェイン党の呼びかけを拒否。アイルランド統合に世論が動いた証拠はないと指摘した。

一方でデイビスEU離脱相は、万が一北アイルランドで英国離脱が支持されたとしても、「新たな国としてではなく、すでにEUに加盟している国の一部となるだけだ」とした。

さらに「手続きの要件についての詳細は欧州委員会が答えるだろう」とした上で、「北アイルランドについて明快な立場を取っている。英国の一部でありつつも、アイルランドと強いつながりがある現在の憲法上の立ち位置を支援している」と締めくくった。

労働党のコービン党首は北アイルランド議会が必要だと考えれば、アイルランド統合を問う住民投票を実施すべきだとした。

この問題はメイ首相が民主統一党(DUP)と閣外協力で合意をして少数与党の政権を結成したことで、さらに複雑化した。保守党のサー・ジョン・メージャー元首相など批判的な立場の人は和平合意を脅かし、英政府が北アイルランドでの権力分担をめぐる取り決めを元に戻し、北アイルランドの制度を保持する議会を支援する「公平で誠実な仲介者」とみなされなくなると警告した。

今のところブレグジットにかかる費用はどれぐらいで、最終的にどれぐらいかかるのか

ブレグジットによる英国経済への長期的な費用と利益については大いに意見が分かれている。EUは英国が未払いの請求金額をすべて支払ってから離脱することを望んでいるのは間違いない。

請求金額の規模について、正式な試算は出されていない。EU職員への年金給付やロンドンに拠点を置いていたEUの関連機関の移転費用、EU予算への未払いの拠出などが含まれている。

500億~1000億ユーロ(約6兆3600億~12兆7300億円)にかけての額がささやかれている。英政府は金銭的な債務は履行するとしながらも、デイビスEU離脱相は「1000億ユーロまでは出さない」と言及した。

英国はブレグジットの「離婚の慰謝料を支払う」合意を行わずに離脱することも可能だが、おそらくそれは全員が裁判所に出向く結果となるだろう。

妥協点が見出され、支払いが何年にもわたって分散されれば、経済を圧迫する規模ではないかもしれない。

しかし「慰謝料」の支払いはブレグジット交渉が進められるにつれ、重要な争点となるだろう。

年金や貯金、投資や住宅ローンはどうなる

英国民投票の選挙活動中、キャメロン前首相はEUを離脱すれば、年金のいわゆる「トリプル・ロック」が脅かされると主張した。この制度は、年金支給額の伸び率をインフレ率、賃金上昇率、もしくは2.5%の3つの指標のうち、最も高いものとするもの。

メイ首相は、保守党のマニフェストから「トリプル・ロック」の公約を正式に削除し、2020年から「ダブル・ロック」に替えた。年金の伸び率が、少なくとも賃金上昇率やインフレ率の水準とするものだが、最低保障の2.5%ではなくなる。

労働党は、トリプル・ロックを保つと確約した。

今のところ、金利が引き下げられ、そのため住宅ローンやその他の借入金利が低く抑えられている。イングランド銀行が、インフレの上昇を懸念して金利引き上げを考慮しているという兆候はまだない。しかしもしそうなったとしたら、住宅ローンやローンの返済の方が高くつくが、貯金する人には朗報となる。

欧州旅行での買物時の免税措置は復活するか

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ジャーナリストやライターはソーシャル・メディア上で、ブレグジットの「良い面」または「希望の兆し」として、買い物時の免税措置が再導入されることを歓迎した。ブレグジットの結果に出てくるほとんどのもの同様、実際に再導入されるか否かはEUとの交渉の結果いかんによる。英国とEU間の「関税同盟」が終わるか続くかによるのだ。

欧州健康保険カードはまだ有効か

今のところは有効だが、長期的な見込みについては誰にもはっきりとは分からない。欧州健康保険カード(EHIC)とは、英国外のEU加盟国および一部の非EU加盟国で旅行者が緊急の処置を必要とする病気やけがに遭った場合、公的診療を受けられるもので、これはEUとしての取り組みではない。単一市場EEAにスイスを加えた参加国間で交渉されたものだ。(複雑だがスイスはEEAに加盟していないが、単一市場へのアクセスはある)つまり、将来的に英国人がEHICでカバーされるか否かは、英国がEEAとの関係を断ち切るか否かにかかっているかもしれない。

自動車は新しいナンバープレートが必要か

BBCのクリス・モリス欧州特派員によると、おそらく必要ない。自動車登録やナンバープレートに関するEU全域の法律は存在せず、EUの旗のシンボルは自発的に使われている識別方法で義務ではないからだ。英国の運転免許庁は、英国が離脱に投じた場合、ナンバープレートのEUの旗がどうなるかについて協議されたことはないとしている。

下院議員はEU離脱を阻止できるか

現議会の多くの下院議員、つまりSNPと自由民主党の全議員や、労働党のほぼ全員、保守党の多くの議員が残留を支持していると仮定して、必要な法律が下院を通るだろうが国民投票の結果に法的な拘束力はなく、やはり議会が、1972年の欧州共同体法の廃止に始まり、EUから英国が抜けるための法律を通過させなければならない。

離脱の合意もまた、議会が批准しなければならない。下院図書館の報告書によると、上院貴族院と下院のいずれかまたは両方が、否決する可能性がある。

欧州人権裁判所の判決に従わなくてよくなるのか

フランスのストラスブールにある欧州人権裁判所(ECHR)は、EU機関ではない。ロシアとウクライナを含む47カ国が加盟する欧州評議会が設立した。つまりEUを離脱してもECHRの判決が英国に適用されないことにはならない。

保守党は英国権利章典を支持し、ECHRの判決を英国の判例として扱うよう英国の裁判所に求める人権法を撤廃するために尽力している。その一環として保守党政権は、ECHRの判決を覆すためにイングランドとウェールズの法廷の権限を引き上げる対策を発表するとみられるだろう。

労働党、自由民主党、緑の党は全て、人権法を撤廃するという保守党の提案に対する反対運動を展開した。

EUはまた、自身の欧州司法裁判所を有しており、その判決はEU機関や加盟国で拘束力がある。同裁判所が下す決定は時に英国で議論となり、ブレグジット支持者はその権力を阻止する法律を即座に制定するよう求めている。

英国は将来、EUに再加盟できるか

カティヤ・アドラーBBC欧州編集長は、何の割り戻しもなく最初から始め、EUと加盟の協議に入らなければならないと話す。各加盟国が、英国の再加盟に合意しなければならない。しかしアドラー氏は、欧州の他の場所でも選挙が行われるなか、他国の指導者は英国の要求にあまり寛大でないかもしれない。新たに加盟した国は、関連する基準を満たした場合、通貨にユーロを導入することが求められているが、英国は交渉によってはユーロを導入しなくてもよいかもしれない。

英国のEU離脱を求めたのは誰か

英国独立党(UKIP)は、2015年の総選挙では総投票数の13%にあたる400万票近くを獲得したが、今年の選挙ではその約4分の1に激減した。同党は何年にもわたり、英国のEUからの離脱を訴え運動してきた。国民投票の運動では保守党議員の約半数がUKIPの離脱運動に加わり、その中にはボリス・ジョンソン氏や5人の閣僚当時がいた。労働党の一部や北アイルランドのDUPもまた、離脱に賛成していた。

EU離脱支持者が離脱を求めた理由は

離脱支持者は、EUが事業に多くの規制をかけたり、見返りがほぼないのに年間何十億ポンドの加盟料を課し、英国の足枷になっていると話していた。また、他のEU加盟国と共通の意思決定により作られる法律でなく、英国独自の法律を再び作ることを求めていた。

移民もまた、ブレグジット支持者の大きな問題だった。離脱支持者は、英国の国境を英国が完全に管理し、英国にやって来て暮らし、働く人の数を削減したいと考えていた。

EU加盟国の基本原理の一つは、「往来の自由」で、つまり他のEU加盟国に行って暮らすためにビザを取る必要がないということだ。離脱派の運動はまた、EU加盟国との「統合の深化」という考えや、彼らが「欧州合衆国」の設立に向かう動きとみなすものに反対した。

英国のEU残留を求めたのは誰か

当時首相だったデイビッド・キャメロン氏は、残留運動を主導し、英国が残留を決めた場合、英国の加盟条件を変更することで他のEU首脳らと合意していた。

合意では、例えば大勢の移民の受け入れなど、英国の人々がEUについて問題だと思っているいつかのことを解決するため、「特別な」地位が得られるとしていた。しかし批判的な向きは合意ではほとんど何も変わらないだろうと指摘していた。

キャメロン政権のうち、16人の閣僚がEU残留を支持していた。この中には、キャメロン氏の後任のメイ首相も含まれる。党内でも意見が分かれ、国民投票の運動中、保守党は中立の立場を取った。労働党とスコットランド国民党、プライド・カムリ、緑の党そして自由民主党はすべてEU残留を支持した。

また米国のバラク・オバマ前大統領もEU残留を支持、フランスやドイツなどのEU諸国の指導者も残留を支持していた。

なぜ残留を支持していたのか

選挙中、EU残留を支持していた人たちは、加盟国であることで大きな恩恵を受けられていると主張していた。EU諸国への輸出も容易であり、移民の多くは若く、雇用を求めているため、経済成長をもたらし、公共サービスの担い手にもなると。

またEUを離脱すれば英国の国際社会での地位が損なわれ、単独でいるより加盟国でいる方が地位がより安定するとも主張していた。

ビジネスはどうなる

一部の例外を除いて、大企業はEU残留を支持していた。加盟国でいた方が資本や労働力、商品を動かすのが容易だからだ。

ロンドンは金融ハブという重要な役割を担っていただけに、どれぐらいの雇用が他のEU諸国の金融の中心都市に流れてしまうかが懸念されている。米大手銀行のうち、4社はロンドンに残り、シティの地位の維持に貢献したものの、HSBCはパリに約1000人分の雇用を移動させることがBBCの取材で明らかになっている。

英国の一部の輸出業者はポンドの価値が下がったことで注文や問い合わせが増えたと言うが、それ以外はあまり楽観的ではない。欧州市場向けの商品はEUの工場で生産されなければならないのではないかと怖れているのだ。

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Image caption ボリス・ジョンソン氏はEU離脱を支持する運動で主導的な役割を果たした

超党派の残留支持派団体「ブリテン・ストロンガー・イン・ヨーロッパ(英国は欧州にいてこそより強くなれる)」は、小売大手マークス・アンド・スペンサーの元会長であるローズ卿が主導していた。

キャメロン前首相やジョージ・オズボーン前財務相などの保守党の重鎮らやほとんどの労働党の議員らによって支えられていた。その中には労働党のコービン党首や労働党の残留支持団体を率いていたアラン・ジョンソン議員も含まれる。

また自由民主党、プライド・カムリ、北アイルランドの北アイルランド同盟党と社会民主労働党、そして緑の党もこの団体を支持していた。

この団体には688万ポンド(約10億円)の資金が寄せられた。スーパーマーケット業界の有力者で労働党議員のセインズベリー卿から2つの寄付があり、あわせて230万ポンド(約3.4億円)が寄せられた。他にもヘッジファンド経営者のデイビッド・ハーディング氏から75万ポンド(約1.1億円)、外貨両替専門店トラベレックスの創設者で実業家のロイド・ドーフマン氏とネイサン・カーシュ氏自身の会社を通して寄せるがそれぞれ50万ポンド(約7300万円)など、有力者が残留派に寄付を寄せた。

スコットランド国民党は保守党と活動を共にしたくなかったため、独自の選挙活動を展開した。他の小さな団体も活動を行った。

離脱派は「ボート・リーブ(離脱に投票を)」を結成。党をまたいだ団体で、マイケル・ゴーブ議員やボリス・ジョンソン議員などの保守党重鎮に加え、ジゼラ・スチュワート議員やグレアム・ストリンガー議員など一部の労働党議員、イギリス独立党UKIPのダグラス・カーズウェル議員やスザンヌ・エバンズ議員、そして北アイルランドからは民主統一党DUPの議員らが支援した。

保守党の元財務相であるローソン卿、社会民主党SDPを結党したオーウェン卿も関わっている。ファーマーズ・フォー・ブリテン、ムスリムズ・フォー・ブリテン、アウト・アンド・プラウドや反EUのゲイ支援団体など、様々なコミュニティで支持を広げることを目指した。

ボート・リーブには全体で278万ポンド(約4億円)の資金が寄せられた。最大の支援者は50万ポンド(約7300万円)を寄せた実業家のパトリック・バーバー氏。保守党の元財務局長だったピーター・クルーダス氏は35万ポンド(約5100万円)、また建設業界の有力者テレンス・アダムズ氏も30万ポンド(約4400万円)を寄せた。

他の離脱派有力者にはイギリス独立党UKIPのナイジェル・ファラージ元党首がいる。ボート・リーブには関わらず、党独自の運動を展開した。労働組合・社会主義連合も独自の選挙活動を展開し、他の小さな団体も参加した。

EUの公用語は英語のまま

カティヤ・アドラーBBC欧州編集長によると、答えはイエスだ。「EUには他にも27カ国が加盟しており、将来EUへの加盟を望む国もある。フランスにとっては残念だが、EUでの共通語は主に英語」と言う。

ブレグジットの影響で商品の安全性が損なわれる可能性は

おそらくないだろう。英国が現在の安全基準を廃止するか否かにかかっているものの、EUへの輸出を検討している企業であれば、どこでもその安全基準に従わざるを得ないだろう。企業が同じ種類の商品を2パターン作るというのも考えにくい。

ここからはBBCに送られてきた質問をまとめて紹介する。

離脱派と残留派のそれぞれの議員を教えてほしい

この質問を送ってきたケンブリッジのエドワードさんに良いニュースがある。今まさにそのリストを作成している。こちらが最新版(英語)だ。

英国はEUにいくら拠出し、その見返りにいくら受け取っているのか

ホーンチャーチのナンシーさんの質問に答えると、英国はEU予算への拠出額が受取額よりも多い加盟国10カ国のうちの1国で、英国よりも多く拠出している国はフランスとドイツだけだ。2014/15年はポーランドが一番の恩恵国で、次いでハンガリー、ギリシャだった。

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Image caption 英国はEU予算への拠出額が受取額よりも多い加盟国10カ国のうちの一つ

英国は故サッチャー元首相が交渉した毎年の払戻金と、地域開発補助金や農家への支払いの形での返金を得ており、2014/15年は合計46億ポンド約6700億円に上った。最新の財務省の数字によると、2014/15年の英国の純拠出額は88億ポンド約1.3兆円で、2009/10年のほぼ2倍だった。

会計検査院は、民間企業や研究助成のため大学に直接支払われるEUの資金も含めた別の計算式を使い、2014年の英国の純拠出額は57億ポンド(約8400億円)と示した。

退職後、スペインあるいは他のEUの国で暮らす場合、医療費は補償されるのか

イーストサセックスのデイビッドさんは、自分の退職後の計画がどうなるか心配している。これは、どうなるか断定的には言えない問題の一つだ。現在、スペインに多く住んでいる英国人はスペイン人のかかりつけ医に無料で診てもらうことができ、入院治療費は英国民保険サービス(NHS)が支払っている。スペインで永住者になると、スペインがこのような英国人の入院治療費を支払う。

フランスなどの他のEU諸国では、労働年齢の英国人は現地のフランス人と同額の医療費を支払うことになっているが、定年退職すると、退職した人の医療費はNHSが支払う。

下院図書館研究資料によると、英国が単一市場、すなわち欧州経済地域(EEA)に残る場合、このやり方を維持できるかもしれないとのこと。英国がそれぞれの加盟国と貿易協定を交渉しなければならない場合、英国はNHSを通じてEU域内に住む英国人の医療費を払い続ける、あるいは英国人が引き続き外国に住み続ける場合で彼らの居住国が支払いを拒否する場合、自分で医療費を負担しなければならないと英国は決めるかもしれない。

保護動植物はどうなるのか

ロンセストンのディーさんの質問は、英国がEUを離脱する際、コウモリなどの保護動植物を規定するEU法はどうなるのかというもの。答えは、これらの法律は維持されるだろう。少なくとも最初は。離脱決定の投票を受けて、政府は正式な離脱日までの2年間でEUが制定したすべての法律を精査し、どの法律を残し、どれを廃止するかを見極めるだろう。

EUが指定する特別保全区域と特別保護区域は精査され、どのような代替の保護策が適用できるか検討される。同じプロセスは、コウモリやその生息地に関する欧州保護動植物の法案にも適用されるだろう。

政府は新しい英国の法律が施行される前に、EUの法律を破棄することで生じる法律が存在しない空白期間を避けたいと考える。また、政府は環境保護を規定する他の国際的合意に引き続き準拠するだろう。

移民の子供への給付金と福祉の支払いへの変更で、英国はいくら削減できるか

ドーセット州プールのマーティンさんが知りたいのは、キャメロン前首相がブリュッセルでEU側と交渉した給付金の削減から、国民は何が得られるかというもの。

詳細は一度も詰められていないので、正確には分からない。英国歳入税関庁によると、2万人のEU市民が、自分たちの国の3万4000人の子供たちに関して、合計約3000万ポンド(約44億円)の給付金を受領している。

しかし、キャメロン前首相は望んでいた包括的な禁止ができなかったため、削減の総額はそれよりもはるかに少なくなっていただろう。代わりに、給付金支払いは子供の住む国の物価に連動するようになった。前首相の「緊急ブレーキ」が作動すると、前首相は、英国に来るEU移民の家族のうち40%もの家族が年間で平均、6000ポンド(約88万円)の在職給付金を失う可能性があると指摘した。雇用年金局は、12万8700~15万5100人が影響を受けると予想した。だが、削減は段階的に導入される。新たにやって来る移民は税の控除やその他の在職給付をすぐには受けられず、4年間にわたって段階的に利用できるようになる。なお、給付率は決まっていなかった。この計画は今のところ実行されていない。

英国は欧州最大の音楽祭「ユーロビジョン」から除外されるのか

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Image caption ユーロビジョンに出場するためには、欧州放送連合(EBU)の加盟国でなければならない。EBUはEUとは独立した組織だ

この質問をしたピーターバラのソフィーさんは心配する必要はない。英国ユーロビジョン・ファンクラブのアレスダイヤー・レンダル会長は、「全ての参加国は欧州放送連合(EBU)の加盟国でなければなりません。EBUはEUとは完全に独立した組織で、EU内外の国が加盟しており、イスラエルのような欧州以外の国も入っています。実際、英国は1957年、欧州経済共同体EECに加盟する16年前からユーロビジョンに出場し始めました」と語った。

ブレグジットで住宅価格は下落したのか

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これまでのところ、答えはノーだ。だが、伝え聞いた話によれば、ロンドン中心部の高級住宅市場の価格が下落しており、住宅価格の年上昇率が国民投票時点の9.4%から12月には7.2%に低下したそうだ。

EU反対派が不満を言う「お役所仕事」とは何か

リバプールのゲドさんは、「お役所仕事」とは雇用の権利と環境保護を表す遠まわし表現ではないかと考えている。シンクタンクのオープン・ヨーロッパによると、最も費用の高いEUの規制上位5つのうち、4つは雇用あるいは環境に関連している。同シンクタンクが47億ポンド(約6900億円)かかると指摘する英国再生可能エネルギー戦略が最も高い。週の労働時間を48時間に制限する労働時間指令は年間42億ポンド(約6100億円)、派遣社員に正社員と同等の多くの権利を与える派遣会社社員指令は年間21億ポンド(約3100億円)かかり、どちらも上位に入っている。

将来の英国政府が、EU離脱の決定後にこのような規制を英国法で同じように設置することはできる。それに、いわゆる「お役所仕事」の費用は必ずしも直ぐにはなくならない。英国が「ノルウェーのモデル」に倣うと選択し、欧州経済領域に残れば、EUが作った法律の大半は残ることになる。

英国は環大西洋貿易投資パートナーシップTTIPの一員になるのか

ボルトンのスティーさんの質問。現在、EUと米国の間で交渉中のTTIPは世界史上最大の自由貿易圏を作り出す。

TTIPの擁護者は、英国のキャメロン前首相を含め、TTIPによって米国からの輸入品が安くなり、英国から米国への輸出が100億ポンド約1600万円程度拡大すると考えている。

ただ左派の多くは、野党・労働党のコービン党首を含め、TTIPにより多国籍企業がより強い力を持ち、公共サービスの質が低下し、食品基準が損なわれ、基本的権利が脅かされるのではないかと危惧している。

トランプ米大統領はTTIPを好ましく思っていないため、今は合意に至る可能性が低いとみられている。ただ、何が起こるにせよ、EUを離脱すると、英国はTTIPの一員にはならず、米国と独自の貿易協定を交渉しなければならない。

EU離脱はNHSにどんな影響があるか

ウィッドネスのパディーさんの質問は、EU離脱により現在いる医者の数やNHSにどんな影響があるかというもの。

これはブレグジットの国民投票においても論点になった。離脱派が毎週3億5000万ポンド(約500億円)と主張する英国からEUに支払われる負担金を、代わりにNHSに使うことができると主張していたからだ。

国民投票前、ジェレミー・ハント保健相は、EUを離脱すると大幅に予算が削減され、医者や看護師が国外に大挙して出ていくと警告した。離脱陣営は保険相の介入を「怖がらせようとしている」と一蹴し、EU加盟の負担金はNHSのような国内のサービスに使えると主張した。

国民投票以来、NHSへの支出は計画通り、以前と同程度で推移している。NHSで働くEU市民は英国にとどまる権利を得るとみられている。ただし、英国のEU市民とEU域内の他国にいる英国民の待遇の詳細については、まだ最終的には決まっていない前述の回答をご覧ください。

サリー・ミラーさんは9年前、スペインに家を買い、5年以内にそこで退職後の生活を送ろうと計画している。ミラーさんの質問はブレグジットがそれにどのような影響があるかというもの

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BBCのケビン・コノリー記者の回答

自由な人の移動、EU市民が英国に住み働く権利は、ブレグジットの国民投票においても当然非常に大きな焦点で、離脱交渉においても大きな部分を占めます。

英国側からはすでにかなり発言を聞いています。政府は英国内でのEU諸国の国民、およびEU域内での英国民の地位と権利を守ることが政府の早期優先事項の一つで、特に政府は互恵的な合意を求めていると言います。

よって、雰囲気は前向きかもしれません。ただ唯一確実に言えるのは、保証はまだ何もありませんが、自由な人の移動の問題は来るブレグジット交渉の中で主要な部分を占めます。

ジョナサン・イートンさんはオランダ人の妻とオランダで暮らしている。英国に戻らなければならなくなった際、どのような給付金や住宅の権利があるのだろうか

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BBCのノーマン・スミス政治担当副編集長の回答

端的に答えると、給付金を得るための簡単な方法はありません。現状、ブレグジットはさておいても、1994年に導入され、EU市民同様に英国民にも適用される常居所試験と呼ばれる試験に合格しなければなりません。

規則が厳しくなったため、給付金の種類によっては、外国にいた場合、帰国して数カ月間は試験への申請すらできません。例えば、失業者手当の場合、帰国後3カ月間はこの手当に申請するための試験を受けることすらできません。これは、EU市民が英国に来てすぐに給付金を得るのを防ぐためです。

3カ月後に試験を受けることができます。試験では、英語力、英国に来る前に仕事を探すためどんな努力をしたかを見ます。また、英国とどれほど強いつながりがあるか、英国に不動産を所有しているか、あるいは家族がいるか、滞在して働こうとしているか、あるいはまた外国に戻るかも考慮されます。

ただ試験を受け合格すれば、収入面で通常の要件を満たし、求職中であることを見せる限り、さまざまな給付金を申請する権利を得られるはずです。これは、低所得者向けの給付制度「ユニバーサル・クレジット」に完全に移行しても、続く可能性が高いでしょう。

全体の制度の中で一つ不明なのは、外国にいる英国人の権利を保証する点において、ブレグジット交渉はどうなるのかということです。

それがどういったものになるか、外国居住者が英国に戻って来る時に、給付金の早期申請が可能になることに影響するかは分かりません。

英国がEUを離脱すると、欧州健康保険カードはどうなるのか。(テリー・ハントさんの質問)

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ノーマン・スミス記者の回答

現在、私たちはEUの別の国で少し体調を崩しても、ほとんど問題ないと確信できます。なぜなら、その国の国民がすでに受けているのと同じような医療を受けられるからです。

それには、処方箋、総合診療医の診療、入院費用も含まれます。EUを離脱する際に何が起こるかは、他の多くのブレグジットに関する事柄と同様、不明です。現行制度がそのまま続くかもしれません。

しかし、もしそれが不可能であっても、互恵的な医療の権利についてそれぞれの国と個別の合意を結ぶことができるかもしれません。オーストラリア、イスラエル、ロシアなどの多くの国々とすでにそのような合意があるためです。しかし、このような互恵的な合意に達することができるかの保証はありません。

そのため、私の予想では、現行の医療保障を維持することが全員の利益になるでしょう。それが上手くいかない場合、外国で旅行中はビタミンを取り続け、レムシップ(訳注:英国で幅広く使われている風邪薬)を荷物に入れ、冷たいすきま風が入ってくる窓から離れておくことをお勧めします。

新しいパスポートと運転免許証を買わなくてはならないのか。欧州でそれを自由に使う権利はブレグジット後、なくなってしまうのか、(フランシス・リーさんの質問)

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ケビン・コノリー記者の回答

現在、英国のパスポートは「European Union(欧州連合)」の文字が印字されており、英国の運転免許証にはEUを象徴する青い四角と黄色の旗が記されています。ブレグジット後はおそらくそれが変わりますが、その変更は段階的に導入されるでしょう。なので、古いパスポートや免許証の期限が切れる時に新しいデザインのものを取得するでしょう。私の記憶では、英国がEUに加盟した時がそうでした。結局、他の方法は費用が高くなり、変更申請が殺到して制度的に対応できなくなるリスクがあります。

パスポートや免許証を自由に使う権利は興味深い質問です。移動の自由への制限の話をする時は通常、別の国で生活し働く自由のことを言います。英国がその点でEUに制限をかける場合、EUから何かしらの反応があると予想されます。

しかし観光分野では、多くのEU域外の国民が英国にビザなしで90日間まで滞在できます。ブレグジット交渉の中で、英国にとって類似の取り決めが話し合われると予想されます。

双方がお互いの観光客を必要としています。また、結局のところ、英国の免許証で米国内で運転できるなら、将来、同じことが欧州でできると想定してもおかしくはなさそうです。

首相と政府が欧州司法裁判所ECJの圧制から離れたいのは明白だ。バリー・フライヤーさんは、なぜECJよりもはるかに憎まれている欧州人権裁判所機関からの脱却は無視されているのか、と質問。

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ケビン・コノリー記者の回答

当然この2つの裁判所は別々の機関であるため、政治も別々です。重要なこととして、欧州人権裁判所はEUの機関ではないため、そこから抜けるという協議はブレグジットの議論において重要ではありませんでした。

ECJは欧州連合の主要機関の一つであり、EU法を執行しています。そのため、ECJは将来の貿易協定を監督する役割を担っているかもしれませんが、ブレグジットの目標の一つは、英国をECJの管轄から外すというものでした。

バリーさんが指摘したように、ECJよりはるかに物議を醸すことがある欧州人権裁判所はEUではなく、欧州評議会の加盟国が設立した機関です。欧州評議会は、EU加盟国ではない国々も加盟するEUとは別の機関です。

この欧州人権裁判所が、英国で問題となったイスラム教聖職者アブ・カタダ氏の強制送還の阻止や受刑者の選挙での投票権の確立などの判決を出しました。EU離脱によってもこれは何も変わりません。

エイドリアン・ウォリスさんは小さな電機会社を経営している。ウォリスさんの質問は、ブレグジット後の輸出関税について、またそれがウォリスさんの事業にどんな意味を持つかというもの

ケビン・コノリー記者の回答

英国がEU域内にいる限り、関税が話題に上ることはあまりありませんでした。

それは、欧州経済地域(EEA)内では全ての貿易が無関税だからです。加えて、EUは他の52カ国とも貿易協定を結んでいます。

ブレグジット後、英国は自国だけで新たな合意に向け交渉していかなければなりません。それは問題でもあり、チャンスでもあります。

例えば、EUが農産物に課しているように、大切にする事業を保護するために外国の輸入品に関税をかけることができます。ただ、この場合、貿易相手国から報復を受けるリスクがあります。

この全てにおいて鍵となる組織が、世界貿易機関WTOであり、現在、英国はEUへの加盟を通じてWTOに加盟しています。

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良い知らせの一つは、EUを離脱すれば、英国は自動的にWTOの一員になることです。

それは重要です。なぜなら英国が新たな貿易協定を交渉している間は、それには何年もかかる可能性がありますが、WTOの規則に基づいて貿易が行われるためです。

現在、食料品以外の項目については、平均約2.3%の関税が課されています。

しかし例えば、EUが英国からの自動車の輸入に10%の関税をかけるとします。すると、英国も同様の関税をドイツやフランスの自動車に課すかもしれません。

理論上は、それにより、全ての国が自国の消費者のためにより良い合意を締結しようとするインセンティブが働くと経済学者は言うでしょう。

問題は、こういったことには数年、もしかしたら何十年もかかるかもしれません。また国ごと、業界ごとに合意が締結される傾向があります。

そのため、もしウォリスさんが自分の事業への影響を見極めようとしているのなら、残念ながら辛抱強く待たなければなりません。

たぶん、かなり辛抱強く。

EU離脱は欧州での英国の長期的な政治的影響力にどのように作用するかピーター・ホアさん質問

ノーマン・スミス記者の回答

EU域外での影響力がどうなるかについては、基本的に2つの見方があります。

一つ目は、英国がEUなどの組織を通じて世界で力と影響を行使するが、英国自体の力ははるかに弱まるというものです。

二つ目は、EUの他の27カ国の邪魔がなくなり、英国が様々なことを始め、世界の舞台でより独立し、自信を持ち、積極的に主張する役割を担い始めるというものです。

私の見方は、おそらく状況はあまり大きくは変わらないと思います。

その理由は、英国は依然として国連や北大西洋条約機構(NATO)など重要機関の一員で、今後もEUのパートナーと協力していきます。例えば、フランスとは引き続き防衛面で緊密に連携していきます。

今後も英国は同じ英国ですし、強い軍事力を持ち、豊かで、核兵器を保有する国です。なので、ブレグジット後に突然みんなが、英国が全然違う国になったとは思わないでしょう。

他の国もEUを離脱する可能性は高いのか。もしそうならば、新たな自由貿易圏を作れるかデイビッド・ジョンさんの質問

ケビン・コノリー記者の回答

面白いことに、つい先日この質問について、フランスの保守系でかなりの親欧州派の政治家と話し合っていたところです。彼いわく、極右・国民戦線が望むように、もし明日フランスで投票があれば、フランスはEU離脱に投票するだろうと。

ただおおむね、EU離脱の考えが大陸を席巻し、EUへの反乱を起こすような大きな波は今後あまり起こりそうにありません。例えば、アイルランドのような国が税金についてEUとの小競り合いがある時でも、アイルランドの政治家は確かにうっとうしがりますが、欧州の大半の主流の指導者たちは、EUが何十年も平和と繁栄をもたらしたという考えと共に育ってきました。

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多くの指導者たちは、EUの多くのことについて、いら立ちを感じていますが、いら立つこととEUの恩恵を比べても、恩恵の方がはるかに大きいと大体は主張します。ポーランドやハンガリーのような欧州懐疑派が強い国でも、EUへの加盟により非常に大きな財政的恩恵があるという健全な意識もあります。

今後については、どうなるか見てみましょう。英国がブレグジットをめぐり素晴らしい合意を締結できれば、他国も離脱に魅力を感じるかもしれません。

ただ実際には、多くの欧州政治家はEUに対して、まさに他国が英国のように出て行くのを防ぐために、英国に厳しい姿勢を取ることを望んでいます。

英国の独自の自由貿易圏形成については、かなり成功確率が低そうですし、あらゆる要因を考慮しても可能性は低いでしょう。とりわけ、別の自由貿易圏に勧誘できる国があまりないからです。

英国はノルウェー、リヒテンシュタイン、スイスが加盟している欧州自由貿易連合に入るかもしれません。ただ当然、既存の規則の下で加入するので、ブレグジット後の英国で最も起こり得る将来像は、EUとできるだけ良い合意を締結し、その後、他国と他の自由貿易の合意を模索することだと思います。

ただそれでも、英国独自の自由貿易圏を作ることにはならないでしょう。

ジブラルタルと北アイルランドの国境はどうなるのかナイジェル・メイさんの質問

ケビン・コノリー記者の回答

ブレグジット後に議論の的になる国境がどうなるかは、最も難しい質問の一つです。

スペインがEUに加盟した1985年以来、英国領土であるジブラルタルに圧力をかける方法として、スペインは基本的にジブラルタルとの国境を閉鎖するのを妨げられてきました。

実際、1万2000人のスペイン人が毎日働くためにジブラルタルへ行きます。スペイン側のジブラルタル周辺は、かなり停滞した地域であるため、ジブラルタルは重要な雇用先でもあります。

一方、スペインは、ブレグジットがジブラルタルを取り戻すチャンスだと大っぴらに話しています。スペインのホセ・マヌエル・ガルシアマルガージョ外相は昨年9月、英国のEU離脱は、300年以上ぶりにジブラルタルを取り戻す「唯一の歴史的チャンス」だと述べました。

ただ最低でも現状では、スペインが望めば、出入国管理を再実施するようです。

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アイルランドの国境の状況はより複雑です。

北アイルランド出身の人たちにとっては、国境で軍の検問所が完全になくなったことは、紛争が終結したことを日々実感させる最も目に見えるものの一つであり、誰もかつてのような国境を望んでいません。

ただ、アイルランドがEUの一員で、英国がそうでない日が来る時は、アイルランドの国境は当然、英国にとってのEUとの国境にもなります。

メイ首相はかつてのような国境には戻らないと言いましたが、現実には、英国が共通の関税同盟域内を抜けると、国境でおそらく何らかのチェックが必要になるでしょう。

当然、国境をまたがるファーマナ州のビリークやベルコーのような町や村にとってそれがどのような意味を持つかは想像しがたいものです。

EU域内に住む英国人にとって、医療制度の利用の仕方はどのように変わるのかイタリア在住のベロニク・ブラッドリーさんの質問

ケビン・コノリー記者の回答

医療は英国がEU加盟国であれば、比較的単純な問題の一つです。

医療はEU域内全体に適用される市民の権利の一部です。ブレグジット後は、2つの可能性があると思います。

まずもっとも簡単なのは、交渉官たちが現在の取り決め、あるいは類似の取り決めを維持し続ける互恵的な合意を考えつくことでしょう。

そうしなければ、対応は個別の国ごとに変わります。

例えば、イタリアのブラッドリーさん一家にとっては、EU域外の国出身の居住者は、そこにはすぐに英国人も含まれますが、在留資格を完了させイタリアの身分証明書を取得し、イタリアの健康保険証を申請しなければなりません。

現在、彼らが英国を訪れても欧州医療保険証がない限り、非居住者である英国人のNHSの利用は簡単ではありません。

治療を受ける権利は課税状況ではなく在留状況に基づいています。

そのため、たとえ海外に住み、例えば、投資用の賃貸不動産に課される英国の税金を払っていても、英国帰国中に受けたNHSの治療費の請求書を受け取っているかもしれません。

今まで英国で生活し働いて、現在英国の国民年金を受給しているEU国籍の人たちはどうなるのか英国に住むドイツ人のピーター・バーツさんの質問

ノーマン・スミス記者の回答

EU諸国の国籍の人で、英国の国民年金を受給している場合、何も大きな変更はないはずです。年金受給は受給者の出身国とは関係なく、受給者が英国で国民保険料をどれくらいの期間支払ったかが基になっています。

そのため、出身地がリトアニア、ラトビア、ルーマニアのトランシルバニア、あるいはマリのトンブクトゥでも関係なく、大事なのは、国民保険料をいくら支払ったかです。

ただ一つ問題があります。それは、少なくとも10年以上支払っていなければならないことです。

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現行の規則では、EU市民で10年以上支払っていない場合、自国で支払った保険料を参照し、「自国で保険料を支払った」と指摘でき、それも加算されます。

この規則はEU諸国、および英国が社会保障合意を結んでいる他の16カ国にも適用されています。

EUを離脱すると、新たに互恵的な合意を交渉しない限り、この仕組みが使えなくなります。

仮にこの仕組みが使えず、国民保険料の納付が10年未満の場合は、EU市民は英国の国民年金を受給できません。

EU市民であり同時にEU市民にならないことは可能かアイルランドのパスポートを持つデクラン・オニールさんの質問

ケビン・コノリー記者の回答

私自身アイルランドと英国の二重国籍を持つ身として、ある種の興味があると広言すべきでしょう。

当然、北アイルランドで生まれた人は誰しも、両方のパスポートを持つ絶対的権利があります。

両方のパスポートを持つのが苦でない限りですが、特にデメリットを指摘する必要がない数少ない質問の一つだと言えば、デクランさんは喜ぶかもしれません。

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アイルランドのパスポートを持っているとEU市民としての便益を引き続き享受でき、英国のパスポートを持つと、同時に、英国においてもすべての権利が得られます。

緩やかな丘陵地帯、険しい海岸線、小雨の合間の楽しい休息と合わせて、北アイルランド出身であることで、明らかにうれしいことの一つと言えるでしょう。

唯一すべきは、今後、空港のEU市民専用の列に並ぶ時にアイルランドのパスポートを忘れないように持っておくことです

EU基本条約第50条には中止条項はあるかジリアン・コーツさんの質問

ノーマン・スミス記者の回答

正直な答えを言うと、法律の専門家でないとこれには答えられないと思います。

ただ私の理解では、法的には第50条を発動するとそこから抜けられなくなるようですし、欧州議会もきっとそのように解釈しています。

第50条を発動した後の2年間の過程の中でブレグジットをやめたいと思う場合、最終的には欧州司法裁判所が決断することになるだろうという見方があります。

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しかし、現実の世界では、法的な決まりが何であれ、かなりそれとは違う可能性があります。

実際には、交渉が遅々として進まず、ブレグジットが破滅的なものになると判断し、ブレーキを即座にかけなければならない場合、多くのEU諸国はおそらく私たちのことを笑うでしょう。でも同時に英国がブレグジットの道を進まないことにEU諸国はおそらくかなり喜ぶでしょう。

そのため、端的に答えると、ブレグジットをやめたい場合、法的にはあまり芳しくなさそうですが、政治的には、他の欧州の指導者たちの支援もあり、おそらく可能だと思います。

いつ英国のパスポートは変わるのかエリック・デジャーランドさんの質問

ケビン・コノリー記者の回答

この質問は多くの人たちが本当に気にかけていることです。英国の新しいパスポートの表紙に「European Union(欧州連合)」の文字がなくなると、まさにそれが明確な形でのEU離脱の印になるからです。

残念ながら、端的な答えは、その変更がいつ行われるか分かりません。

ただ政府にとって最も安価な方法は、古いパスポートの期限が切れる時に、段階的に新しいパスポートを導入することでしょう。

そのため昔の青色の背表紙が硬いパスポートを再度持つのを楽しみにしている人は、長く待たないといけないかもしれません。

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BBCの「事実確認チーム」は、英国に住むEU市民をめぐるメイ首相の計画について、以下の通り読者の質問に答え

――アイルランド国民は5年間の居住要件から除外され、引き続き英国人と同様の扱いを受けるのか

はい、英政府は共通通行地域の取り決めを守ると確約しているため、英国に住むアイルランド国民は自分たちの権利を保護するための定住資格を申請する必要はありません。

――EU市民は2019年3月までの2年間の間はまだ、英国に移住することができるか

はい、できます。英国は離脱するまではEU加盟国なので、人の自由な移動の規則はその時まで適用されます。

――なぜ英国の裁判所は英国に住むEU市民の権利に対して完全な司法権を持つべきではないのか。それがブレグジットの一番の目的ではなかったのか

英政府は欧州司法裁判所はEU市民の権利について司法権を持つことはないと言います。一方で、EU側は持つよう要求しています。この点は、ブレグジット交渉の中でも重要な議論の的になるでしょう。

――終身滞在はどのように保障されるか。将来の政府は法律を変えることができるか

英国がEUを離脱すると、原則として、将来の政府はその規則の修正を提案でき、英議会が新たな法律を決めることになるでしょう。

――2年以内にフランスに移住し定年退職後の生活を送り、不動産を買おうと計画している。ブレグジット後もこの計画は可能か

退職後に住む国の規則に従う限り、世界のどこでも不動産を購入し、そこで生活できます。なので、フランスでもできます。ただ、英国とEUが市民の権利をめぐる交渉を締結するまで、正確にはフランスでどんな権利を得るかは分りません。

――私はEU加盟国の国民で英国に住んでいるが、私の妻はEU域外の出身。妻の資格は変わるのか

あなたの妻は、英国のEU離脱前に英国に住んでいる資格のあるEU市民の家族として、あなたと一緒に定住資格に申請することができます。ただし、あなたの妻も定住基準を満たし、英国に住人として住む間にあなたと真正な関係になければいけません。

(英語記事 Brexit: All you need to know about the UK leaving the EU

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