娘のために遊園地を建てた米男性 総工費56億円

クレア・ベイツ記者、BBCワールド・サービス

モーガンさん(写真左)とハートマンさん

米南部テキサス州に住むゴードン・ハートマンさんはある時、障害のある娘が遊べるような遊園地がないことに気が付いた。そこでハートマンさんは自分で建てることにした。

家族旅行に出かけたハートマンさんたちがプールを使っていた時のことだ。ハートマンさんがプールから上がって間もなく、当時12歳だったモーガンさんがプールで遊ぶ子供たちと仲良くなろうと近づいた。だが、子供たちはすぐ水から上がってしまった。

子供たちは障害のある人とどう接したらよいか分からず、尻込みしたのだろうとハートマンさんは考えている。モーガンさんの認知理解力は5歳程度で自閉症の症状もある。

ハートマンさんはプールでの一件を忘れることができなかった。

「モーガンはともかくすごく素晴らしい女の子です。いつも微笑んでくれるし、いつもハグしようとしてくれる。けれども、彼女を色々と連れていけないことが多すぎた」

Image caption モーガンさんと遊園地の乗り物を楽しむハートマンさん夫妻

ハートマンさんと妻のマギーさんはモーガンさんをどこに連れて行かれるか、ほかの親たちにも聞いてみた。モーガンさんにとって居心地良くて、周りの人も気まずい思いをせずにモーガンと触れ合える場所はないのか。

「そんな風に受け入れてくれる場所などないと、気が付いたんです」とハートマンは話す。

そこでハートマンさんは2007年、自分で遊園地を造ることにした。もともと不動産開発業のハートマンさんは、2005年に所有していた複数の住宅建設会社を売り、障害者支援の非営利団体「ゴードン・ハートマン家族財団」を設立していた。ハートマンさんは「世界初のものすごく寛容なテーマパーク」の建設に着手した。

「すべての人が何でもできる場所、障害があろうがなかろうが遊べるテーマパークが欲しかったんです」とハートマンさんは話す。

ハートマンさんは医師やセラピスト、保護者、障害のある人にもない人にも声をかけ、どんな遊戯施設が良いか相談にのってもらった。その結果、テキサス州サンアントニオの採石場跡に25エーカーの広さを持つテーマパークが誕生した。

Image caption 座席が上下する回転木馬の座席は特別に設計されている

総工費3400万ドル(約37億円)をかけたテーマパーク「モーガンズ・ワンダーランド」は2010年に開園した。敷地内には障害がある人もない人も利用できることに配慮する「アクセシブルデザイン」を基に設計された観覧車や「冒険遊び場」、ミニ電車などがある。

来園者の多くが、いままで乗れなかったアトラクションに初めて乗れたと、ハートマンさんに報告するのだそうだ。

園内の回転木馬には、車いすが木馬と一緒に上下する特別な設計が施されている。

だがハートマンさんは、モルガンさんが最初は乗り物を怖がったと打ち明ける。「開園した時、彼女は怖がって乗らなかったんです。なぜ回転するのか、動物たちがなぜ上下するのか理解できなかった」。

モーガンさんが回転木馬に乗るまでに3年かかったという。

「最初、彼女は近くで立っていました。それから動物にまたがるのだけれど、私たちは乗り物を動かさずにいました。時間がかかりましたが、今は乗るのが大好きです。恐怖を乗り越えたのは、彼女にとってとても大事なことでした。遊びの中で得られる小さな達成感は、大きな違いを生みます」

モーガンズ・ワンダーランドには開園以来、全米50州のほか世界67カ国から100万人以上の人が訪れた。スタッフの三割に障害があり、障害者は入場無料だ。

「モーガンは必要な物はだいたい手に入るので、幸運な部類に入ると気づきました。ほかの障害を持つ人たちにとって、費用が妨げになるようなことはしなくなかった」とハートマンさんは語る。

「毎年、開園すれば100万ドル以上の損失が出ると分かっているので、献金やスポンサーで埋め合わせなくてはいけません」

Image caption 車いすのブランコに乗る入場者

今年は新たにバリアフリーのウォーターパーク「モーガンズ・インスピレーション・アイランド」も同時に開園した。

「7月は車いすの温度が熱くなり過ぎるので利用客は少なかったんです。それで隣りにウォーターパークを造ることにしました」

園内の一部では温水が使われ、筋肉関係の障害がある人でも利用できるようになっている。電気ではなく空気圧が動力の防水の自動車いすが準備されている。ボートで水流を楽しむバリアフリーの乗り物もある。

建設費や設備費は合計1700万ドルに上った。

Image caption 隣接のウォーターパークは今年開園した

「きのう、インスピレーション・アイランドである男性に手を握られた」とハートマンさんは話す。「重い障害のある彼の息子の方を指差して泣き出したんです。水遊びは今までできなかったそうです」。

ハートマンさんによると、利用客の4分の3は障害がない人で、テーマパークは意図した通りの効果を訪問者に与えているという。

「(障害者と健常者に)多少の違いはあっても、実際は同じだと人々は気が付く」。ハートマンさんはこう語る。

「車いすに乗った女の子が障害のない女の子に近づいて、一緒に遊び始めたのを見ました。とてもいいなと思った」

Image caption 障害がある人もない人も一緒に乗り物を楽しむことができる

ハートマンさんの元には、自分たちの地域にも同じようなテーマパークを造ってほしいという何百もの手紙や電子メールが届いているが、さらに建設する計画はない。だが10代の障害者の教育施設をサンアントニオに建設することに注力している。

ハートマンさんは、「別の場所でモーガンズ・ワンダーランドに似た施設を造ろうとしている団体がたくさんあるので、協力は続ける」とも話す。

今もハートマンさんはモーガンさんを連れてテーマパークを訪れるが、モーガンさんはちょっとした有名人だ。

「ここにくると彼女はロック歌手並みの扱いです! たくさんの人がモーガンと話をしようとやってくるし写真も撮る。彼女はうまく対応していますよ」

Image caption 筋肉に障害のある利用者のため、園内の水の一部は温水にしてある

23歳になったモーガンさんは今でも能力を向上させている。

「今はもっと話すようになったし、多くの手術を経て身体的な問題もほぼ治療済みです。彼女がどれだけ成長したか、とても誇らしく思っています」

モーガンさんのテーマパークでのお気に入りはブランコと砂場だという。そして当の本人は、自分がどれほどほかの人たちを助けたのか気付いていない。

「モーガンはテーマパークに自分の名前が付いていると知っていますが、それがどれほど大きなことなのか、いかに人々の人生を変えたのかは理解していないでしょう」と、ハートマンさんは話す。

「彼女が人生にどう立ち向かったのかに人々が本当に勇気付けられていると、彼女は分かっていないんです」

(英語記事 How one man built a $51m theme park for his daughter

(写真提供:Jerstad Photographics Gordon Hartman Family Foundation)

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